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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第三章 そして幸せな生活が始まる。一方NTR夫婦は…。
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星より輝く青い瞳


「さくら!ごめん、早く来たつもりだったんだけど待たせちゃったね?」


「いいえ、いいえ。こちらこそ気を遣わせてしまって、すみません。

 遅れてはいけないと気が急いでしまいまして、早く来過ぎてしまったんです。」


 俺はベンチへ向かい駆け寄ると、彼女も立ち上がりこちらに近付いて、俺達はペコペコと頭を下げあった。


「良二さん、来てくれて嬉しいです。今日は初デート、宜しくお願いしますね?」


 頬を染め、綺麗な青い瞳を潤ませて、上目遣いでこちらを窺い見てくる彼女にドキッとした。


 品の良い紺色のワンピースが彼女に良く似合っている。

 かなりボリュームのある胸部とノースリーブの脇の白い肌が眩しい。


 い、いかん…。彼女は10才下&まだ10代。

 初めからそんな邪な気持ちを持っちゃいけない。


「あ、う、うん…。お、俺も嬉しいよ。今日はよろしくね?」


 俺は彼女から目を逸らしながら噛み噛みでそう言うと、彼女は満面の笑みで返事をした。


「はいっ。」


 この子本当にお花みたいに笑うよな…とその笑顔に見惚れていると…。


 ザザッ!!


「石藤様、おはようございます!!」

「うわあぁっ!!」


 突然、ベンチ近くの植え込みから、ガタイのいい男性が現れて、俺は悲鳴を上げてのけぞった。


「ああ、これは、驚かせてしまって申し訳ありません。」


 頭と背中にかなりの量の葉っぱがついたまま恐縮して謝ってくるそのスーツ姿の男性はよく知っている人物だった。


「ごご…権田さん?」

「あれ、権田さん?駅前まで送って頂いた後、家に戻られたのでは??」


 俺だけでなく、さくらも戸惑ったように目を瞬かせると、さくらちゃん家の運転手、権田さんは、親指を立ててニコッと笑った。


「さくらお嬢様が、イケイケな若者共にナンパされないよう、草葉の陰から見守っておりました。」


 いや、文字通りかよ!


「そうだったんですね?ふふっ。全然気付かなかったぁっ。」


 いや、さくら…。笑ってる場合なの?一歩間違えたら、ストーカ…。


 俺が青褪めていると、権田さんはさくらに何やら小声で話しかけ、さくらは大きく頷いていた。


「(さくらお嬢様、例のアレ、頑張って下さいね?)」

「(は、はいっ。渾身の奴、かましちゃいます!)」


 さくら、気合の入った顔してるけど、一体何を話したんだ?


 首を傾げている俺に、権田さんは深々と頭を下げて来た。


「それでは、石藤様!今日はさくらお嬢様を宜しくお願い致します。これで失礼させて頂きます。」

「あ、は、はい…。」


 戸惑いつつ俺が返事をし、彼は体から葉っぱをハラハラと落としながら、笑顔で去って行った。


 何だったんだ、一体…。


「ん?」


 呆然としていた俺の袖をチョイチョイと引かれ、隣を見るとさくらが期待に満ちた目で、手を差し出して来た。


「良二さん。それじゃ、私達も行きましょう?」

「あ、ああ…。行こうか…。」


 そして、俺は白くて小さなその手を握ると、目的地に向かって歩き出した。


「………。///」


 女の子と手を繋いだのは、香織の時以来で、その柔らかく温かな感触をこそばゆく思い、しばらく無言になっていると、隣でさくらが小さく呟いた。


「……。///わ、私、男の人と手を繋いだの初めてですぅ…。」

「えっ!」


 さくらは、真っ赤な顔でいっぱいいっぱいの表情になっていた。


「ご、ごめん!慣れてないのに、手握っちゃって。」

「あっ、ダメっ!!」


 慌てて手を離そうとすると、さくらはもう片方の手で俺の手を取り、自分の手に握り直させた。


「良二さんの手、大きくて温かくて、嫌じゃありませんでした。

 もう少し、このままで…!」


「い、いいの…?」

「はい…。///」


「じゃ、じゃあ…。」


 大きく頷く彼女に従い、彼女の手を握る手に力を込めると…。


「はふうっ…!」


 彼女は、ビクッと小さく身震いをした。


「いや、本当に大丈夫?」

「は、はいぃっ…!大丈夫ですが、私、今、風船みたいなふわふわした気分です。

 もし、足が浮いてたら、地上に戻して下さい〜〜。」


「わ、分かった…?」


 よく分からない彼女の頼みに疑問形で了解すると、俺達は、科学館までの道をぎこちなく歩いて行ったのだった。


         *


 デートの約束を取り付けたものの、30代目前の俺には、まだ10代のさくらちゃんを楽しませる事のできる場所が思い付かず、電話でさくらちゃんに行きたい場所を聞いてみると、彼女は躊躇った末、T市科学館に行ってみたいと呟いた。


 偶然にも、T市科学館は、俺が小学5年生の時、社会見学で行く予定だった場所だった。

 当日風邪を引いてしまって行けなくて残念に思っていたのだが、さくらとデートで行けるならこんなに嬉しい事はないと、デートをその場所に決めたのだった。


 T市科学館に着いた俺達は、まずはプラネタリウムに行く事になり…。


         *


『北斗七星のひしゃくの先を5回分伸ばした先に、見つかるのが、北極星になります…。』


 アナウンスと共に、暗い館内の頭上には、北斗七星と北極星が輝き、ひしゃくの先から北極星に5回分の赤い線が伸びて行った。


「(ふんふん、なるほど…。)」


 横目でチラッと様子を伺うと、隣りの席のさくらちゃんが頭上を見上げ、説明を聞きながら小声で呟いている。


 その距離、約20センチ程。


 プラネタリウムって、隣りの人との距離こんなに近かったんだ…!


 しかも、俺達の選んだ席はリクライニングがほぼフラットな状態まで倒れるところだったらしく、俺とさくらちゃんはほとんど寝転んだ状態で寄り添うような姿勢になっていた。横など向き合おうものなら、至近距離になってしまうだろう。


「〰〰〰。///」


 せっかくのプラネタリウムだというのに、俺はアナウンスの説明が全く頭に入ってこないまま、顔も体もカチンコチンになったまま、ただ、席に体を横たえていた。


 見合い相手とは、デートまでも行かなかったし、香織と付き合っていたのも、12年前の事。


 社会人にも関わらず、恋愛経験に乏しく、10才年下のさくらちゃんに対しても全然余裕のない自分を情けなく思った。


『では、今日見える予定の星空をご覧下さい…。』


 アナウンスと共に、暗い館内の天井には、徐々に星が一つまた一つと瞬き始め、やがて

 暗い館内の天井には眩いばかりの満天の星空が広がっていった。


「おお…。…!」


 館内は、ざわつき、それには俺も流石に目を奪われていたが、クイクイっと急に袖を引かれて隣を見ると、至近距離に恥ずかしそうに微笑んだ、さくらちゃんの顔があった。


「良二さん…。沢山の星が瞬いていますね…?」


「あ、ああ…。///」


 俺は間近に瞬く綺麗な青い瞳から目が離せなかった。


「良二さん、星空、綺麗過ぎて怖いくらいです…。手…また握ってもいいですか…?」

「あ、ああ…。いいよ…。」


 不安気に囁いて、差し出して来る手を俺はしっかりと握ると…。


「…!(さくら、手がひんやり冷たいな…。)」


 館内に冷房が聞いているせいかだろうか。


 ニギニギ!


 温めるように何度か握り直すと、さくらはその度に小さく声を上げた。


「ひゃっ!はうっ…!//」

「あっ。ごめん。冷たそうだったから、つい…!//」


 慌てて謝る俺に、さくらは少しむくれた顔をしていた。


「もう〜。こっちはいっぱいいっぱいなのに、良二さん余裕なんだから。ずるい…!」


 いや、こっちもいっぱいいっぱいなんですけどね?


「そんな人にはこうです!えいっ。」

「うわっ?」


 さくらが繋いでいた手を引き寄せると、コツンと頭を俺の肩にもたせて来た。


「こ、こ、これなら…流石に照れるでしょう?///」

「さ、さくら…。///」


 俺も頬が熱くなっていたが、同じく真っ赤になってぷるぷるしているさくらを見ると、勇気を出してアプローチしてくれたんだな…と彼女の事をいじらしく思った。


「本当にさくらはすごいな…。」

「良二さっ…。///」


 手を繋いでいない方の手でポンポンと彼女の頭を軽く叩くと、

 クラシックの音楽が流れる中、満天の星空を二人で身を寄せ合って満喫したのだった。





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