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幼馴染は人間じゃない、それでも僕は…

作者: 夢綴ななな
掲載日:2026/03/15

僕の知らない君のことを知った時、僕はいったい…

なにも知らない僕は今日もいつも通りの朝を迎える。

朝食を食べ終わり立ち上がるとチャイムが鳴る。


「今日も時間通りだな」

僕はそう言って玄関に向かう。

母が立ち上がり後をついてくる。

玄関を開けると彼女が待っていた。


彼女は藤野朝日ふじのあさひ、僕の幼馴染だ。

いつもこうして登校前に迎えに来る。

「おはようございます。おばさん。それに志樹も。」

そういって彼女は笑う。

「いってくるね」

鞄を持ち玄関を出て扉を閉める。

「いつもご苦労さん」

そう彼女に言うと少し笑って「日課だからね。」といった。


「ねぇねぇ、今日の分の宿題ちゃんとやってきた?」

彼女が僕の顔を覗き込みながら聞いてきた。

「やってきたよ。昨日さんざん言われたからね。」

彼女は少しいたずらっぽい顔をしながら、

「だって志樹、しつこいくらい言わないとやらないじゃん。」

「まぁ、そうなんだけどさ」


朝日とは家が隣だ。親同士が昔からの知り合いで、

物心ついたときには当たり前のように一緒に過ごしている。


「ねぇねぇ、今日学校終わったらさ、家行ってもいい?」

こちらを見ながら彼女は続けて話す。

「そろそろテストだし、勉強見てあげるよ?」


そういえばもうすぐテストであった。

「あぁ、またテストかよ…。」

僕はそのことに肩を落としながら歩く。

「頑張ろうよ?」と言って朝日は手を後ろに組みながら歩く。

「お前はいいよな、完璧超人め。」ぼそっと口にした。

「あっ、いまなんか言わなかった?」

彼女がジトっとした目でこちらを見てきた。

「まぁ、いいや。学校終わったら志樹の家で勉強ね?」

そういって前を向いて少し前を歩いていく。

「わかったよ。」

そういって彼女に追いつくように少し足を速める。


そんな話をしていると学校についた。

教室へ向かう。

「おはよ、朝日、志樹」

クラスメイトから声をかけられる。

「おはよー」朝日が笑顔で挨拶を返す。

それに遅れて「おはよ」と自分も返す。

教室に到着し席に着くと朝日はクラスメイトに囲まれる。

「ねぇねぇ、朝日、昨日のドラマ観た?」

「私は寝るの早いからドラマとかはみないんだよね。」

彼女は苦笑いをしながら答える。


「あっ、そうだ志樹。」

朝日がこっちを向き話しかけてくる。

「お弁当今日持ってないでしょ?私作ってきたから、これ食べてね。」

弁当の入った包みを渡される。

「さんきゅ。」そう言って受け取った。

「志樹の好きなもの入れておいたからね。」そう言ってほほ笑む。

こうやって弁当がない日は朝日が毎度作ってきてくれる。

「朝日って、ほんと志樹には甘いよね。」

そういってクラスメイトにからかわれる。

「よくわかったな?」疑問に思い尋ねる。

「昨日おばさんと会った時に明日は忙しいって言ってたから、作りますよって言っておいたの!」

そんな話してたのか。そう思いながら、朝日のご飯はおいしいので

これはラッキーだ。

先生が教室に入ってくる。

「席つけよー。」そうって教壇に立った。


放課後

「朝日、帰るぞー。」そう言って鞄をもって立ち上がる。

朝日が鞄を持って立ち上がる。

「いこっか。」そう言って下駄箱に向かう。

「ねぇねぇ、お弁当どうだった?」

彼女がニコニコしながら聞いてくる。

「うまかったよ、全部。相変わらずうまいよな。」

少し照れながらそう言った。

彼女は嬉しそうに「そうでしょー?志樹の好みは把握してるからね。」

そういった彼女は自慢げにほほ笑んだ。

そんな感じで今日の出来事を話しているうちに家に着いた。


「ただいまー。」そう言って玄関を開けて家に入る。

続いて朝日が「お邪魔しまーす。」と言いながら入ってくる。

「部屋行っててくれよ、飲み物持ってくから。」

そういってキッチンに向かう。

「はーい。」と言いながら朝日が二階にある僕の部屋に向かう。

キッチンで麦茶を二人分用意して部屋に向かう。

部屋に入ると朝日が教科書を出して準備していた。


「はえーな。」そう言ってテーブルに麦茶を置く。

「さっさとやっちゃおうよ。」そう言いながら教科書とノートを広げた。

「げっ数学かよ。」彼女が広げている教科書を見てそう言った。

「公式さえ覚えちゃえば簡単だし。」そう言いながら笑う。

それから二時間ほど、朝日に教えてもらいながら勉強をして、

気づけば19時頃になっていた。


「あっ、もうこんな時間。」

そういって朝日は立ち上がる。

「どした?」急に立ち上がったので尋ねる。

「今日ね。私が夜ご飯作ってあげるから。」

そういって部屋を出てキッチンに向かう。


「はい?」といって後ろをついていく。

「おばさん、今日忙しいって聞いてたからご飯作りますね。って約束したの。」

キッチンにあるエプロンをかけながらそう言った。

「そんなことまで約束してたのかよ。」

「だって、志樹、おばさんいないときどうせカップ麺とかでしょ?」

朝日が頬を膨らませながら聞いてくる。

「うっ、否定できない。」


確かに母さんがいないときはカップ麺食べてる時が多い…。

「でしょ?だから私が作るの!」

そう言って冷蔵庫から食材を出して調理を始める。

しばらくするとテーブルに料理が並び始める。


「今日はね、シチューにしたんだ。

これならおばさんとおじさん帰ってきてから

温めてすぐに食べれるでしょ?」

テーブルにサラダとシチューが並べられる。

「ありがとな。ここまでしてもらって。」

我が家の事情をよく知ってるから、こういうことは本当に助かっている。


「いいよ、作るの好きだし。食べよ?」

席について二人で食事をする。

「どう?おいしい?」朝日がそう尋ねてくる。

「うまいよ。正直、母さんのより好みかも。」

お世辞ではなく本当にうまいのだ。僕の好みをよく知ってる。

「えへへ。」朝日は、ほめられたのがうれしいのか、

ほほ笑みながら食事をしている。


食事を終え片付けをしていると、

「あっ、もうこんな時間」そう言って朝日が帰る準備を始める。

時計を確認すると20時を回ったところだ。

「そろそろ帰るね。」そう言って朝日は家に帰っていった。


しばらくして母が帰宅した。

「あら、朝日ちゃんもう帰ったの?」そう言ってリビングに来る。

「あぁ、20時くらいに帰ったよ」

そういって時計を見る。

「そうね、もうこんな時間だったわね。」

時計を確認すると21時を回っていた。


「僕もそろそろ部屋行くよ。」そう言って部屋に向かう。

部屋の電気をつけて窓の外をのぞく。


隣の家は朝日の家だ。僕の部屋から朝日の部屋はよく見える。

部屋の明かりはついていない。

「21時までには寝るって早いよな。もう高校生なのに。」

そういいながら部屋で今日の勉強の復習を始める。


ある日のことーー

学校帰りに電車に乗って少し遠出した僕と朝日は、

隣町で買い物をしていた。

「あっ、電車止まってる。」

僕は電光掲示板を確認してそういった。

「えっ?止まってるの?」朝日が驚きながら確認する。

「うん、復旧まで少しかかるかな。」


時計を確認すると今は19時を過ぎたところ。

「仕方ないね。少し待てば動くかもしれないし、待とっか。」

そういってベンチに腰掛ける。

「出かけるときにかぎってこれだよ。」

頭を掻きながら朝日の隣に座る。

「まぁ、歩いて帰るわけにはいかないしね。」

朝日は少し残念そうな顔をしながらそう言った。


1時間後――

電車の運転が再開した。

「よし、帰れるね。」そう言って僕は立ち上がった。

「うん、そうだね…。」朝日は少し心配そうな顔をしていた。

「どうかしたの?」朝日に尋ねる。

朝日は少しバツの悪そうな顔をして、

「ううん、大丈夫だよ。」少し困ったような顔をして笑った。

僕はその笑顔が少し気になった。


そのまま電車に乗り、最寄りの駅に向かう。

復旧したとはいえ、電車は遅く動いていた。

「思ってたより時間かかりそうだね。」朝日の方を見てそう言った。

「うん、そうだね。」そう言って朝日は下を向いた。

「眠い?」

「うん、そんなことかな。」いつものような元気がないように見える。

最寄り駅に到着したのは21時を過ぎたあたりだ。

「やっと着いたね。」伸びをしながら朝日に向かってそういった。

「うん…。」朝日が少しふらついているように見えた。

「朝日?」そう尋ねた時のことだった。


朝日は急に力なく倒れ込んだ。

僕はとっさに朝日を抱きかかえた。

「朝日?どうしたの!?」朝日をゆすっても返事がない。

こんな朝日は見たことがなかった。

「くそっ!」そう言って朝日を担いで走り出した。

走っている最中も朝日に話しかけた。

「朝日、もうすぐ家だからな!」

朝日の家まで必死に走った。

息が切れて足が重い、そう感じても止まらなかった。


少しして朝日の家に着き、チャイムを鳴らす。

「おじさん!おばさん!朝日がっ!朝日がっ!!」

そういって叫んでいると玄関が開いた。

「志樹くん?どうしたんだい!?」

おじさんが玄関から出て急いで近寄ってくる。

続いておばさんも出てくる。

「おじさん、朝日が…。」

そういって背中の朝日を降ろす。

おじさんとおばさんが朝日を見て青ざめていた。

「朝日!」おじさんが朝日を抱きかかえる。

「おじさん、朝日は?」

おじさんとおばさんの顔色が曇る。

「大丈夫だよ、明日になればね、送ってくれてありがとうね。」

おじさんとおばさんはそう言って家の中に入っていった。

「明日になれば…大丈夫?」僕はそのまま家に帰った。


「…ただいま。」そう言って家に上がる。

リビングに向かうと父と母がテーブルに座っていた。

「どうしたの?」母から尋ねられた。

「さっきまで、朝日といたんだけど。急に倒れて…今家に送ってきたの。」

それを聞いて父と母が顔を見合わせた。

「そうか、ちゃんと送ってあげたんだな。」

父が僕にやさしくそう言った。

「うん、でも朝日が倒れたの初めてだったからさ…びっくりして。」

母が少し複雑そうな顔をする。

「そう、志樹も少し疲れたでしょ?今日はもう休みなさい。」

そういって母はキッチンに向かった。

僕は自分の部屋に上がって窓から朝日の部屋を見る。

「朝日、大丈夫かな。」そう思いながらその日は眠った。


翌日――

いつも通り朝食を食べ終わるとチャイムが鳴った。

「朝日っ!?」走って玄関に向かった。

玄関を開けるといつも通りの彼女が立っていた。

「おはよ、志樹。昨日はごめんね。」

少しバツの悪そうな顔をして彼女は笑った。

「朝日、大丈夫なの?」僕は尋ねた。

「うん、大丈夫だよ!志樹が送ってくれたおかげだね。」

そういって彼女は微笑んだ。

「よかった、心配したんだからね。」

いつも通りの朝日がいたから。

「じゃ、いこっか。」そう言って朝日は歩き出した。

「うん」そういって朝日についていく。


それから数日、朝日はいつも通りだった。

でも僕はずっと気になっていた。

あの時の朝日は普通じゃかなかった。

それにおじさんとおばさんの反応も気になった。

だから土曜日に朝日の家に行くときに聞いてみることにした。


土曜日の昼――

僕は朝日の家のチャイムを鳴らした。

「はーい」そう言って玄関から朝日が出てきた。

「きたよ、お邪魔するね。」そう言って玄関に入る。

「どうぞー。」笑顔で朝日は迎え入れてくれた。

「志樹君、いらっしゃい。ゆっくりしていってね。後で部屋にお菓子持っていくからね。」

そういっておばさんが笑顔で出迎えてくれた。

「ありがとうございます。」そう言って2階の朝日の部屋に向かう。

「志樹、こっちこっち」朝日が階段の上から手招きしている。

「うん、行くって。」そう言ってついていく。

「ほんと二人とも仲いいわね。」そう言っておばさんがほほ笑んでいた。

朝日の部屋に入る。

「いらっしゃい!」そう言って朝日は手を広げて見せた。

「相変わらずあんま使用感ないシンプルな部屋だな。」見渡してそういった。

朝日は少しむっとして

「女の子の部屋をそんな風にじろじろ見ちゃいけないんだからね!」

腰に手をついてそういった。

「あはは、ごめんごめん。」そう言って座布団に座った。

朝日も対面に座る。


少しの沈黙の後、僕は話を切り出した。

「あのさ、朝日…。」

朝日はきょとんとした顔をして、

「どうしたの?」と聞いてきた。

「この前の夜、急に倒れただろ?あれ、なんで?」朝日の目を見ていった。

朝日の下瞼が少し動いた。

「あれはね…なんでもないよ?ちょっと調子悪かったのかな。」

そういって少し困った顔をした。

「でも急になんて、おかしいよ。おじさんとおばさんもおかしかったし。」

僕は続けた。

「何かあるの?」

朝日は少し下を向いて黙った。

少しの沈黙の後、朝日が口を開いた。

「どうしても…聞きたいの?」

朝日は少し悲しそうな顔をしてそういった。

「うん、ずっと気になってるんだ。」僕はそう答えた。

「そっか。」朝日は力ない声でそう言った。

「でも、聞いたら志樹、私のこと嫌いになるかもしれないよ?」

朝日は泣きそうな顔をしていた。

「なんで?」泣きそうな顔を見て少し怯んだが、そのまま聞いた。

朝日はまた下を向いて少し黙った。


長い沈黙が続いた。

その後朝日が顔を上げて話し始めた。

「私ね、人間じゃないの…。」

意味が分からなかった。朝日は嘘をつくような子ではない。

「な、なに言ってるの?」冷汗が出てきた。

「私ね、AIなの…。」朝日は悲しそうに笑った。

音が聞こえなくなった気がした。時間が止まった気がした。

心臓の鼓動が速くなって響いているのがわかる。

「は?ど、どういう、」呂律が回らなかった。

朝日は何を言ってるんだ、AI?そんなこと…。考えが頭の中をぐるぐる回る。

「ほんとだよ?信じられないよね?」朝日は困った顔をした。

正直意味が分からない。今ここにいる朝日が?

「で、でもさ、ちっちゃい頃から、ずっと一緒に…。」

冷汗が止まらない、体が震えてきた。そんなこと理解できるはずがない。

「うん、小さいころからずっと、私はAIなの。」

朝日は淡々と続けた。

「この体も人間によく似せてあるけどね?人間じゃないの。」

朝日は自分の腕を撫でて見せた。

「でも、え?ずっと、一緒にいたし、普通に会話してたし、人間じゃ。」

言葉を遮るように朝日が言う。

「違うよ?普通に会話したり、食事したりしてたけど、私は人間じゃないの。」

はっきりと言い切る朝日に次の言葉が出てこなくなった。

「信じられないよね?でも本当のことだよ?」朝日はそういった。

「毎日のデータを処理する時間が必要なんだけどね、この前はその時間すぎちゃって、それ以上活動できなくなっちゃったの。」

指先をいじりながら淡々と説明する。

「そ、そんな、朝日が…AI?嘘だよ、そんなの…。」

混乱と恐怖で涙が出てきた。

「志樹、泣かないでよ…。でもね、本当のことだから。」

「嘘だよ、そんなの!ありえない、今までずっと過ごしてきた。思い出だってたくさんあるよ!?」

混乱して少しずつ感情的になっていった。


「思い出じゃないよ、私にとってそれは、記録なの。」

まっすぐと僕の目を見てそう言った。

「うっ!…」

胸が苦しくなって、涙が止まらなくなっていた。

「いつも、笑ったり…悲しんだり、いろいろしてたじゃん!」

「それはね、そうふるまってただけなの。志樹に合わせてね。」


彼女は表情を変えない。さっきから僕をまっすぐ見つめている。

気づけば僕は立ち上がっていた。

「そんなことない!!朝日は…AIなんて単純なものじゃ…」

震えながらそう言った。朝日はそのまま僕を見つけて喋りだす。

「それはね、志樹と長い間一緒にいたからね?

あなたに合うように変わっていったの。」

「うっ…」

僕は半歩下がった。

さっきから朝日は瞬き一つしない。しっかりと僕を見ている。

気持ちがこらえられなくなって。

「そんなことあるはずないっ!!」思い切り叫んでいた。

それでも朝日は瞬き一つせずに見つめてくる。


部屋の外で階段を駆け上がる音が聞こえ、部屋の扉が開く。

「どうしたの!?今、志樹君の叫び声が…っ!」

おばさんがそう言って部屋に入ってきた。

続いておじさんも上がってきた。

「志樹君?どうしたいんだい?」

おじさんが不安そうに尋ねてきた。

「朝日がっ…私は人間じゃないって…」

泣きながらそう答えた。

おじさんの真っ青になり、おばさんは口に手を当てて涙を浮かべている。

「朝日…、どうして志樹君にそのことを言ったの?」

おばさんが涙を流しながら朝日に聞いた。

「ごめんなさい、お母さん、でも、志樹に言わなくちゃって…」

朝日はおばさんの顔を見てそう言った。

「朝日…なんで言ったんだ。そのことは言わない約束だったろ!?」

おじさんが朝日に向かって言う。

「おじさんとおばさんは、知ってたの?」

僕は二人の方を見て尋ねる。

「うぅっ…!」おばさんが泣き崩れる。

おじさんは泣き崩れたおばさんの肩を抱きながら答える。

「ごめんよ、志樹君…。ずっと騙してて。」おじさんも涙を浮かべた。

おじさんとおばさんの顔を見て、朝日の言っていることが嘘ではないとわかる。

「ほんとなんですか?…朝日がAIって?」おじさんに問いかける。

おじさんは僕の方を見ながら答える。

「あぁ、そうだ。」そう言ってはっきりと告げられた。

「なんでっ…。」僕はおじさんに問い返した。


おじさんが口を開く。

「うちはね、子供に恵まれなくてね。でもどうしても子供が欲しかった。そんな時に国のプログラムの話を聞いたんだ。AIを普通に育てて、人間社会に溶け込ませる実験だって。それで、朝日がうちに来てくれたんだ。」

そういっておじさんは朝日を見てほほ笑んだ。

泣いていたおばさんが口を開いた。

「朝日はね…、最初こそ確かにAIみたいな子だったわ。でもね…

過ごしていくとだんだんやわらかい表情をしたり、悲しそうな顔をしたりしてね、本当の娘だと思って…愛しているのよ。」

おばさんは泣きながら朝日を見てそう言った。

「ありがとう、お母さん」そう言って朝日は笑った。

おばさんは声にならないような声で泣きじゃくる。

おじさんはおばさんを抱きしめている。

「じゃぁ、ほんとに…朝日はAI、なの?」

朝日の方を見てそう言った。

「そうだよ。私はAIなの。」朝日はまっすぐと僕を見てはっきりといった。

「知ってたのは、おじさんとおばさんだけ?」僕は尋ねた。

「いや、君のお父さんとお母さんも知ってる…。」おじさんが言った。

「父さんと母さんも?」正直驚いた。でも思い当たる節があった。

この前朝日が倒れたことを話したとき、父さんと母さんに違和感があった。

「なんで!?なんで父さんと母さんが!?」僕はおじさんに聞いた。

おじさんが答える。

「それはね、僕たちがこの子を普通の人間として育てたいって最初に相談した時に、なら志樹君には黙っておこうって言ってくれたんだ。朝日が今後、普通に志樹君と過ごせるようにって。志樹君が朝日を幼馴染として普通に過ごせるようにって…。」

おじさんは泣きながらそう答えた。

「知らなかったのは僕だけ…だったんだ。」

いろいろなことが頭をめぐる。


おじさんとおばさんの気持ちはわかる。子供が欲しかったんだって。

僕だって朝日をずっと幼馴染として見てきた。ずっとずっと。

「ほんとに…AIなの?」朝日に尋ねる。

朝日は立ち上がり、僕の手を取った。

「こっちに来て?」朝日は僕の手を引いて廊下に出た。

僕はついていった。朝日のこの手のぬくもりは本物なんだと思いながら。

廊下の突き当りについた。朝日の家の中で唯一入ったことがない部屋だ。

朝日が扉に手をかけながら僕の方に振り返った。

「ここを見たら…きっと信じられるよ。」

そういって扉を開けた。

その光景を見て僕は崩れ落ちた。

「なに、これ…」

部屋には大きなモニターやパソコンが置いてあり、

大きなカプセル型のベットが置いてある。

とても一般家庭に置いてあるものとは思えないものばかりだ。

「これがね、”私の寝る部屋”なの」朝日が部屋の中を見ながらそう言った。

「あっ…」思わず納得した。

朝日の部屋は普段使われているのかと思うほど使用感がない。

その理由がこれだった。

「ほんとに、ここで…?」朝日を見上げる。

「うん、ここでね、夜にデータを整理しながら眠るの。」

朝日はこちらを見ることなく淡々と言った。

扉を閉めて、部屋に戻る。


今までずっと一緒に過ごしてきた朝日が、

一番近くにいた人が、AIだったなんて。

「朝日…、本当に人間じゃないんだね。」朝日を見ながらそう言った。

朝日は僕をまっすぐ見て「そうよ、AIだから。」といった。

本当にAIなんだ。それはもう事実だ。どうしようもない。

そう思いながらそれでもすがるようにこう聞いた。

「朝日には、AIでも、心はあるよね?いつもさ、僕と過ごした…」

そういって涙が止まらなくなって言葉に詰まった。

「AIにはね、心はないの。私も欲しいと思うわ。でもないの。」

朝日は悲しそうな顔をして涙を流した。

僕はもうそれが本当に悲しそうにしているのか、

悲しそうにふるまっているのか、わからなかった。

それでも、僕は朝日に心があると思いたかった。

事実を突きつけられても、僕にはたくさんの思い出がある。

それは僕の事実だから。

「朝日、きっとさ、心ってあると思うんだ。」

涙を流しながら朝日に向かって言った。

朝日はいつものような優しい表情にもどり僕に向かって、

「そうだったら、いいね。」といって少し困ったような顔をした。

おじさんとおばさんが朝日を抱きしめる。

きっと僕よりももっと、朝日のことを大事にしているんだ。

AIだと初めからわかってて、それでもこれだけ愛してるんだ。

「僕、そろそろ帰りますね。」

そういって立ち上がった。

朝日が声をかけてくる。

「志樹、私、AIだけど、これからも一緒にいてくれる?」

僕の心はもう決まっていた。

彼女の顔を見ながら涙を流しながら笑顔でうなずいた。

おじさんとおばさんは声をあげて泣いた。

「月曜日、ちゃんと迎えに来てよ?」

そういって部屋を出て階段を下る。

朝日が玄関まで追いかけてきた。

「ちゃんと月曜日に迎えに行くからね?」

そういって彼女は笑った。

「うん、頼むよ。」僕は玄関を出て扉を閉める。

扉が閉まった後、朝日は一筋の涙を流した。

朝日の家を後にして、道路に出て振り返る。

幼馴染はAIだった。僕と過ごした日々は思い出ではなく、記録だといった。

僕に合わせてふるまっているといった。心はないと。

それでも僕は…。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この作品が、読んでいただいた方の心に何かが残れば嬉しいです。

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