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お見合い当日


 翌日、昼過ぎに目を覚ました俺は、二日酔いに痛む頭をさすり、しじみ味噌汁(即席)を啜りながら携帯の画面を開いてみると、親からの着信が何件かと、メールが表示されていた。


“お見合いの件ですが、来週の土曜日13:00から◯◯駅の『櫻花亭』でお相手の方とお父様にお会いする事に決まりました。


 昨日も伝えたけど、お父さんの仕事で重要な関わりを持つ方なので、くれぐれも遅刻などないようにね。


 よろしくお願いします。母より”


「へっ?お見合い??」


 メールの内容を見て、目を見開き、誤送信か何かかと2度見した俺だが、やはり、お見合いの日時が書いてある。


 どうやら、昨日泥酔している間に親にお見合いの承諾をしてしまっていたらしい…。


「うわ。全く覚えてね〜。」


 酔った勢いという奴は恐ろしいな…。


 内心やってしまった感は強かったが、文面からすると、父親の仕事の関係(それもニュアンス的になんとなく格上の相手っぽい)からの縁談らしく、どの道断る事は出来なかったかもしれない。


「はぁ…。格上の相手からの縁談なら向こうから断られる率高そうだな。ま、最初から期待していなければダメージも少ねーし、やるだけやってみるか…。」


 俺は苦笑いしながらも、見合いをするという事実を受け入れたのだった。


 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「さて、仕事だと思って行ってくるか。」        


 俺は、お見合い当日の日、いつもより丁寧にヒゲの処理をし、一番いい背広を着て、約束の時間に充分間に合うようように家を出た。


 あれから母から見合い相手に関する情報を嫌という程聞かされた。


 驚くべき事に見合い相手は、父の取引先の大会社の社長の娘…つまり、社長令嬢になるという事だった。


 去年高校を卒業し、専門学校で学んでいる料理を学んでいる学生で、家事も得意、性格も温厚との事だったが、見合いを何度すれども何故か縁談が進まず、取引先の息子である俺にまで話が回って来たとの事だった。


 大会社の社長令嬢のネームバリューがあり、なおかつ成績優秀かつ家事も得意、性格もよいと本人の資質もバッチリなのに、縁談が進まない…。


 その理由は本人の写真を渡されなかった事から、失礼ながらなんとなく推察された。


 しかし、俺は決めていた。この縁談、向こうから断られる可能性も高いが、決して俺からは断らないようにしようと。


 父親の仕事が絡んでいるからだけでない。

 俺は同窓会で色んな意味で打ちのめされ、この10年過去に囚われ、幸せになれるチャンスを自ら潰して来たのではないかと気付いた。


 この見合いは、少しでも前向きに生きていく為の第一歩。


 例え見合い相手が、アナベ◯の奥さんのような顔だちだったとしても、向こうが俺を選んでくれるなら俺も誠意を持って応えたい。


 そう考えていると…。


「おや?良二さ〜ん!おっはよーございま〜す!」


 家の前の道路に出たところで、隣の家の垣根の向こうから、洗濯物を干していた西城亜梨花の旦那の一人、西城駿也がブンブンと手を振って来た。


「駿也くん。おはよう。」

「土曜なのに、お仕事っすか?大変っすね〜?」


 にこやかに聞いてくる駿也に、(後で、西城亜梨花にいじられそうな為)お見合いと言い辛く、俺は適当に言葉を濁した。


「や、仕事じゃないけど、今日はちょっと用事があってね…。昨日も飲んでたようだけど、雅也くんや、亜梨花さんは、まだ寝てるの?」


 昨日の夜も隣の家で深夜まで酒を飲んでいた気配があったので、聞いてみたのだが、彼はにこやかに手を振って否定した。


「いーえ〜。亜梨花さんは、雑誌の取材、まさくんは休日お店が忙しいんで、二人共朝早く出かけて行きましたよ?」


「そうなんだ…。皆タフだな…。駿也くんも酒残ってる感じしないし…。」


「はいっ。僕は今日は一日お休みなんで家事担当頑張りまっす!」


 朝から元気全開の笑顔で、キラキライケメンオーラを放つ駿也に、眩しさを感じながら俺も自然と笑顔になっていた。


「そっか…。頑張れよ?」


「はいっ。良二さんも用事、楽しんで来て下さいねっ。」


「はは…。ありがとう。じゃ、行ってくるよ…。」


 俺はそう言って駿也に手を振り、歩き出そうとした時だった。



 住宅街の道にも関わらず、青いスポーツカーがすごいスピードで走って来て、その先にいつも遊びに来る野良の三毛猫が立ち竦んでいるのを見かけたのはー。


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