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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第一章 気付けば世の中は一夫多妻制の社会に…。
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最悪の同窓会


 高校時代の友人に誘われて、元々は行く予定もなかった高校の同窓会に参加したのは、今思い返してみても、最悪の出来事であったが、人生の転機になるきっかけにはなったかもしれない。


 あれが無ければ、あんなにもヤケ酒をあおり泥酔する事もなかったし、結婚をとうに諦め切った俺、石藤良二いしどうりょうじ(29)が、もう一度見合いを受けるとうっかり返事してしまう事もなかったのだから。



 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「そうかぁ…。和哉も来年には結婚か…。」


 俺は高校の同窓会が開催されている、立食式のカフェの一角で、カクテルを片手にしみじみと呟いた。

 向かい合ってシャンパンを飲んでいる高校時代クラスが同じで、その後もちょいちょい連絡を取っていた友人、森崎和哉もりさきかずや(29)は、照れたように頭に手をやった。


「ま、まぁな…。まだ、付き合って1年も経ってないのに彼女のペースに巻き込まれて、気付いたら、「娘さんを下さいっ!!」って彼女の親父の前で土下座させられてたよ。」


 和哉から、職場の後輩と付き合い始めたと聞いたのは、確か去年の冬ぐらいだっただろうか。それから順調に交際が進み、既に結納と式場の予約をしているというのだから、確かに早い。


 俺と同じく、女性関係には慎重なところのある和哉を引っ張って、そこまでこぎ着けたのだから、その後輩の女性はよほどしっかり者なんだろうと推測された。


「何にしても、この()()()()()()()()()()()()で、庶民が相手を見つけるのは大変じゃないか?和哉は、庶民の英雄だぜ。」


「いや、いくら法律的に一夫多妻制が許されるようになったって言っても、要件を満たすのは一部のリア充だけだし、まだ気持ち的に抵抗ある人がほとんどだろ…。まだそこまでの影響は…。」

「………☠」


 と、和哉は言いかけて、ハイライトの消えた俺の目を見て、急いで謝って来た。


「良二、ごめん!!無神経だった!お前からしたら、そうだよな。」

「きき、気にするな…。」


 ダメージを受けつつ、俺は和哉に引き攣った笑いを向けた。


 そう。少子化対策として政府が打ち出した天下の悪法、一夫多妻制法案は、3年前多くの人が反対する中強行可決され、2年前に施行される事となった。


 それに伴い、民法も大幅に改正される事になり、今までほとんど形骸化していた(日本では審査によりほぼ重婚不可能)重婚罪が消滅し、一夫一婦制の家族形態を保護する全ての規定が改定された。


 もちろん全ての人が一夫多妻制を利用できる訳ではない。

 収入や、年齢、住居形態など、より厳しい条件があり、生まれた子供については、保育状況について定期的な審査があるという事だった。

(ちなみに、この法律の成立に伴い、男女不平等との批判が相次ぎ、一婦多夫制法案も可決し、去年から施行されている。)


 和哉の言うように、法律化されたとはいえ

 厳しい条件もあり、一夫多妻制を利用しているのは、ほんの一部のリア充のみ。

 一般人には無縁の法律で、今のところほとんど影響はないものと思われた。


 高校時代にリア充イケメンに彼女を取られ、かつ、後に起業した会社が大成功をおさめたそいつが、施行したての一夫多妻制を利用し、元カノ、有名コスプレイヤー、元アイドルの3人の妻を娶った有名人になるのをニュースや雑誌で嫌と言う程見せつけられー。


 その上、親に勧められてした(もしくはしようとした)見合いの相手を一夫多妻制を利用するリア充のイケメンに取られ、破談になったり、見合い自体が当日にキャンセルになったりという事が立て続けに起こった俺は、一夫多妻制法の悪影響を被った犠牲者という他なかったが…。


「ま、まぁ、白鳥や、瀬川の奴の事もあるけど、俺の周りで、それ以外に、一夫多妻制利用してる奴って知らないんだけどな。なんで、たまたま良二の見合い相手にまで当たっちまうかな…。」


 難しい顔で首を捻っている和哉に、俺は遠い目をした。


「ああ。俺は、余程恋愛、結婚運が悪いんだろうさ…。||||もう諦めてる。和哉は幸せになれよ?」


「良二も、まだ若いんだから諦めんなよ…。」


 和哉が、しょっぱい顔で言った時…。


 バン!

「いやぁ!皆、久しぶり!!」


 突然入口の扉が開かれ、明るい張りのある男の声が響き、会場にわあっと(特に女子の)歓声が上がった。


「「?!」」


 嫌な予感がして俺と和哉が振り向くと、高校時代に俺から彼女を奪い取ったリア充イケメンの白鳥慶一しらとりけいいち(29)

 奪い取られた元カノにして、白鳥の妻、瀬川せがわ…じゃない、白鳥香織しらとりかおり(29)の姿がそこにあった。


「おい。お前…あいつらは来ないって言ってたから、俺参加する事にしてたんだけど…?」


 低い声で、和哉を責めるように見ると和哉は慌てたように手を振った。


「い、いや、俺、ちゃんと幹事に奴らが来ないって確認したんだけど…。」


「ハッハー!今日は、実業家同士のパーティーが突然キャンセルになったので、こっちに参加できる事になりました。久しぶりに皆に会えて嬉しいよ。」

「皆、久しぶり。」


 結婚式場の新郎新婦よろしく華々しく

 登場した。


「白鳥くん、カッコイイ♡」 


「香織もキレイ♡」


 きざな白のスーツ、ゴージャスなドレスで、結婚式場の新郎新婦よろしく華々しく登場した白鳥夫妻に、女達がキャーキャー騒ぐ中、俺と和哉は、同時に負のオーラを発し呟いた。


「「いや、嬉しくねーし、突然来んなよ。」」


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