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さくらとあんず


 その後、財前寺さんと自分の仕事の事、さくらちゃんと結婚後の生活の事の方向性について話し合った。


 財前寺さんの会社については、兄の龍真りょうまさんが継ぐ予定となっている為、

 俺が転職を望むなら、社内でそれなりのポストを与える事ができるが、それ以上の出世は難しいと言われた。


 さくらちゃんは結婚後、家を出て、相手の家に入る事を希望しているらしい。


 もちろん、生活について、多少の援助はできると思うが、期待している程の額ではないがそれでもよいかと聞かれ、俺は大きく頷いた。


 さくらちゃんと共に人生を歩む決意をしたのは、彼女自身の勇気や懸命さに心打たれたからであり、お金目当てではなかったし、今の会社をやめて、大会社のエリートコースを歩みたいとも思っていなかった。


 俺が、桜さんしか望まない。会社も今のところで、彼女が生活に困らないように頑張って働いていきたいと伝えると、財前寺さんに、「君は欲のない青年だ」と感心したように言われて、さくらちゃんも外で働く意志がある事を教えられた。


 彼女が、今通っている料理の専門学校で、先生に、腕を見込まれているらしく、将来、その道の仕事をしたいと思っているようだった。


 まだ若いさくらちゃんの将来の選択が、俺との結婚で狭まってはいけないと、できる限りのサポートをする事を財前寺さんに申し出た。


 そして、俺の両親との顔合わせに再度日程を調整する事にして、俺は財前寺邸を辞したのだが…。


「猫ちゃん、ただいまですぅ…。」

「ニャ〜♡」


 玄関口で帰りを待ち構えていた野良に、銀髪美少女はニッコリと笑った。


 一度帰宅した筈のさくらちゃんを、またも俺の家に連れ帰って来てしまったのだった。


「猫ちゃん!あなたの遊び場やら、おもちゃやらいっぱい持って来ましたよ?

 いっぱい遊んで下さいね?」


「ニャ?ニャニャ?」


 さくらちゃんが、猫用のグッズが入った大きな紙袋を野良の前に見せると、奴は不思議そうに前足で紙袋の表面をチョンチョン触っている。


「さくらちゃん、野良の道具を色々ありがとうね。でも、本当によかったのかな…?」


「ええ!家に余ってた奴ですから。野良ちゃんに使ってもらえると有難いです。あっ。もしかして、良二さん、自分の好みのもの、用意したかった…ですか…?」


 しまったというような気まずそうな表情になったさくらちゃんに、慌てて俺はぷるぷると首を振る。


「いやいや、俺、猫飼ったことなくて、道具とか何買っていいかすら分からなかったから、ホント有難いんだけどさ。

 昨日から大変な思いさせてしまって、やっと家に帰れたのに、また、ここに来てもらってしまってよかったのかと思って…。

 さくらちゃん、疲れてない…?」


「全っ然疲れてないです!!✨✨」

「うっ。若さが眩しい…!」


 まだ10代のさくらちゃんは、キラッキラの笑顔で、答えてくれ、俺はそのあまりの眩さに、手を翳した。


「良二さんに受け入れてもらって、晴れて親にも認められた仲になれて、私、もう嬉しくて…!今は気分が高揚していて、何でも出来そうな気がするんです。


 けど、一方であんまり上手く行き過ぎじゃないかとも思ってて…。


 今、良二さんと離れちゃったら、やっぱりなかった事に…なんて、なってしまわないか不安なんです…。」


 そう言って儚げに長い睫毛を伏せるさくらちゃんに、俺は胸がキュッと痛んだ。


「さくらちゃん…。」


「遅くなるまでには帰りますから、もう少し一緒にいてもいいですか…?」


「ああ…。もちろん。さくらちゃんがいいのなら…。」


 瞳をウルウルさせてお願いする彼女は、愛らしくてとてもダメだなんて言えなかった。


 本当は俺も彼女がここにいてくれて嬉しいと思ってしまっているのだから…。


         *

         *


「ふうっ。猫ちゃんタワーは完成したし、これで一通り猫ちゃんの身の回りの道具は揃いましたかね〜。」


 リビングにトイレや爪とぎ場を配置し、組み立て式の猫の遊び場を完成させると、彼女は、ガッツポーズをとった。


「あとは、届け出をして、避妊手術と予防接種の予約をしなきゃいけませんね。この辺の動物病院だと、どこがいいのかしら…?

 ちょっと調べますので、明日以降でもいいですか?」


「ああ。うん。もちろん!何から何まですみません…。」


 なし崩し的に野良を飼うことになってしまったが、道具もいるし、結構色々考えなきゃいけないこと事があるんだなぁ…。


 何も分からない俺は、実家で猫を飼っているさくらちゃんにお世話になりっぱなしで、頭を掻いていると、彼女は野良を抱っこして、俺の前に立つと、ふふっといたずらっぽい笑みを向けて来た。


「じゃあ、次に、一番大事な事を決めましょう。この子の名前をつけてあげて下さい。」


「ニャ〜ン♡♡」


「名前…?」


「はい。外で呼ぶ時もあるんだし、いつまでも「野良」じゃ可愛そうでしょう?この子の可愛い呼び名をつけてあげて下さいよ。」


「うむむ…。確かにそうだな…。どうしよう…。」


 自慢じゃないが、俺、そういうセンスは壊滅的なんだよな…。


「さあさあ…✧✧」

「ニャーニャー✧✧」


「う、う〜ん…。あっ!」


 さくらちゃんと野良に期待に満ちた目で見られ、困っていた俺だが、二人…一人と一匹の表情があまりにもよく似ていたのを見ている内に、同じ木に咲く花繋がりで、ある名前を思い付いた。


「あんず…とかどうかな?」


「「!!」」


 さくらちゃんと野良は、一瞬顔を見合わせると…。


「いいんじゃないですか?可愛い名前!あんずちゃん♡」

「ニャニャン!」


「ホッ。よかった…。」


 さくらは親指を立て、さくらは嬉しげに鳴き、どうやら好評のようで、俺は安堵の息を漏らした。


「あんず!」

「ニャン♡」


「あんずちゃん!」

「ニャン♡」


「野良」…じゃない、「あんず」がすぐに名前を覚えたところで、さくらちゃんが俺に提案してきた。


「良二さん。一緒に私の名前の呼び方も変えて下さい。

 私はもう小さい子じゃない。あなたの結婚相手にもなれる大人の女性ですよ?

「さくらちゃん」じゃなくて、「さくら」と呼び捨てで呼んで欲しいな…?///」


 上目遣いでお願いをされ、俺はドキッとしつつ…。

「えっ。さ…桜…?///」

「はいっ。良二さん!」


 俺がその名を呼ぶと、さくらは、満開の桜の木を思わせるような笑顔を見せてくれた。


 その瞬間ー。俺の脳裏に、ある一つの光景が蘇った。

 大きな双丘に…、桜色の…。


「あっ。思い出した…!さくら、綺麗なおっぱいだった…!!」


「ふええっ!!そこだけ思い出さないで下さぁいっっ!!///」


 俺が思わず漏らしてしまった言葉に、さくらは、真っ赤な顔で喚いたのだった…。


*あとがき*

 これにて、2章終了となります。ここまで読んで下さりありがとうございました!


本作品、各公募に応募予定でして、少しでも面白いと思って頂けたら、ブックマーク、ご評価頂けると大変有難いです。


3章からは、幸せへ向かって行く良二くん&さくらちゃん、報いを受けていく白鳥の一夫多妻家庭の話をお届けしていきたいと思います。


次話からは良二くん&さくらちゃん甘々初デート。まずは幸せな二人を見守って下さると嬉しいです。今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m


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― 新着の感想 ―
東京では桜が盛りを過ぎようかというところですが、まだまだ綺麗に咲いています。 ほんの一週間ほどの間のために、一年の残りを費やしている桜。 さくらさんは、散ることなくずっと満開のままで有るのでしょうかね…
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