さくらの本領発揮
※注意書き※
この話と、108話、109話に少し暴力表現があります。苦手な方はご注意下さいm(_ _)m
僕が醜悪なランジェリー姿の男にソファに押し倒されている様子に喜々としてビデオカメラで撮ろうとしているさくらさんに、僕は信じられない思いだった。
「さ、さくらさんっ。何をふざけているんですかっ…?早く、この不審者を捕まえて下さいっ!!」
「あふんっ…♡」
押し付けられる厚い胸板を突き飛ばし、その不審者をソファから追い出し叫ぶと、萎れていたさっきまでさくらさんとは別人のように、彼女は生き生きとした笑顔を俺に向けて来た。
「権子ちゃんは、不審者ではなく、私が然るべき場所でスカウトして来た男優さんですよっ?
実は、私、激しいBL趣向がありまして、いつか、自分の手でリアルなAV動画を撮れないものかと思っていたんです。」
「は、はあぁっ?!何だソレ?!」
清楚可憐な財前寺桜さんが、BL趣向っ!?AV動画の撮影までしたいだとっ?!
突然のカミングアウトにドン引きしている僕に、さくらさんは、ずいっと詰め寄った。
「さっき、白鳥さんは、『望む事なら何でもして、あなたを幸せにしてみせます。』って言って下さいましたよね?
さあっ!今すぐその身を権子ちゃんに捧げ、その様子を私に撮影させて下さいっ。
私の幸せの為にっっ!!✧✧」
「き、君は頭がおかしいのかっ…!?そんな事できるわけがないだろうっ!!!」
目をキラキラさせ、歌い上げるようにソプラノボイスを響かせる彼女に、僕は堪らず怒鳴りつけた。
「あらら?私を愛してると言ったのは嘘だったんですかぁ?」
「い、いくら、好きでもそんな事気色悪いできるわけないだろうっ!
清楚な天使だと思っていたのに、とんだド変態じゃないかっ。
僕を騙したのかっ!?」
僕の非難にも全く動じず、彼女は、不敵に笑った。
「ふっ。あなたが勝手に私の事を都合のいいように勘違いしていただけです。
やっぱりあなたの愛は薄っぺらいですね?
ちなみに、良二さんはそんな私の趣向も含め、愛してくれていますよ。
身も心も大満足させてくれるのは彼一人だけです。
それなのに、あなたごときが彼の代わりを狙うなどおこがましいにも程があります!」
「石藤なんか、人の妻と不倫するような奴じゃないか!」
「そっくりそのままあなたに返します。不倫とは、今まであなたが散々してきた事。そして、さっき私にしようとした事がそのカメラに映っています。」
「ここよ?ここ♡」
「んなっ…?」
彼女が指摘し、変質者が指を差したパーテーションの位置に3センチぐらいの小さなカメラがついているのが目に入って僕は愕然とした。
「ふふっ。私に誘われて隣のソファへ移動する時のあなたの好色そうな表情、権子ちゃんに抱きつかれた時の情けない表情がしっかり映っていますよ。」
「…!くそっ!こんなのが何だっていうんだ!」
ガシャンッ!
僕は力任せに、カメラを叩き落とした。
愛らしく思っていた彼女の所業に腹の煮え繰り返る思いだった。
「ちっ。せっかく選ばれた人間であるこの僕が伴侶に選んでやろうとしたのに、
君のような性悪なド変態女は、こちらから願い下げだ!!
正しい王子である僕に相応しくないっ!!」
人差し指を突き付けて宣言してやると、彼女はバカにしたような笑顔で、更にいい募って来た。
「何が王子ですか?!あなたは、卑劣な計略を巡らし、人のものを奪い取ろうとする、薄汚いこそ泥じゃないですか!」
「なっ。こ、この光り輝く僕がこそ泥だとっ。」
「そうです。そして、私にとってあなたはなんの価値もない人。あなたが誰と絡もうが気色悪いだけで、一切萌えませんんっっ!!」
「う、ううっ。価値がないだとぉっ?王子のこの僕を罵倒しやがって!こ、この、天使のような外見の悪魔めっ!!」
「きゃっ。」
「さくらお嬢さ…!」
あまりの言いように怒りに震え、思わず彼女に向かって拳を繰り出したところ…。
「白鳥ぃぃっっ!!」
ガターン!!
「?!うわぁっ!!」
パーテーションを蹴倒して、もう一つの
区画の方向から、人影が飛び出し、俺に向かって拳を振り上げて来た。
「俺の妻に何してんだぁっ!!」
ボグウッ…!!ドゴオーン!!
「ぶげえっ…!!」
熱い痛みが頬に走り、気が付くと僕は部屋の隅にぶっ飛ばされていた。
✻あとがき✻
いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
次話以降ほんの少し時系列遡って良二くん視点、香織視点と移っていきます。
盛り上がらなかったらすみませんm(_ _;)m
1カメ、2カメ、3カメみたいな感じで見守って頂けると有り難いです。




