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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第三章 そして幸せな生活が始まる。一方NTR夫婦は…。
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ファッションモデル SAKURAの誕生?!《前編》

「行ってらっしゃい。良二さん…。うう…。寂しいですぅ…。」


「さくら…。」


 休日中に身も心も結ばれ、戸籍の上でも晴れて俺とさくらは夫婦になった。

 休日明けの月曜の朝、玄関を出たところで、さくらは涙を浮かべて出勤する俺を見送ってくれた。


 彼女と濃密な時間を思い出し、俺も名残り惜しい思いだったが、彼女を守る為にも一層仕事に励まなければと自分に言い聞かせた。


「行ってきます。今日はなるべく早く帰って来るよ、さくら。んっ♡」

「良二さん…。ごちそう作ってまってますね。んっ♡」


 チュッと触れるだけの軽い口づけを交わしたところへ…。


「ニャアン…。」


 開いたドアの隙間から俺とさくらのしんみりした雰囲気に同調してか、神妙な表情になったあんずが、顔を覗かせた。


「あんずも、行ってくるな?あんまりおいたして、さくらを困らせるんじゃないぞ?」

「ニャッ!」


 あんずの頭を撫でてやると、返事をするように短く鳴いた。


「ふふっ。あんずちゃんはお利口猫ちゃんだから大丈夫ですよ。

 一緒にご主人様の帰り、待ってようね?」


「さくら、あんず。じゃあ、またな…。」


 あんずを抱き上げたさくらは笑顔になっていて、俺は安心して彼女達に一時の別れを告げ、家を出たのだが…。


「良二くん、おっはよ!ふふ…。見ちゃったぞ?新婚カップルの熱々キッス♡」


「西城さんっ!//」


 数歩歩いた時点で、ニヨニヨしている隣人の西城亜梨香に捕まった。


「覗き見してたんですか?悪趣味ですよっ!」


「ゴミ出ししに来てたら偶然目に入っちゃっただけだも〜ん。とうとうさくらちゃんが、隣人になってくれて、私達も嬉しいよ!これからは頻繁に家に飲みに来てねっ?さくらちゃん、二十歳になってお酒解禁になったでしょ?一緒に飲めるの楽しみ〜♪」


「まぁ、お誘いあれば伺いますけど…。さくらに飲ませ過ぎたり、「モデルになれ」とかしつこく絡んだりしないで下さいよ?」


 酒が入っても入らなくても羽目を外し過ぎのところがある西城亜梨香に釘を刺すと、彼女は渋い顔で反論して来た。


「良二くん、あのね。過保護過ぎ!さくらちゃんはもう充分に大人なんだよ?

 それにモデルを勧めているのは、さくらちゃんの為でもあるんだよ?」


「はぁ?何でですか!彼女は嫌がってますよ?」


「もう、分かってないなぁ!彼女は、嫌がってるのじゃなくて、良二くんを傷つける事を怖がってるんだよ。」


「俺を…?」


「そうだよ。元カノさんが文化祭の劇のヒロインになったのをきっかけに、別れたって言ってたでしょ?

 さくらちゃんは、優しい子だから、自分がスポットライトの当たるような場所に出る事で、良二くんを不安にさせるんじゃないか?元カノさんとの事を思い出させてしまうんじゃないかって気にしてんだよ。きっと…!」


「それは、亜梨香さんの勝手な推察でしょう?それに、今モデルなんか引き受けたら、余計白鳥に狙われそうで危険…。」

「危険だからって、いつまでも逃げてはいられないでしょ?

 さくらちゃん、まだ若いんだからやりたい事やらせてあげなきゃ。

 20才の今しか開いてない扉もあるんだよ?」


「そりゃ、さくらにはやりたい事をやらせてあげたい気持ちはありますけど…。」


「さくらちゃんに、モデルをやる事で、自分のやりたい事へ進む事へのきっかけになるかもって言ったら、かなり響いてたし、彼女、何かやりたい事があるみたいだったよ?多分料理関係だと思うけど…。」


「えっ。」


「女の子を輝かせる服を作るのが生きがいの私としては、ダイヤの原石だって分かってる子を磨かずにはいられないのだよ!

 モデル引き受けるどうこうはともかくとして、さくらちゃんとは将来の事、よく話し合った方がいいと思うよ?」


 動揺している俺に、西城亜梨香は、ビシッと人差し指を突き付けてそう言った。


「っ…!!」


 悔しいが、西城亜梨香の言っている事に一理はあった。

 いかに、白鳥から難を逃れる為とはいえ、結婚後もずっと引きこもり続けるわけにもいかない。

 さくらにもし本当にやりたい事があって、それが世間の注目を浴びるような結果になったとしても、

 俺の為に、それを諦めて欲しくなかった。


 時間がなかった為、西城亜梨香には考えておくとは言い置いて、その場を辞したが、会社へ行ってからも、西城亜梨香の言葉が心に引っかかっていた。


        ✽       


「良二さん。今日は本当に早く帰って来てくれたんですね?嬉しい♪ポークソテー、硬くないですか?」

「ニャニャ〜ン♡」


「うん。柔らかくてジューシーだ。クリームスープも美味いよ?さくら。あんず、くすぐったいよ。」


 帰って来ると、さくらは嬉しそうな笑顔で迎えてくれ、いつものように美味しい夕食を出してくれ、あんずはテーブルの下に潜り込み、俺の足にスリスリと体を擦り付けて来た。


「もうすぐ帰るコールを頂いてから、『ご主人様、もうすぐ帰りますよ。』ってあんずちゃんに伝えたら、玄関口でソワソワ8の字を描いて待ってたんですよ?

 あんずちゃんも、良二さんが帰って来てくれて嬉しいね〜?」


「そうだったのか。待っててくれてありがとうな?あんず。」


「ニャーーン♡」


 俺が礼を言うと、あんずは嬉しそうな鳴き声を上げ、その様子をさくらはニコニコ微笑みながら見守ってくれている。


 その笑顔に不自然な様子はなかったが…。


『さくらちゃんに、モデルをやる事で、自分のやりたい事へ進む事へのきっかけになるかもって言ったら、かなり響いてたし、彼女、何かやりたい事があるみたいだったよ?多分料理関係だと思うけど…。』


「え、えーっと、さくら、今朝、出掛けに西城さんに会って、少し話して、考えたんだけどさ…。」


 躊躇いがちに切り出すと、さくらはこの世の終わりのような表情になった。


「そんな深刻そうな表情で何をっ?!もしかして、同居三日目(&婚姻届を出して二日目)にしてもう浮気ですかっ…!?」

「へっ。何言っ…。うわっ。さくら?!///」 


 ガシィッ!!ギュムムッ!!


「ダ、ダメです!良二さんはもう私の旦那様です!!

 亜梨香さんの3番目の夫になるなんて許

 しませぇんっ!!」

「い、いや違うって!さくら!!ぐええっ!」


 さくらに必死の表情で締め上げるように抱きつかれて、俺は悶絶した。


「ぐふぅっ…。こ、こんなに可愛い料理上手の最高のお嫁さんもらって、浮気するとかあるわけないだろっ!さくら、頼むから落ち着いてくれ!!」


 バンバンとテーブルを叩きギブアップの合図をしながらそう叫ぶと、さくらは一気に力を緩め、その場に崩れ落ちた。


「でへでへ…。可愛い料理上手の最高のお嫁さん…♡♡良二さんったら…。//」


 解放された俺はホッと胸を撫で下ろした。

 さくらの奴、最近パン作りに精を出しているせいか、握力が馬鹿にならんな…。


 今後、さくらに誤解を招くような言い方をするのは控えよう。自分の命の為にも…。


「ニャニャァ…!!||||」


 ドン引きのあんずは部屋の隅に蹲り、カタカタ震えていた。

 さくらを怒らせてはいけないと彼女も思い知ったらしかった。

        ✽


「そ、それでな。さくら、俺に言えないけど、やりたい事があるんじゃないかって思ってな…。」


「そ、それは、そのっ…。」


 その後、西城さんとのやり取りを伝えた上でさくらに聞いてみると、彼女は動揺して視線を彷徨わせた。


 やっぱり、彼女の中にやりたいけれど、心に閉じ込めている事があるらしい…。


「別に俺は反対しないよ。モデルもそのやりたい事も。やってみてもいいんじゃないかな?さくらに興味があるなら…。」


「え…。で、でも、今は白鳥の件もありますし…。」


 瞳を揺らす彼女の手を俺はギュッと握った。


「西城さんの言うように、いくら狙われているからっていつまでも逃げ続けるわけにはいかない。


 もう結婚もしているわけだし、白鳥が仕掛けて来るなら、積極的に迎え撃つ方法を考えていこう。

 さくらをちゃんと守ると誓うよ。


 俺の事も白鳥の事も気にせず、さくらには、我慢せずにやりたい事を目一杯やって行って欲しいんだ。」


「良二さん…!」


 さくらは俺を泣きそうな顔でじっと見ていたが…。


「良二さん、分かりました。一回だけ、亜梨香さんのモデルの件引き受けてみたいです。いいです…か…?」


「ああ…。分かった。俺も全力でサポートするよ。」


 不安げに聞いてくるさくらに俺は笑顔で頷いたのだった。


*あとがき*


 いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m


 今後ともどうかよろしくお願いします。


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