一夫他妻と子供達
その後、取り巻きの女の子達に愛想を振りまくだけの苦痛な時間に耐え、
疲れた気持ちで、慶一と共にタワマンのマンションへ帰ると、迎えられたのは、慶一の他の妻二人と子供達だった。
「「あ。けいちゃん。香織さん。お帰りなさ〜い!」」
「パパ〜。おあえり〜。」
「ダダ〜。」
「ア〜ッ?」
「た、ただいま…。」
「おお〜。もも〜♡ハハッ。皆、ただいま!変わりなかったか?」
私は、おむつやら、おもちゃ、服やらで足の踏み場もないくらい 散らかっているリビングの惨状に引き攣った笑みを浮かべ、
慶一は、駆け寄って来た子供、白鳥桃姫(2才)の頭を撫でてにこやかに二人の妻と他の子供達に応対していた。
「いいなぁ。二人共、飲み会に行けて。
うちなんか、まだ授乳中だから飲めないから羨ましいにゃ〜。」
と言ったのは、金髪の元コスプレーヤーで慶一の二人目の妻、白鳥綺羅莉(22)
慶一にひっ付いている沙希の母親で、豊満な胸に、二人目の子供、白鳥万里生(4ヶ月)を抱いている。
「私は早々と卒乳したから、機会があれば飲めるよん♪」
と言ったのは、黒髪清楚系元アイドルの慶一の三人目の妻、白鳥舞花(21)。
伝い歩きをしている白鳥瑠衣司を支えながら、明るく言った。
「いいな〜。まいまい。」
「エヘヘ。でも、なかなか誘われる機会ないけどね。」
「分かる〜。子供いると、遊び友達と疎遠になるよね〜。自由に飲みに行ける香織さん、羨ましい〜。」
「ね〜。」
いいなって何?
子供がいないから自由に飲みに行けていいって、本当に思ってるの?
私からしたら、あなた達の方がよっぽど…。
二人の妻、綺羅莉と舞花の発言に遣る瀬無い思いになりながら、私は拳を握り締めた。
「わ、私…。疲れたから自分の部屋に戻ってるわね。」
ぎこちない笑みを浮かべてその場を離れようとした私に、綺羅莉がキョトンとした顔で聞いてきた。
「あれ?今日は香織さんの食事当番の日でしょ?ご飯作ってくれるんじゃないの?」
「はい?」
私は思わず聞き返した。
時計の針は、今、夜の10時を指している。
「き、綺羅莉〜。今日は俺と香織、同窓会に行くから遅くなるって伝えたろ?ご飯はそっちで食べてくれてると思ったよ。」
「え〜。そうなの?帰り遅くなるけど、その後作ってもらえるのかと思ってた。ね、まいまい。」
「うん。無駄に待っちゃったね。」
「そんなの、言わなくても分かるでしょ?子供の寝る時間だって遅くなるし、普通自分達で用意するでしょう?」
呆れて二人にそう言うと、綺羅莉は大げさにため息をついた。
「はあ〜。香織さん、分かってないね。イマドキの子は結構寝るの遅いんだよ?」
「うん。12時ぐらいに寝る子もいるよ?このぐらい普通だよね?」
「あなた達の普通って…!あなた達の食事当番の時だって、レトルトとか、カップラーメンとかしか出さないし…!!」
「えー、だって、子育てで忙しいし、料理苦手だし。私が作るより、そっちの方が絶対美味しいじゃん。」
「そうだよ〜。うちらのご飯、嫌なら食べなきゃいいじゃん。」
私が眉間に皺を寄せて責め、二人が膨れっ面で言い返して来たとき、慶一が間に入った。
「ま、まぁまぁ。3人共、落ちつけって。
今日のところは、俺がご飯買ってくるから綺羅莉、舞花、ちょっと待っててな?」
「お腹空いてるから、けいちゃん、早めにね。私、唐揚げがいい!」
「私、カレー!」
「分かった、分かった。」
慶一は、綺羅莉と舞花を宥めると、今度は私に向き直った。
「で、香織は、疲れてるだろうから、自分の部屋に行ってていいぞ?後で話聞くから!(今日、頼まれていた日だろ?)」
「…!え、ええ。そうね…。分かったわ。じゃあ、失礼するわ。」
慶一に声を潜めて囁かれ、二人に対して猛り狂っていた気持ちを無理矢理収め、私は自室に向かった。
「何あれ?香織さん、いつも以上に荒れてない?更年期?」
「感じ悪っ!子供がいない人って、ああやって、正論振りかざすんだよね?」
背中に投げられる二人の文句は聞かないふりをした。
✽あとがき✽
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