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38.涼雨(16) 回想⑭ 悪くない日々
それからも涼雨は、小学校の教師を続けた。
クラスで問題が起こったり、学級崩壊しかかったこともあった。
校長と教頭の争いに巻き込まれたこともあった。
遠足中に魔物の襲撃に遭ったり、魔力の強い子どもが絡んだいじめの問題が起こったり、魔女の一族の家庭問題の対応に苦慮するようなこともあった。
けれどもとにかく、目の前の問題に懸命に対処することを積み重ねた。
そうこうするうちに、子どもたちや親御さんたちや同僚たちに、それなりに信頼されている、という実感が得られるようになった。
魔道士への借金も、研究協力費だの何だのが差し引かれたことも大きかったものの返し終えた。
自分で自分のことを、悪くない、と思えるようになっていた。
(あれは、遠い昔の悪夢みたいなもの)
自分の中の魔物の存在を、ほとんど忘れているような時間が増えた。
魔法工学機器――――石板型情報端末や石電が身近なものになったことで、それらの不具合を引き起こしやすい自分の魔精体質を恨めしく思うことはあったけれど、その程度のことを煩わしく感じたりする今の自分は何て恵まれているのだろう、と思ったりした。




