第3話 「悪役令嬢、攻略対象たちを従える」
城の夜明け前。セレスティア・フォン・アルステッドは、忠誠を誓った騎士とともに城下町を見下ろしていた。
暗闇に包まれた街は、まだ眠りについている。しかし、彼女の目には決意の光が宿っていた。
「さて……次は、王子やヒロインたちも巻き込む番ですわね」
セレスティアは魔導剣を手にし、静かに微笑む。彼女の計画は明確だった――攻略対象たちを手中に収め、魔王討伐の力に変える。
そのとき、城の門を駆け上がる足音が聞こえた。王子のアレクシウス、そしてヒロインのエリナだ。彼らは昨夜の騒動の報告を聞き、急ぎ駆けつけたのだ。
「セレスティア……! 昨夜の騒動は、一体どういうことだ?」
アレクシウスが剣を手にして問い詰める。
「わたくしが、魔王の手先を討ったのですわ。もちろん、城も町も守りました」
セレスティアは優雅に、しかし揺るがぬ口調で答える。
アレクシウスは一瞬言葉を失う。王子である彼にとって、悪役令嬢がここまで堂々と行動する姿は予想外だったのだ。
「しかし……なぜ、貴様が?」
「理由は簡単ですわ。魔王を倒すのは、わたくしだからですの」
セレスティアの目には迷いがない。王子も、ヒロインも、その覚悟を感じずにはいられなかった。
「なるほど……これは、従わざるを得ませんわね」
エリナが小声で呟く。ヒロインとしての立場を保ちつつも、セレスティアの強さとカリスマに圧倒され、自然と協力の意志が芽生える。
そして、城の外へ。昨夜の戦いで命を救われた町の騎士や傭兵たちも、次々とセレスティアに従うことを決めた。
「なるほど……皆、貴女に惹かれているのですか」
騎士の一人が小さく笑う。
「ふふっ、当然ですわ。わたくしは悪役令嬢ではありますが、真の姫騎士でもありますの」
セレスティアの笑みは優雅だが、強さに満ちていた。
その後、夜明けとともに城下町はざわめく。悪役令嬢が、攻略対象たちを従え、魔王討伐の旅に出るという噂が瞬く間に広まったのだ。
「さあ……これからが本番ですわ」
セレスティアは魔導剣を軽く振り、街を見下ろす。
「攻略対象たちも、忠実な騎士も……すべて、わたくしの手の内ですの」
そして、魔王討伐への第一歩――セレスティアは仲間たちを従えて、初めての本格的な任務に向かう。
「誰も、わたくしを止められませんわ……!」
侯爵令嬢の笑みは、既に戦場を制する自信に満ちていた。