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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第四章 白鳥へのざまぁ。そして、一夫多妻制の許された社会で俺は…。

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メロドラマ(プロデュースByさくら)の上映 in会議室


「石藤くん、これは一体どういう事だい?」

「小坂さん…。」


 打ち合わせ会議で、RJ社長で義父でもある財前寺龍人に、イベント搬入機材について厳しい追及を受けた事に、うちの会社の営業部長の小坂さんは、焦って俺に詰め寄って来た。


「石藤くんが参加すれば、我が社の心象がいいだろうと思っていたのに、逆に悪くなってるじゃないか!

 石藤くん、お義父さんと、奥さんと、喧嘩でもしたのかい?!


 悪い事は言わないから、やらかしてしまったなら、石藤くん早く謝ってくれよ!君の肩に我が社の命運がかかってるんだぞおぉっ!!」


 半泣きの小坂さんにぎりぎりと肩を掴まれ、揺さぶられ、俺は悲鳴を上げた。


「うわぁっ!小坂さん、痛い、痛いですっ。い、今説明しますから力緩めっ…」


 カチャッ。


 その時、会議室へ戻って来た人物は、

 俺が痛みにもがいているのを見て、目を丸くした。


「おやおや、MFの営業部長さん、うちの婿に何をやってるんだい?

 社員教育に熱心なのはいいが、暴力は止めといてくれよ?」

「えっ。ざ、財前寺社長!!」


 小坂さんは、RJ社長財前寺龍人の姿を見て、慌てて俺から手を離した。


「さっきの打ち合わせの件なら、悪かったね。

 ある人物をこの状況に誘い込む為に一芝居打たせてもらった。

 機材は、前の世代のモデルの方が色味が好みと言う事で、さくらに頼まれていたものだから、最新機材にする必要はないよ。」


「えっ?ええっ???」


「全く、旧友の頼みとはいえ、こんな茶番に付き合わされ事になるとはな…。」


「失礼します…。」


「雪森の山本様と…、えーとこの方は???」


 呆れ顔の雪森の営業部長の山本さんと神妙な表情の白鳥香織も、続いて会議室に入って来た。

 事態が飲み込めず、目を瞬かせる小坂さんに、俺は手を合わせて謝った。


「事前にお知らせできず、ごめんなさい。小坂営業部長。後で全部説明しますから…。」


「良二くん、今、白鳥が部屋に入ったから、すぐに画像を繋いでくれ!」


「分かりました!」


 お義父さんの指示に従い、あらかじめ隣のカメラと連動させていた機材を操作すると、前方スクリーンに画像が映し出された。


『そうです。石藤の幸せの先には、香織。香織の幸せの先には石藤がいる。

 残念ながら、今や僕達の存在は彼らにとって邪魔でしかないでしょう。』


『そ、そんな…!私には良二さんしかいないのにっ…!ううっ…。彼と離れたら、私はこれから先どうやって生きて行けばいいんでしょうかっ。』


「「「「「…!!」」」」」


 そこには、俺と香織の映った写真をさくらに見せ、悲しんでいるところにつけこんで、口説こうとする白鳥の醜悪な姿があった。



 顔を覆って肩を震わせているさくらに、白鳥は呼びかけた。


『さくらさん…。お辛いのは分かります。僕も同じです。僕は夫として誠実に向き合って来たつもりなんですが、今、家庭でどの妻にも愛されておらず、夫婦生活も拒否されています。』


「何が誠実に向き合って来たつもりよ?不倫しまくって、妻全員に性病移したくせに、よく言うわ…。」


「「「「…!」」」」


 近くで死んだ魚の目でそう呟く香織に、俺も含め男性陣は息を飲んだ。


 やはり、白鳥の病院通いは、外での火遊びの対価だったのか。


 妻にまで移したら、そりゃ夫婦生活拒否されるだろうよと、香織含め妻達に同情する思いだった。


『香織と離婚して、一夫多妻制が崩壊すれば、他の妻達も僕の元を去り、一人ぼっちになってしまうでしょう…。』


『まぁ、白鳥さんも一人ぼっちに…。』


 さくらは、白鳥を涙に濡れる目で見上げた。


『さくらさん…。僕達はまだ若い…。一緒に人生をやり直しませんか?』


『えっ。』


『実は、僕はずっと前からあなたに惹かれていたんです。』


『白鳥さん…!』


 さくらは、胸元で手を組み合わせ、大きな目をパチパチと瞬かせ、白鳥を見詰めた。


 メロドラマのワンシーンのような二人の姿に、さくらは芝居を打っているだけだと分かりながらもズキズキと胸が痛んだ。


 増してや、本気でさくらを口説いている白鳥を見る香織の心中は穏やかではないだろう。


 少し離れた場所にいる香織は、辛そうに眉根を寄せ、画像を瞬きもせず見守っていた。


『料理教室で愛らしいあなたを見かけた時にも、あのイベント会場で、再会した時にも、どうして強引に奪ってしまわなかったのか、後悔しているんです。


 香織の事は辛いですが、こんな風にあなたに会えた事は運命のように感じています。』

「…!!」


 そして、白鳥が組み合わせたさくらの手に触れようとしたのを見て、腸の煮えくり返る思いだったが…。


 バッ…!


 さくらは身を翻して、白鳥から離れ、俺はホッと息をついた。


『い、いけません…!』


 白鳥は、距離を取ったさくらを宥めすかすように呼びかけた。


『さくらさん…。あなたを愛しています。僕なら、石藤のようにあなたを泣かせる事はしません。望む事なら何でもして、あなたを幸せにしてみせます。』


『望む事なら…な、何でも…?』


 怯んだようなさくらに、白鳥の奴は邪な笑みを浮かべた。


『もちろんです。あなたの為なら何でもできます。』


『で、でも、私…、その…。人に言えない…ちょっと激しい性癖があって…。//』

『…!』


「「「「…!」」」」

「い、いや、これは、彼女の芝居でっ…。」


 さくらがそう言った瞬間、画面を見守っていた他の面々が一斉にバッとこちらを向き、俺とはいたたまれない気持ちで辿々しく言い訳をした。


 さ、さくらぁっ…!

 もっと他の作戦はなかったのかいっ!?


『ご安心下さい。石藤と違って、あなたを100%満足させてみせます。』


『では、早速、今、ここで試してみてもいいですか?』


『今、ここで…ですか?』


 さくらさんにそんな事を申し出られ、白鳥は目を剥き、こちらの方向を見遣った。


 まさか、さくらの夫である俺、さくらの父である財前寺龍人さん、白鳥の妻である香織、他仕事の関係者二人に今の状況をリアルタイムで鑑賞されているとは思わないだろうが、流石に躊躇われたようだった。


『防音室ですから、隣の部屋に音は聞こえません。嫌なら、いいですが…。』


『あっ。いえ!嫌なんて事、あるわけないですよ!ぜひ今ここで試してみましょう。』

「!」


 その時白鳥が浮かべた悪どいスケベそうな笑みを、俺は憎悪と共にしっかり胸に焼き付けた。


 画面上で、さくらに誘われ、白鳥は喜び勇んで、パーテーションの隙間から、隣の区画の広いソファへと移動するのを見遣りながら、俺は会議室の機材をいじり、もう一つの区画に設置したカメラの画像に切り替えた。


 ガタッ!


『?!』


「「「!!」」」


 突然、広いソファから大きな人影が身を起こしたのに、白鳥だけでなく、作戦を知らない香織、雪森の山本さん、営業部長小坂さんも、ビクッとした。


『あらぁ、可愛い坊やねっ?』


『うわぁっ。何だ、お前はっ?!||||』


 ソファに座っていたのは、女性用の化粧を施し、スケスケのランジェリーを着用したいかつい男性で、その凄まじい姿に白鳥は悲鳴を上げた。



「「「!???」」」

「「ご、権田くん(さん)…。」」


 衝撃を受ける三人と、額に手を当てる俺と財前寺龍人おとうさん


『うふふっ。初めてでも、緊張しなくていいのよ?この権子ごんこちゃんが、優しく教えてあ・げ・る』


『うわっ!やめっ…!||||』


 急に逞しい腕にガバっと抱き着かれ、白鳥がもがいていると、さくらが慌てて飛んできた。


『あらあら、駄目ですよ!』

『さ、さくらさん、助けてくれ!急にこの変質者が…?!』


 さくらに助けを求めようとして…。彼女に一眼レフカメラを向けられている事に気付き、白鳥は目を見張った。


『ふふっ。もう、権田さ…権子ちゃんたら、せっかちさんですね?やるなら、ちゃんと撮影が始まってからにしないと駄目でしょう?』


「「さ、さくらぁっ。」」


 画面上のさくらは、もはや、演技とは思えないさも愉快そうな笑顔を浮かべていて、俺とお義父さんは血の涙を流したのだった…。

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