第4話 「悪役令嬢、初陣で魔王手先を討つ」
朝霧が城下町を包む頃、セレスティア・フォン・アルステッドと従者の騎士、そして攻略対象たちが一行となって城門を出た。
「皆、よくついてきましたわね。今日からが、本当の戦いですの」
セレスティアの声は冷静だが、鋭く輝いていた。彼女の一言で、騎士たちの背筋は自然と伸びる。
「魔王手先の情報によれば、この森を抜けた先に待ち伏せがあるとのことです」
忠実な騎士の一人が報告する。
「ふむ……それならば、わたくしが先陣を切りますわ」
セレスティアは軽やかに剣を握り、森の奥へと歩を進めた。
森に入るや否や、黒い影が枝の間から飛び出す。魔王手先の大群――数十体もの怪物が一気に襲いかかってきた。
「皆、構えなさい!」
セレスティアの声が響く。忠誠騎士たちは剣を構え、攻略対象たちも恐怖を押し殺して前へ出る。
最初の一撃。セレスティアの魔導剣から放たれた青白い光が怪物たちを薙ぎ払い、倒れた者は二度と立ち上がれない。
「さすが、悪役令嬢……!」
驚嘆の声をあげる騎士たち。その傍らで、王子アレクシウスも唸る。
「なるほど……これが……本物の力……!」
怪物の群れが迫る。セレスティアは冷静に敵を見渡し、戦術を口にする。
「騎士たちは左右を固め、攻略対象たちは後方支援。わたくしが先陣を切りますわ」
命令に皆が従う。統率力とカリスマ性は、悪役令嬢の枠を超えていた。
戦闘が始まると、セレスティアの剣は舞うように閃き、魔法の光が連続して飛ぶ。
「こ、この動き……人間業じゃない……!」
後方で戦う攻略対象たちも驚愕する。エリナはため息交じりに呟く。
「……まさか、悪役令嬢がここまで……」
怪物の大群が押し寄せるも、セレスティアは全く動じない。忠誠騎士たちと連携し、見事な戦術で敵を殲滅。
「これで……半分は片付きましたわね」
疲れを見せず、微笑みを浮かべるセレスティア。彼女の強さに、仲間たちは自然と心を許していく。
戦闘終了後、森の静寂が戻る。倒れた敵の群れを前に、セレスティアは誇らしげに立っていた。
「これが、わたくしの力ですわ。そして、これからも皆と共に、魔王討伐の道を進みますの」
アレクシウスが小さく頷く。
「……貴女が、物語の中心であることは間違いない……」
ヒロインのエリナも、その瞳に尊敬の色を滲ませた。
そして、夜が迫るころ。セレスティアは森を抜け、仲間たちに向かって笑う。
「さあ、次の戦いはもっと手強い相手ですわ。魔王手先の本陣が、もうすぐ見えてくるでしょう」
侯爵令嬢セレスティアの快進撃は、まだ始まったばかり――。
誰も止められない、悪役令嬢の魔王討伐戦記が、ここに刻まれるのだった。