おまけ話「さくらとコスモスの簡単北欧料理講座」〜猫の手も借りたい編〜
「はーい。今をときめく料理研究家の財前寺桜ちゃんと…」
「お祖母さんのS国料理のお店、『イェッテゴット(S国語で超美味しいという意味)』で料理人として働いている宝条秋桜ちゃんで」
「「今日も簡単に出来る北欧料理を紹介していこうと思いまーす!」」
パチパチパチ…!!
可愛い北欧風のエプロンを身に着けた秋桜と桜は、石藤家のキッチンで、設置されたカメラに向かってニッコリと微笑んでお互いを手で指し紹介し合い、拍手をした。
「さて、初の生配信企画!今日は最近テレビや雑誌に引っ張りだこで、猫の手も借りたいぐらい忙しいというさくらちゃんに、二人の猫ちゃんが、手伝いに来てくれてますよ〜?」
「二人ですか?二匹じゃなくって?」
秋桜の言葉に桜が目を丸くしたところへ…。
「「はーい。猫の手を貸しに来たにゃん!」」
「…!あ、あなた達は…!」
現れた二人の人間に息を飲む桜。
「家で飼っているあんずちゃんに…、実家で飼っているリュウちゃん…?!」
「はい。あんずニャンですニャ!」
「はい。リュウニャンですニャ!」
石藤家で飼っているあんずそっくりの猫マスクをつけた体格のよい男性と、財前寺家で飼っているリュウそっくりの猫マスクをつけた高身長のすらっとした男性が、同時に返事をした。
「二人の猫ちゃん達は、何でもお手伝いをしてくれるそうですよ?ホラホラ、桜ちゃん、お願いしてみては…?」
「あ、はい。えーと…。じゃあ、今日紹介する料理名とレシピを表示してもらえますか?」
秋桜の薦めで桜は恐る恐る猫マスク男子達にお願いすると、二人は、それぞれ手に持っていた料理名が書かれたプラカードを掲げた。
「はーい。今日紹介する料理は、F国のフィッシュスープと…」
「S国のミートボールですニャ!」
「「レシピはこの通りですニャン!」」
猫マスク男子達は、プラカードをひっくり返し、裏に書かれたレシピを表示する。
「「あんずちゃん、リュウちゃん、ありがとう!(キュン萌え♡)」」
猫マスク男子達は、猫の手も付けており、肉球をちら見せしながらの、レシピカード公開に、萌えてしまう桜&秋桜。
「このメニュー(フィッシュスープ)にしたのは何か理由があるんですかニャ?」
あんずニャンに聞かれ、桜が頬を染めて答える。
「ええ…。最初に私の旦那様に食べてもらったのが、その時、台所にあったあり合わせの野菜で作ったスープで、美味しいって言ってもらえて嬉しかったです。
具が少ないあっさりした味のスープでしたが、二日酔いには丁度よかったみたいで…。何しろその前日、旦那様お酒をかなり飲んでいて、私に「おっぱ…むぐっ。」
「わー!わー!///さくら、それ以上はまずいって!!」
発言の途中で慌てて猫の手でさくらの口を塞ぐあんずニャン。
「ん?何やら、気になる発言が聞こえかけたような…?」
「良二く…、あんずニャン…。後で詳しく聞かせてもらおうかニャ…」
興味津々の秋桜に、あんずニャンに圧の籠もった視線を送るリュウニャン。
「あっ。えっと、それから次の機会に旦那様にお作りしたのが、このサーモンスープで、私にとって思い出深いスープの味を皆さんにも楽しんで頂けたらと思ってこのメニューにしましたぁ!」
暴走しそうになったものの、軌道修正し、満面の笑みで誤魔化すさくら。
「このメニュー(ミートボール)にしたのも理由があるんですかニャ?」
「ええ…。私も今の彼と付き合い始めた最初の日に食べてもらった手料理が、ミートボールだったので、このメニューにしました。
彼、イベント会場で、「僕とコスプレを前提に付き合って下さい。」なんて胸に迫る告白を…むぐっ。」
「わー!わー!///緊張して間違えたんだ!本当は結婚を前提にって言いたかったんだ!」
発言の途中で慌てて猫の手で秋桜の口を塞ぐリュウニャン。
「お兄さ…、リュウニャン、あのイベントの後、秋桜ちゃんにミートボールを作ってもらっていたんですね?」
「龍馬さ…、リュウニャン、ほぼプロポーズな告白をしようとしていたんですニャ…!(さくらと同じだ。血は争えないなぁ…。)」
秋桜とリュウニャンのやり取りに興奮気味のさくらとあんずニャン。
「それでは、料理の工程に移ります。
フィッシュスープにこのサーモンを使っていきたいと…。」
「ニャー♡」
桜が説明していると、魚の匂いに誘われて、あんずにゃん(本物)がトコトコとやって来た。
「あっ。あんず、昼寝終わったのか?撮影中だから、今はキッチン入ったらだめだぞ?」
「っ…?!!っ…?!?|||| 」
前へ出たあんずニャン(猫マスク)に、仰天し、怯えるあんずにゃん(本物)。
「「「…!!||||」」」
そのシュールな絵面に言葉を失う他の面々。
「あんず?どうしたんだ?俺だよ、俺。」
「ふ、フギーッ!」
ダダッダダダダッ!!
あんずは毛を逆立て、リビングの端まで後退りすると、一気に部屋の外へ走り去って行った。
「何だよ、あんず、飼い主に対して、お化けでもみたような…。」
「ま、まぁ…。自分と同じ顔の人間がいたら、ちょっと怖いかもですね…。」
ちょっと傷付いた様子のあんずニャン(猫マスク良二)に、さくらは苦笑いをし、リュウニャン(猫マスク龍馬)はため息をつく。
「俺もこの格好リュウに見せたら、敵意を向けられて引っかかれたよ。全くRJの跡取りにひどい事…」
「あのあのっ、皆さぁん、コレ、生配信なんですけどぉっ…」
「「「ハッ!」」」
そこへ秋桜に指摘され、他のメンツも猫マスク男子がほぼ身バレしてしまった事にやっと気付き、固まった。
グダグダな感じになってしまった◯ーチューブ生配信であったが、期せずして、いつもの2倍の視聴者数があったとか…。