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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第三章 そして幸せな生活が始まる。一方NTR夫婦は…。

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婚約者との交換日記 良二→さくら

 クリスマスの夜は、私の方の原因で出来なかったにも関わらず良二さんに優しい言葉をかけられ、感極まって抱き着いてしまい、危うく彼を胸で押しつぶしてしまうところだった。

 本当に私はこの日はやらかしてばっかり…!

 再び平謝りする私を良二さんは苦笑いで許してくれ、その後は楽しく過ごし

 同じベッドで良二さんと抱き合いながら朝を迎えた。(あんずちゃんはすぐ近くで猫用のベッドで丸まって寝ていた。)


 体の結びつきはなかったけど、共に夜を過ごした事で、良二さんを今まで以上に近くに感じるようになった。



 そして、次の機会には今度こそ良二さんと…。


 と思っていたのだが、その機会はなかなかやって来なかった。


 というのも、年明けから良二さんの仕事が急激に忙しくなってしまったのだ。


 幅広く事業を営むRJ株式会社の社長、財前寺龍人の娘である、私と良二さんとの結婚は、余計な横槍が入らないようにと、極力周囲に秘密にしていた。


 けれど、流石に結婚式の招待状を渡す時期には公にせざるを得ず、その影響で良二さんは社内で例を見ないスピード出世をする事になったらしい。

 それ自体はいい事なのだけど、仕事量が激増し、良二さんは大変そうだった。

 それに、彼はあまり言いたくなさそうだけど、同僚で仕事に協力的でない人もいるようだった。


 休日出勤当たり前。連日深夜帰り&徹夜という激務が続く中、良二さんの体がどうにかなってしまうのではないかと心配だった。


 その事を相談をすると、RJ株式会社社長財前寺龍人=お父様は難しい顔で頷いた。


「まぁ、役職が上がると、責任も仕事量も増えるし、急激な出世を妬む人もいるだろうし、そういう事もあるだろうね。

 さくらとの結婚で、良二くんの仕事に影響があるだろう事は予想していたし、こちらでも手を打っているから、すまないがあと少し辛抱してくれ。」


 お父様の言葉を信じて仕事の事はお任せする事にして、私は良二さんの事を陰から支えようと決意した。


 学校関係の用事で、時間帯が合わずに、親同士の新年会で会って以来、良二さんとはなかなかゆっくり会えていなかったけれど、家の改装の立ち会い、あんずちゃんの健診などの必要な用事や家事などは出来る限り引き受けさせてもらった。


 4月から一緒に暮らし始める事もあり、既に良二さんから家の鍵を頂いていて、用事をこなすためにお家に出入りし、会えない時には、ノートで近況や、連絡事項を報告する事にした。


 想いが溢れてつい他愛もない話を書いてしまう私の報告に対して、良二さんは、「いつもありがとう。」とか「さくらのおかげで助かってるよ。」とか律儀に毎回返事を書いてくれていて、それは昔流行ったという交換日記のようだった。


 昨日の記載は少し長めだった。


『3/13 さくら、明日はいよいよ誕生日だな。20才のお誕生日おめでとう!

 さくらが大人になる大事な日に一緒にいられなくてごめんな。土曜日には少し時間とれるから、その時にお祝いさせてくれ。

 あと、バレンタインの時はチョコ、ありがとう。本当は、直接渡したかったけど、ホワイトデーのお返しに、マカロンを冷蔵庫に入れているので、よかったら受け取ってもらえるかい?』


「わぁっ…!//」


 今日、3/14私の誕生日&ホワイトデー、特別な日に、大好きな人の家の空気を吸いたくって、いつものように良二さんの家に家事&学校の課題をしにやって来た私は、

 ノートに記載された少し右上がりの文字を読んでこの上なく幸せな気持ちになった。


 早速冷蔵庫を確認すると、可愛くラッピングされているお菓子の箱が置いてあるり、お菓子の箱にはマカロンで有名なお店のロゴが入っていた。


 私は感動に目を輝かせた。


「こんな素敵なお返し貰えるなんて…♡」

「ニャン?✧✧」


 カリ…。


「ああ~。これはあんずちゃんにあげられないんだよ。」


「ニャアン…。↓」


 お菓子の箱に興味津々でお手々を伸ばしてくるあんずちゃんに言うと、彼女はションボリしてしまったので、

 私はカバンから新しいネズミのおもちゃを取り出した。


「あ、あんずちゃん〜!新しいおもちゃ持って来たから、ちょっと遊ぼうか?」


「ニャン!✧✧」


 その後、学校の課題で煮詰まっていた私をあんずちゃんは癒やしてくれた。

 彼女のかわゆさから、新しいレシピが生まれそうだった。


        ✽


 良二さんの家を出た後は、午後から今師事している料理研究家の今田素子いまだもとこ先生のご自宅のキッチンスタジオに伺った。


 今田先生は、父の会社が経営する飲食店の一部の監修をして下さっていて、その関係で以前から親しくさせて頂いていて、

 卒業後は、今田先生のキッチンスタジオのアシスタント業を勤める事になっていた。

 今回はそのスケジュール等を決める予定だったのだけど、打ち合わせが一段落した時…。


「さくらちゃんの最近の創作料理、面白いのよねぇ…。レシピを纏めて、本を出してみたらどうかしら?今の若い人にウケるんじゃない?」


「ええっ?」


 目尻にシワを寄せて、コロコロ笑いながら今田先生にそんな提案をされて、私は驚いて声を上げた。

 良二さんに作る食事については、今まで学んで来た料理のレシピに、色んなアレンジを加えていて、先生にも度々相談した事があったけど、なんの経験もない自分が本を出すなんて考えも寄らない事だった。


「ま、またまた、先生、御冗談を…。」


 気さくなお人柄でよく冗談を言われる先生なので、今回もそうかなと思ったのだけど…。


「いや、結構本気で勧めているのよ?財前寺さんに勧めてみたら、結構乗り気だったわよ?」


「ええっ?お父様に?」


 本気の上、お父様に話が及んでいると聞き、再び驚きの声を上げてしまった。


「ええ。印刷業者の手配やら、発行部数やら、ウキウキしながら考えてらしたわよ?娘のさくらちゃんの事が本当に可愛いのね…。」


「お父様ったら…。//」


「まぁ、もうすぐご結婚されるって事だから、さくらちゃんに少しでもやりたい気持ちがあるなら、旦那さんにも相談してみてもいいんじゃない?

 さくらちゃんが今、料理を作ってあげたいお相手を大事にされるのが一番でしょうしね…。」


「は、はい…。考えてみます。」


 先生の言葉に私は戸惑いながらも返事をし、今仕事で大変な状況にある良二さんを想った。


 何だかとても良二さんに会いたくなってしまった。


         ✽


 その後、家で使用人の方達と、お兄様に誕生日のお祝いをして頂いた後、私は権田さんにこそっと窺った。


「権田さん…。度々申し訳ないのですが、もう一度送って頂いていいですか?」


「こんな深夜に外出とは…。大丈夫でございますか?さくらお嬢様…。」


 心配する権田さんに、私は笑顔を向けた。


「お父様にも電話で許可を得ましたので、大丈夫ですよ。

 行先は良二さんのお家で、朝までそこで過ごします。誕生日の最後の時間を彼の部屋で過ごしたいんです。」


「了解致しました。乙女心でございますね。さくらお嬢様。」


 権田さんは、いい笑顔で親指を立てて了承してくれた。


        ✽


 そっと薄暗いリビングに忍び入ると、猫ちゃん用のベッドに寝ているあんずちゃんの「すこー…。すこー…。」という寝息が聞こえ、薄灯りの漏れるキッチンの方からそれと競争するように、「ずごー…。ずごー…。」という地を這うようないびきが聞こえて来た。


「…!!//」


 逸る気持ちでキッチンへ急ぐと、良二さんが、スーツ姿のまま、カウンターテーブルに置いてあるノートに顔を突っ伏すようにして、寝こけていた。


「今日は泊まりじゃなかったんですね。ラッキーです♡」


 時刻は11:45。今日が終わる15分前に想い人に会えた嬉しさに私は胸が踊った。


「ずごー…。ずごー…。」


 良二さんに近付くと、彼が下敷きにしているノートに書いてある文面が目に入った。


『さくら、いつもありがとう…。こんな俺に尽くしてくれて。

 洗濯物や、あんずのお世話、助かってる。

 野菜スープもシナモンロールも美味しかったよ。

 肉球クッキーも作ったらぜひ食べてみたい。


 こんなにしてもらってるのに、最近忙しさにかまけて、さくらに何もしてあげられなくて、ごめん。


 誕生日に側にいられなくてごめん。


 クリスマスに出来なかった事も俺はまだ叶えてあげられていないのに、最近、さくらは俺に何も要求しなくなって…。失望されていないか心配だよ。


 もっと頑張ってさくらにふさわしい奴になれるようにするから、呆れないで待ってて欲しい。


 俺もさくらが大好…』


 そこで文章は途切れ、使っていたらしいペンは脱力した右手からこぼれ落ちたのか、床に転がっていた。


「良二さん…。」

「ズゴゴー…。ズゴゴー…。」


 私は、力尽きて眠っている良二さんの寝顔をじっと見て、その隈のある目元や、髭の伸びた口元を見守ると、

 切なくも愛おしい気持ちでいっぱいになった。


「こんなになるまで頑張って…。良二さん、心配しないで?


 私は12年初恋を拗らせたヤンデレ処女なんですから、ちょっと会えないぐらいで離してあげたりしませんよ。


 今は良二さんが忙しそうだから、手加減しているだけで、同居したら容赦なく襲いますから、覚悟して下さいね?


 だから、今は安心して眠ってください。


 朝起きたら私にこの続きを聞かせて下さい。

 そうしたら、私も同じ事をあなたに伝えますから。」


 私は良二さんを後ろからぎゅっと抱きしめて熱く耳元に囁いたのだった…。


「良二さん、愛してます…♡」


✽あとがき✽

 いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m


今後ともどうかよろしくお願いします。

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