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ベッドがひとつしかないなら皆で寝ればいいじゃない

──寝室


「狭いわね……」


「申し訳ございません」

「広い部屋が空いてなかったようでして……」


「あなたが気にすることじゃないわよ」


 浴場を出た私たちが部屋に入ると狭いうえにベッドがひとつしかなかった。


 私は小さくため息をつく。


「仕方ないわ」

「先にベッドに入りなさい」


 私がそう促すとシルヴィアは嬉しそうにベッドに飛び込んだ。


「じゃあ私、真ん中ね!」


 ルミナは遠慮がちに布団の端へと腰を下ろし、ラティオはその間で横たわった。


「うーん、これだと入りきらないわね」


 私はシルヴィアを持ち上げて、その下に滑り込む。


「わっ!」

「あははははっ」


 シルヴィアは随分と楽しそうだ。


「きついわね……」

「二人とも寄らないとベッドから落っこちるわよ」


「えぇ……」

「仕方ね~な」


「では、明日に備えてお休みくださいませ」


 ルクテイアは静かにベッドから離れ、小さなソファに腰を下ろした。


「ルクテイア、何をしているの?」


「私はここで休ませていただきます」


 その言葉を聞いて私は2度目のため息をついた。


「そんな遠慮は必要ないわ」

「あなたもベッドに来なさい」


「ですが……」


「私たちは家族なのよ」

「あなただけ別の場所で寝るなんてダメ」

「いいわよね?」


 私はルミナとラティオに視線を向けて同意を求めた。


「え、え、私ですか……?」

「良いと思います……」


「私はなんでもい~ぜ」


 するとルクテイアは2人を軽々と持ち上げながら私の隣に横たわる。


 ルクテイアがベッドに入るとシルヴィアが笑顔で布団を掴んだ。


「これでみんな一緒だね!」


「き、きつい……」


 シルヴィアが私の上に、ルミナがルクテイアの上に、そしてラティオがその隙間に挟み込まれるようになってしまっていた。


「んぐ……明日はもっと広い部屋が空いてるかどうか確かめてから宿屋を決めましょう……」


「えぇ~、私はこっちのがいいな」


「ふふ……そうね」

「こういうほうが賑やかで良いかもしれないわ」


「わ、私の身にもなってくれよぉ……」


 ラティオが抗議の声を漏らした。


「……もう少しだけベッドが広ければ、ひとつでも良いわね」


 上からシルヴィアの柔らかい金髪が顔にかかり、その感触で私はなんとも言えない眠気に誘われていく。


 子供たちとくっつていると、こんなに安心するのね……。


「おやすみなさい」


「おやすみ~」


「おやすみなさい、ヘレナ様」


「おやすみ……」


「おやすみなさいませ」


 私は全員の声を聞き届けて穏やかな気持ちで目を閉じた。


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