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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く  作者: 東音
第四章 白鳥へのざまぁ。そして、一夫多妻制の許された社会で俺は…。

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権田さんといっしょ 〜最後に愛はカツ計画〜《後編》

「青田雅彦が、その日、石藤様の自宅から近い、うちの関連会社に営業に来ていた記録と駐車場に置いた車の記録が残っています。駐車場から出た記録は、石藤様の事故推定時刻の5分前。


 そして、調べによると、白鳥はその後物損事故を申告し、車を修理に出しています。」


「「…!」」


 俺とさくらは、権田さんの淡々と告げる事実を目を見張って聞いていた。


「白鳥の車は、日本で数台しかない高級車です。事故を起こしたのは、その車でまず間違いがないものと思われます。

 しかし、計画的な事故にしては雑な点が多く、青田雅彦が白鳥に頼まれて石藤様を狙ったのかどうかは…。


 いずれにせよ、私はこの青田が白鳥を追い落とす鍵を握っていると見て、接触を試みてみるつもりです。


 そして、この事故の件で揺さぶりをかけていきたいと思うのですが…。」


 権田さんは、そこで気まずそうな顔で言葉を切った。


「石藤様…事故を引き起こした相手を許せないお気持ちを当然お持ちかと思います。

 しかし、彼をこちら側へ引き込む為に、事故の責任について相手に多少譲歩する事が必要な場合があるかもしれません。


 石藤様、さくらお嬢様、この件について、この権田の判断に任せて頂いて構わないか、ご相談をさせて頂きたく、今日はこちらにお伺い致しました。」


「「権田さん…!」」


 苦しげに眉根を寄せる権田さんに思わぬ事を言われ、俺とさくらは目を見開いた。


 そして、俺は少し考え…、そして権田さんに向かって告げた。


「あの事故の件は、権田さんに全てお任せします。

 白鳥を追い落とす為に必要であれば、事故を起こした青田という男にどのように譲歩しても構いません。」


「…!石藤様、ありがとうございます。」


「良二さんっ…!」


 権田さんが頭を下げる中、さくらが、悲鳴のような声を上げた。


「本当に、いいんですかっ!?その青田って人は、良二さんをひき逃げをしたんですよ?

 一歩間違えれば、良二さんもあんずちゃんもどうなっていたか、分からないのに…!

 私はその人を許すことは出来ませんっっ。」


「さくらっ…!」

「さくらお嬢様っ…!」


 怒りに拳を震わせるさくらの肩に手を置き、俺は宥めるように言った。


「俺も、その青田って奴を気持ちの上で許せるわけじゃないよ。けど、結果的にあの事故で俺は軽傷だったし、あんずも無事で済んだ。

 お見合いに行けず、さくらには辛い思いをさせてしまったが、今はこうして二人、幸せに過ごせている。

 今の俺にとって、過去の恨みを晴らすよりも、さくらとの未来の障壁になるものを取り除く方が大事な事なんだ。分かってくれるな…?さくら…。」


「良二さんっ…。」


 さくらは食い入るように俺を見詰め…、やがて涙を落として俯いた。


「わ、分かりましたっ…。」


「さくら…。分かってくれてありがとう。」

「石藤様、さくらお嬢様。お辛い選択を迫ってしまい、申し訳ありません。」


 俺は重いものを飲み込んでくれたさくらを抱き寄せ、権田さんは深々と頭を下げた。


「その代わり、白鳥を撃退する為に、私にも出来る限りの事をさせて下さい。

 多少の危険は覚悟の上ですっ。」


「さ、さくらっ…!||||」


 さくらの申し出に、今度はこっちが青くなり、権田さんは、目を潤ませた。


「さくらお嬢様、本当にお強くなられましたね…。この権田、感無量でございます…!

 では、決戦の日当日の打ち合わせですが…。」


 グウウーッ…!


 そこまで言った時、権田さんの腹から盛大な音が鳴った。


「「…。」」


「し、失礼致しました。今、ゴジラとモスラが体の中で、戦いを繰り広げておるだけでございます。お気になさらず…。」


 権田さんが顔を赤らめて言い訳をする中、さくらは困ったような微笑みを彼に向けた。


「権田さん…。私達の為に、ここしばらくずっとあちこち駆けずり回って下さってるでしょう?

 ご飯ぐらいちゃんと食べて下さいね!

 今日は気合を入れて、カツを沢山揚げ過ぎちゃいましたから、カツ定食今持ってきます!」


「いえ、さくらお嬢様。私めにそのような…!」

 

 キッチンへ向かうさくらを止めようとする権田さんに、俺はにっこり微笑んだ。


「権田さん。食べて行って下さい。勝負の前のゲン担ぎに参加すると思って。ねっ。」


「…!は、はい…。勿体のうございます…。」


 権田さんが感動に打ち震えている時…。


 ピンポーン!


 隣人、西城亜梨花の訪問があった。


「うわーん!良二くん、さくらちゃん!!聞いて!!駿ちゃんとまさやんが、揚げ物食べちゃ体に悪いっていうんだよぅ!

 お医者さんは、生物なまものだけは気を付けて今は食べたいものを食べていいって言われてるのにぃ!!

 酒が飲めないんだから、ご飯ぐらい好きなもの食べたいよぉ!!」


「あらあら、亜梨花さん…。」

「ハハッ…。西城さん…。」

「西城様…?」


 ドアを開けるなり、泣きついてくる西城亜梨花に、苦笑いのさくらと俺、不思議顔の権田さん。


「よかったら、カツ定食、食べて行かれます?(今日はいっぱいカツ揚げておいてよかったです…。)」


 さくらは騒がしい隣人にも天使の笑顔を向けたのだった。


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