一夫多妻制家庭と㈱スワンのW崩壊
「畜生、畜生…!!卑怯な奴らめ、許さんぞうっ!!」
卑劣な石藤に殴られ、その変態妻財前寺桜、非道な財前寺龍人、嫌味な山本によって陥れられ、妻の香織にも裏切られ離婚届を突きつけられ、RJ本社を追い出され、怒りと屈辱の中、僕は自分のマンションへと車を走らせた。
「あんな奴らとの仕事など、ポシャって正解だ!!
香織も香織だ!
何が、精子が確認できないだっ…!桃姫、万里生、瑠衣司の生物的な父から排除されるだっ?
夫の為になるどころか、奴らの味方をして嫌がらせにご丁寧に偽造書類まで作りやがって!!
離婚上等だ!!
あいつ等皆、この僕の美しい顔を殴った罪も含めて償わせてやるっ!!」
怒りのあまり、どこをどう走ったのか自分でもわからぬまま、なんとか自宅のマンションにたどり着くと、僕は玄関のドアをバンッと勢いよく開けた。
「綺羅莉!舞香!」
「「け、けいちゃん…!」」
苛立ちながら、居間にいる綺羅莉と舞香に呼びかけると彼女達は青褪めた顔で飛んで来た。
「香織が離婚届を突きつけて来た。しかも、嫌がらせに俺と君達を中傷するような…」
「えっ。それって、やっぱあの動画を見てっ?||||||||」
「は?動画?」
会話を遮るように綺羅莉によく分からない事を聞かれ、僕は思わず聞き返した。
「記者に、会社の部下に、ユーチューバーに、コスプレイヤーに、セクシー女優に、ついでに私の所属していたアイドルSQプリンセス24のグループ全員とか!
いくら何でも手広くやり過ぎだよ!」
「そうだよ!あたし達、明日から外歩けないよ!子供達も変な目で見られちゃうじゃん!一体どうしてくれんの!!」
「な、何を言ってるんだ?」
舞香と綺羅莉に半々ぐらいは思い当たる事を代わる代わる責められ、元々苛々していた僕は、爆発した。
「君達が、そんなわけの分からない頭の悪い事ばかり言うから、香織の反感を買うんだろうが…!
こんな書類まで、作られたんだぞっ!?」
「「…?!!||||」」
テーブルの上に偽の診断書とDNAの鑑定結果を叩きつけてやると、彼女達は青褪めて静まり返った。
「せ、精子が確認できないっ…。
父親の可能性を…排除っ…。さ、三人共…。」
「や、やっぱり…。」
「??」
書類を確認してこんなの事実無根だと怒る事もなく、震えて顔を見合わせている二人に違和感を覚えた。
「ち、違うの。けいちゃん。最初から騙すつもりじゃなくて、元カレの子かどっちか分からなかったの。」
「あ、あたしも、二人目は、そう。分からなかったの。」
「??おいおい、待てよ。それじゃ君達が本当に託卵をたくらんだみたいじゃ…。」
舞香と綺羅莉の言葉に、僕はそう言ってはたと口を噤んだ。
『そう思うなら、彼女達の同意を得て、もう一度鑑定してみたら?
私は、もうあなた達との腐り切った関係をこれ以上続けていく気はないから、受け取って?』
嫌がらせにしては、これを僕に渡した時、香織は信じようが信じまいがどうでもよいといい表情で、離婚届を渡して来たのだった。
これが嘘だったら、どんなにいいかとも言ってた気がする。
「ま、まさか、本当に、この僕が種なし…??桃姫、万里生、瑠衣司は僕の子じゃない…???|||||||」
呆然と呟き、気まずそうな二人の妻、綺羅莉、舞香を見た。
「け、けどさ、けいちゃんも不倫しまくってるんだから、お互い様って奴だよね?」
「そうそう!それに、本当は子供が出来ないところを父親になれたんだから、ラッキーみたいな?」
「っ…??っ…???」
何を言っているんだ?こいつらは!
今まで妻だと思っていた奴らの醜悪さを垣間見て、僕が後ずさった時…。
ガラッ。
「あっ。パパだ!」
「「ん〜、パパ〜!」」
「桃姫!万里生!」
「瑠衣司!」
「っ…!!||||||| 」
昼寝から起きて来たらしい桃姫、万里生瑠衣司が隣の部屋から飛び出し、僕に近寄って来たので、急いで身を捩って避けた。
「よ、よせっ!!寄るな〜っ!!」
「ど、どうしたの?パパ〜。」
「「パパ〜?」」
今まで愛おしんで来た子供達が、綺羅莉と舞香が他の男と作った子供だと思うと、何か得体の知れない生き物のように思われ、おぞましくてならなかった。
「「けいちゃん、ひどいよ!」」
「うるさい!お前らなんか、妻でも、子でも何でもない!!」
抗議してくる綺羅莉と舞香に、僕はそう言い放つと、我が家から走り去った。
香織から受け取った書類は真実だった!
僕は子供が出来ない体だった!
僕の築いた一夫多妻制家庭は託卵妻とその子達に支配される地獄の城だった!
「うわあああ〜〜っ!!わああっっ…!!」
男としてのプライドも、家庭も全て崩れ去り、絶望の中、車の中で号泣していると…。
ブーッ。ブーッ。ブーッ…。
スマホがしつこく何十回も鳴った。
「ううっ…。こんな時に、何だよっ…。??」
電源を切ろうとして、会社からの着信履歴が20件近くあるのに、目を見開いた。
ブーッ。ブーッ。
「…!は、はい。僕だが…」
また着信があり、恐る恐る僕が出ると…。
「あっ。社長!やっと繋がった!今、どこにいるんですか!?」
「今刈…?自宅…の近くだが?」
今年入った新人の男性社員、今刈が切迫した声で聞いて来たので、言葉を濁して場所を伝えると…。
「すぐ会社に戻って下さい!
宮並さんが会社の動画システムを持ち出して、社長の愛人履歴の動画を投稿するは、青田さんが経理の不正を警察に自首するは、今会社はパニック状態なんです!」
「は、はあぁっ?」
立て続けに信じ難い事を言われ、僕は目を見張るばかりだった。
順風満帆だった僕の人生に突如訪れた地獄は果てしなく、まだ、その底が知れなかった…。
*あとがき*
いつも読んで下さり、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます。
いよいよ物語も終盤、白鳥視点→白鳥香織視点、幸せな良二くんとさくらちゃんサイドの話を投稿していきたいと思います。
今後ともどうかよろしくお願いします。