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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第三章 そして幸せな生活が始まる。一方NTR夫婦は…。
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敏感な旦那《前編》

 そして忘れもしない高2の文化祭ー。  

 あれが、私の人生の分岐点だったように思う。


 私は、クラスの出し物「眠り姫」の劇で主役の眠り姫に推薦されて、気分が高揚していた。

 ただ、短いながら、劇の終わり際、王子役の白鳥くんと、ラブシーンを演じなければいけない為、彼氏である良二くんに相談する事にした。


「劇の上の事なんだから、俺は嫉妬なんかしないよ。香織にやりたい気持ちが少しでもあるなら、チャレンジしてみなよ。」


 良二くんは笑顔でそう言ってくれたけど、その目は少し辛そうに歪んでいた。


 もしかしたら、私の為に無理をして背中を押してくれたのかもしれない。


 どうしよう?やっぱり断った方がいいかな?

 けど、お姫様の役を演じるなんて機会、これを逃したらもうないかも知れない。


 私は躊躇った末…。


「いいの?良二くん。ありがとう…。私、頑張るね!」


 私は、良二くんの気持ちに気が付かない振りをして、笑顔を向けた。


 ごめんね。良二くん。文化祭が終わるまでだから、少しだけ我慢してね?その後は、良二くんの為に彼女として、出来るだけの事をするからね?


 そう思っていたけど…。

       

          


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

        

「え。これ…何?」

「石藤くんと…須藤さん…??」


 !!!||||


 他の演者の人と休憩中、演者の間で作ったグループLI◯Eに、おかしな画像が回って来たのは、文化祭の一週間前だった。


 良二くんが穂乃香を教室の床に押し倒しているその画像を見て、私は頭を殴られたような衝撃を受けた。


 うそ…。なんで…?


 最近劇の練習で、良二くんと一緒に過ごす時間を取れていなかったし、少し時間の取れた時にも、お互い、それぞれの同じ係の人の話ばかりで、すれ違ってしまっているような気はしていた…。


 でも、あの誠実な彼氏の良二くんと、真っ直ぐな気性の親友の穂乃香が浮気なんてするわけがないと思っていた…。


 でも、画像は、生々しい程、現実を突きつけてくる。


「瀬川さん…。大丈夫かい…?」


 王子役の白鳥くんが気遣わしげに、私に声をかけられ、私は無理に笑顔を浮かべた。


「だ、大丈夫、大丈夫。変なイタズラする人がいるもんだね?たまたまそんな体勢になっただけでしょ?

 後で、良二くんと穂乃香に気をつけるよう言っておくよ。

 皆、そんな画像、消しちゃってね?」


「う、うん…。」

「イタズラだったのなら、いいけど…。」

「……。」


 他の演者の子が戸惑いながらも頷く中、白鳥くんは眉間に皺を寄せていた。


 大丈夫!何かの間違いだ…!ちゃんと良二くんと穂乃香に聞いてみよう。


 その後、劇の衣装に着替えた後、意を決して、教室へ戻った私だったけど、二人が一緒にいるところを見かけたら、竦んでしまって、結局何も言えなかった。


 眠り姫の衣装を身に着けた私と良二くんの写真を撮ってくれると言う穂乃香。

 照れたように私に寄り添う良二くん。


 二人の事を信じたいのに、私の頭にはあの画像がチラついてぎこちない笑みを浮かべる事しか出来なかった。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 文化祭数日前ー。


「瀬川さん。気分転換に、少し外の空気を吸いにいかないか?」


 二人の事が気になって、なかなか演技に集中出来ない私に白鳥くんが誘ってくれた。


「え。えっと…。」


 少し躊躇い、良二くんの方を見ると、穂乃香と大道具係の打ち合わせをしていた。


 仕事だって分かっているけど、ズキッと胸に痛みが走る。


「う、うん。ちょっとだけなら…。」

「よかった!」


 イケメンの白鳥くんは、本当に王子のような笑顔を浮かべた。


 白鳥くんは女子に人気が高く、何人も彼女のいるプレイボーイと噂されていた為、警戒して今まで距離をとって接していたけれど、劇の練習で関わるようになってから、演技の事をアドバイスしてくれたり、気遣ってくれたりと親切な彼に、大分印象が変わっていた。


 でも、今の心境であまり騒がしいところへ行きたくないなぁ…と思っていたら、白鳥くんが連れて行ってくれたのは、学校の裏庭の静かな一角だった。


「わぁ、綺麗…!」

 

 園芸部の作った花壇の小さな花々に、歓声を上げると、白鳥くんは、にっこりと笑った。


「ここ、静かでいいところだろ?今、瀬川さんあんまり騒がしい場所へ行きたくないだろうと思ってさ。」


「…!!」


 すごい!ドンピシャ!!

 今の私の気持ちを言い当てた彼に、私は目を丸くした。


「さすが、女子に人気の高い白鳥くん!女の子の気持ちは何でもお見通しなんだね?」


 感心してそう言う私に、白鳥くんは苦笑いで否定した。


「そんな事ないよ。誰の事でも分かるわけじゃない。ただ、僕は君の事をそれだけよく見ているって事だよ。」


「えっ。」


 白鳥くんに真剣な顔でそんな事を言われ、一瞬ドキッとした。


「今、瀬川さん、石藤くんと須藤さんの事で悩んでいるだろ?それで、演技にも集中出来ていない気がする…。僕は心配してるんだよ。」


 あ、ああ…。劇が失敗するんじゃないかと

 心配してって事ね?

 私は内心脱力しつつ、白鳥くんに謝った。


「ご、ごめんね。白鳥くんに迷惑かけてしまって!もっと集中してちゃんと頑張るから…!」


「いや、そうじゃないんだ。劇の事じゃない。僕は君が苦しんでいるから、辛いんだよ。」


「えっ?」


「他の女の子と浮気するような男子なんか別れて、僕と付き合わないか?


 僕の方が彼より君の事を分かってあげられると思うよ?」


「白鳥くん…!!」


 白鳥くんの突然の告白に、胸がドキドキしながらも、一方で、良二くんの事を思い、胸がシクリと痛んだ。


「で、でも、私は良二くんの事…。浮気だって本当にしてるとは限らないし…。」


「でも、浮気してないとも言えない。

 画像の事、二人に確かめてもいないんだろ?」


 白鳥くんにはやはり、私の事が全てわかっているようだった。


「……。」


 俯く私に、白鳥くんは表情を緩めて言い聞かせるように優しく話しかけた。


「分かったよ。瀬川さん。じゃあ、それを見極める為にも、二人が言い逃れが出来ないような場を僕が作ってあげよう。


 君は、それを見て、この先の事を決めたらいい。

 その結果、僕を選んでくれたら嬉しいけど、君が幸せになるのなら、このまま石藤くんと付き合い続けるというなら、潔く諦めるよ。」


「白鳥くん…。でも…。」


 不安に揺れる私に、白鳥くんはキラキラした目で、力強く頷いた。


「心配しないで?石藤くんと違って、僕は君の気持ちに添わない事はしないから。」


「白鳥くん…。」


 良二くんと穂乃香の事で、悩んでいた私に白鳥くんの言葉は強く響き、その後は、劇の練習もうまくいったのだった。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 そして、迎えた文化祭当日ー。


 劇が終わるまで余計な事は考えず、ほとんど全ての演技が終了し、後は、白鳥くんとのキスシーンからの目覚めでフィナーレというところまで来た。


「なんて綺麗な方だろう…!」


 王子役の白鳥くんが、眠り姫役の私に近付き感嘆の声を上げた。


 そして、白鳥くんが私に近付いてくる気配がして、キスのするフリを…。


 チュッ。


 !!?


 一瞬柔らかく温かい感触がして、目を見開くと、白鳥くんが、蕩けるような笑顔を浮かべていた。


「(今のキスは、王子として。そのまま眠り姫として演技を続けて。)」


 彼がそっと囁いた。


 ああ、そうか。今のは、演技上のキス。

 だから、今の胸の高鳴りも、白鳥くんに惹かれていく気持ちもきっと王子に向ける眠り姫としてのものなんだ。


 私は魔法にかけられたように、恍惚の表情を浮かべ、白鳥くんと手を取り合い立ち上がった。

 そして、観客から、割れんばかりの拍手と歓声が飛ぶのを万感の思いで聞いていた。


 良二くんと穂乃香の事はその時、全く頭に浮かばなかった。          

✽あとがき✽


いつも読んで下さりありがとうございます!


今日総合1000pt越えました!

応援下さった読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます✨(;_;)✨


近日中にお礼のおまけ話を書かせて頂きたいと思いますので、またお知らせしますね。


また、今日から、試験的に昼12:00・夕17:00の毎日2話投稿にしてみます。


17:00 〜敏感な旦那《後編》の投稿がありますのでどうかよろしくお願いします。


読むのキツイなどありましたら1話に戻しますので、何かありましたらお知らせ下さい。


今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m

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