銀髪美少女サービス嬢になる?
「き、君が俺の見合い相手…?!」
「はい。」
俺はわなわなと震えながら、銀髪少女を指差すと、彼女は頬を紅色に染めて頷いた。
母親の見合い相手について、『天使みたいに綺麗な銀髪の娘さんだったよ。』
と言っていた。
艷やかな銀の髪、陶器のようにきめ細かな白い肌。パッチリした青い大きな目に、瑞々しい桜色の唇。
ほっそりしつつも、出るとこ出た完璧なプロポーション。
確かに今、目の前にいる銀髪の少女は、天使みたいな完璧な美少女。
母親の言葉通り、いや、それ以上の美貌を持つ彼女が、見合い相手だという事実を受け止めきれない内に彼女は哀しげな顔になった。
「昨日、良二さんに、お見合いをすっぽかされてしまった私は当然落ち込みました。何か私に重大な落ち度があったのだろうか。お見合いが始まる前から何か、良二さんの不興を買うような事をしてしまったのかと…。」
「ハッ。ご、ごめん。そうじゃないんだ。俺、昨日は…。」
「ええ。夕方頃に、良二さんが事故に遭ったらしいという事を聞かされました。
けれど、父は、事故に遭ったにも関わらず、ほとんど無傷だという事が、本当とは思えなかったようで、どちらにしろこの縁談は破談にすると言われてしまいました。
けれど、私は納得出来ず、良二さん自身に話を聞いてみようと決心をしたのです。」
「それで、ここに来たってわけか…。でも、どうして、俺なんかとの縁談の為にそこまで…?
俺なんか、金持ちでもイケメンでもない、ただのくたびれたサラリーマンだよ。
君みたいに若くて綺麗な社長令嬢だったら、他にいくらでももっといい結婚相手を探せるだろうに…。」
俺が不思議に思い、聞いてみると、銀髪美少女は、ふるふると首を振った。
「いいえ!そんな事はありません。他の相手じゃ無理なんです。
私は、良二さんとのお見合いに、全てをかけていたんです…。」
「???」
頑なにそう言い張る彼女に首を傾げていると、彼女は、また困ったような笑顔を見せた。
「わけが分からないですよね。その事は、また後で説明しますね?
まぁとにかく、昨日私は決死の思いで、良二さんのお家へお伺いしたわけですが…。」
「?」
そこで、銀髪美少女は言い淀むと、顔を赤くして言い辛そうにポソポソと呟いた。
「良二さんは、大分酔っておられて、その…。//私の事を性的なデリバリーサービスをする女性と勘違いをされていたみたいでした。」
「へっ…。||||」
彼女の言葉に俺はざっと青褪めた。
ああ、俺はこの子に何回謝ったら、人として許されるのでしょうか?
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
(以下、銀髪美少女=見合い相手、財前寺桜さんの回想です。)
「お嬢様…。本当にお一人でよろしいのですか?」
「はい。権田さん…。私ももう立派な大人。一人で話を伺って来たいのです。」
私がそう答えると、小さい頃から、うちでボディガード兼運転手を務めてもらっている権田玄吾郎さんの、いつもは無表情な強面の顔が、心配そうに歪んでいた。
「お嬢様。いかに、彼が良い人間であったとしても、
この時間に、若い女性が一人で男性の家を訪れるということは、危険を伴う事である事は
分かっていらっしゃいますか?」
「はい…。全て覚悟の上です…。」
私は拳を握り締め、権田さんに頷いた。
「それなら、私からはもう何も言えません。せめて、お守り代わりにこれを持って行って下さい。使うかどうかは、お嬢様の判断に任せます。」
「権田さん…。」
私は、権田さんから、催涙スプレーとスタンガンを受け取り、そっとカバンに忍ばせた。
「では、私はこれで。彼がお嬢様の思っているような立派な人物であるように祈っております。」
そして、権田さんが車に乗り込み、こちら見守っているのを感じながら、向き合わなければいけない相手、石藤良二さんの家の前に立ち、一つ新呼吸をした。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
「いや、出会う前から不穏!権田さんって、何者なんだ?!」
「ですから、ボディーガード兼運転手です。今も近くにいてくれて、呼べば5分以内に駆けつけてくれる筈です。」
話しの途中で、思わずぶるって突っ込んでしまった俺に、銀髪美少女は、人差し指を立てて得意げに答えた。
「セコム以上のセキュリティ?!まさか、俺、君にセクハラして、そのスタンガンで気絶させられてるから意識がなかったんじゃ…。」
犯罪を犯した俺は、これからその強面のボディーガードに引き渡される運命なのかと青褪めたのだが、銀髪美少女は、慌てて手を振って否定した。
「いえいえ!スタンガンは使っていませんよ!良二さんの記憶がないのは、お酒に酔われていたせいかと…。何しろ、私が家を訪問した時には既にかなり酔われていたようなのですが、それからまた飲まれて最終的には泥酔と言ってよい状態でしたので…。」
「え。そんなに?」
「はい…。」
銀髪美少女は、その時の事を思い出したのか、苦笑いを浮かべて、俺を訪問した時の出来事を話し始めた。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
ピンポーン!
ドキドキしながら私は玄関のチャイムを鳴らした。
インターホンから、ガチャッと音が響き、人が出たような気配があり、私はインターホンのカメラに向かって、緊張ぎみに挨拶をした。
「石藤良二さんのお宅でしょうか…?
あ、あの、私…。」
ガチャッ!
「ふぁい…。」
名乗ろうとした時、ふいに玄関のドアが開き、中から、真っ赤な顔をしたスーツ姿の男性がフラフラと出て来た。
「お姉さん、ヒック。こんにちはぁ〜。」
「こ、こんにちは…!//」
この人が石藤良二さん…!!
私は彼とやっと会うことが出来た感動に涙目になり、両手を組み合わせた。
優しそうな眼差しは、昔の記憶のままだったが、ただ、彼はひどく酔っ払っているらしく、お酒の匂いが漂って来た。
「こりゃ、また綺麗な娘さんだ。和哉、すげーお店知ってんだな…。」
「きき、綺麗だなんて…!//ん?でも、お店って?」
彼に容姿を褒められ、照れつつも彼の言っている事はよく分からなかった。
「だから、デリバリーサービスの娘でしょ?友人の頼んでくれた。」
「デリバリーサービス…ってもしかして…。そういう…???///」
私はかああぁーっと顔が熱くなった。
どうやら、彼は私が家に訪問して、男性に性的なサービスをする職業の女性と勘違いをしているらしい。
勘違いをされたのも、彼がそういうサービスを受けようとしていた事もショックだった私は、感情のままに怒鳴ってしまった。
「ち、違いますっ!!何てひどい事言うんですかっ!?」
「えっ。違うの?こんな綺麗な娘が、俺の家を訪ねてくるなんて、それぐらいしか考えられないんだけど…。
ああ、分かった。あんまり俺がパッとしないオジサンだから、仕事すんのが嫌になったんだね。」
「へっ?ち、ちがっ…!」
「いいよ。ヒック。女の子に拒否られるのは慣れてる。俺も懺悔中の身だし、どうせ断ろうと思ってたんだ…。」
「懺悔中…?」
「ああ、今日は大事な予定をワケあってドタキャンしてしまってね。
沢山の人を傷つけ、迷惑をかけちゃったんだ…。」
!!
私は石藤良二さんの言葉に心臓が跳ねる。私の動揺には気付かず、彼は自嘲するようにハハッと寂しく笑った。
「落ち込む俺を励ます為に友人がデリバリーサービスのお店に連絡してくれたってワケ。
嫌がる女の子にそんな事させる気分じゃないよ。
別に苦情なんて言わないから、君も安心して帰りな?じゃ…。」
そう言ってドアを閉められそうになり、私は慌てて、思わず言ってしまったのだ。
「あっ。私やっぱりサービスに来た者ですぅ♡このまま帰されたら、お店に怒られちゃうんで、取り敢えず中に入れてもらえませんか?」
✽あとがき✽
いつも読んで下さり、ブックマークやリアクション、ご評価頂きましてありがとうございます!
恋愛(現実世界・連載中)日間ランキング34位、恋愛(現実世界・すべて)日間ランキング81位(3/22 9時時点)になれました!
応援下さった読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです✧(;_;)✧
今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m




