一夫多妻制の夢と現実《前編》
「あの娘達、考え方がまるで子供じゃない!
子供が出来てから、子育てを言い訳に、家事だってさぼってばかりだし…。
子供達のおもちゃで、いつも部屋は散らかっているし、いつも誰かが騒いでいるし、家に
いてもちっともリラックスできないわ!
私はあの娘と子供達の家政婦をやる為にあなたと結婚したんじゃない!」
「ま、まぁまぁ、香織落ち着けよ。綺羅莉も舞花も、まだ若いからさ。
至らないところはあるだろうけど、確かにまだ、子供小さくて大変だろうし、少し大目に見てやってくれよ。」
あのしけた同窓会の後、深夜営業をやっているファミレスで綺羅莉と舞花達のご飯を買い与えた後、戦々恐々として香織の部屋に入ると案の定、香織は溜まった鬱憤を一気に晴らすようにぶちまけて来て、
僕はたじろぎながらも、宥めた。
「綺羅莉ちゃんの時も、舞花ちゃんの時も、あなた約束してくれたわよね?
他の奥さんを迎え入れても、私と私が生む子供を第一に優先してくれるって。
あの娘達や、子供達の面倒は私は見ないって。」
般若のような顔でこちらに迫ってくる香織に、僕は大きく頷いた。
「わ、分かってるよ。もちろん、俺にとっての一番の妻は、香織に決まってるだろ?
今日の同窓会もそうだし、社交的な場では香織をパートナーに連れて行ってるじゃないか。」
渋々一夫多妻制の生活を受け入れたものの、美貌と知性を兼ね備え、一流企業に勤めている香織にとって、見た目な可愛さはあれど、なんの教養もない若い女の子達が、旦那である僕の子を次々と生んでいくという事態は、
著しくプライドを傷付けられるらしい。
綺羅莉を迎え入れる前は、今は仕事も忙しい時期だし、子供はゆっくりでも…。なんて言っていた彼女だが、今や、他の妻にマウントを取られまいと、不妊治療も視野に入れ、やれタイミング法だとなんだと第一夫人当然の権利として、行為を要求されるようになった。
家畜の牛や、豚じゃないんだから、仕事が忙しい時でも構わず行為を強制されるのは、正直げんなりなんだよなぁ…。
それに、子供は可愛いけど、面倒を見るのは大変だ。
今ですら、綺羅莉と舞香に子供の世話を頼まれ、てんやわんやする事もあるのに、これ以上増えるとなると…。
大体、香織自体特に子供好きという訳じゃないだろうに。
綺羅莉と舞香の子供達、桃姫、万里生、瑠衣司をいないものとするように無視し、香織はほぼ関わろうとしない。
一応僕の子供ではあるんだから、少しは母性とか働かないのか?本当に女か?
自分の子が生まれても世話が出来るのだろうか?と疑問だが、
彼女の今のフラストレーションを和らげるには、言う通り、子作りに協力するしかない。
「綺羅莉と舞花達の面倒は見なくても、いい。
けどさ、香織にも子供が出来たら、桃姫、万里生、瑠衣二達と兄弟仲良く暮らせた方がいいだろう?
ギスギスしてたら、子供にも悪影響だろうし、少しは彼女達にも歩み寄ってやってくれよ。なっ。」
「……。」
香織が座っているベッドの隣に座り、優しく肩を抱き、囁く僕を彼女はまだ不満そうに睨んでいたが、それ以上は文句を言えないようだった。
それもその筈。いくら、欲しいと思っても子供は一人じゃ作れないものな。
あまりにひどい事を言って、僕に拒否されても困ると思っているのだろう。
「子供が出来れば、今の生活を楽に感じるところも出て来ると思うよ?
今日、医者から言われている日なんだろ?
協力するからさ…。」
ドサッ!
「…!慶一くん…。」
そう言って僕は、香織を押し倒し覆い被さって行った。
「香織…。君を一番に愛しているよ…。」
そう…。かつてはね?
今はこんな風だが、高校時代の香織は、笑顔の愛らしい魅力的な女の子だった。
だから、当時付き合っていたもさい底辺男子、石藤には勿体ないと思って、僕が奪い取ってあげたんだ…。
✽あとがき✽
胸糞なお話が続いて大変恐縮ですが、もう少ししたら白鳥の行く末が見えてくるかと思いますので、よければ次話以降もよろしくお願いしますm(_ _)m




