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人間に狙われるなら私といっしょに来たらいいじゃない

──境界の山脈


「そのくらいでいいでしょ」

「もう日も暮れそうだし、ご飯にでもしましょうよ」


 フィールカリオンは真っ二つに折れた自身の剣と踏み砕いた剣をチラリと見る。


「そうじゃなあ」


 そして折れた剣を放り投げながら口を開いた。


「寝起きの運動が終わって腹が減ったのじゃ」


「それと、あなたたち」


 私は龍教団の信者たちに向き直り、もともと念頭にあった提案を持ちかける。


「この場所はもう危険よ」

「私が辺境の奥地に、あなたたちを連れていくわ」


 信者たちがざわめき始める。


「フィールカリオンが目覚めた以上は、この場所にこだわる理由もないでしょう?」


「そ、それはそうですが……」

「辺境の奥地……ですか?」


 私の近くにいた灰色髪の女性が疑問を投げかけた。


「そうよ、そこまで行けば人間との関わりも薄くなる」

「そもそも私たちは辺境へ行くために、ここを通りがかったの」


 魔王のダンジョンを拠点にする計画については伏せておいたほうがいいわね。


 まだ、この場には人間が残っているのだから。


「ヘレナの意向に従うがよい」


「龍神様の御心(みこころ)のままに……」


 フィールカリオンが頷くと信者たちは口を揃えて従った。


 後は……(くだん)の残っている人間ね……。


「あなたたち傭兵団も、ただでは帰れないでしょう?」

「私たちは準備ができ次第、姿を消すから」

「傭兵団が信者たちを追い払ったことにして報酬を受け取ればいいわ」


「はん……別にもう報酬なんて、なんでもいいさ」

「だがまあ、お前がそれで良いなら乗ってやるよ」


 隻眼の女は、なんとも言えない表情で頷いた。


「……お見事です、ヘレナ様……」

「……相手を満足させつつ口止めも兼ねた素晴らしい説得です……」


 失神した傭兵を運び終えたルクテイアが、いつの間にか私のそばに立っている。


 ルクテイアは、いつも大げさなんだから……。


「……ただ当たり前の流れで話しただけよ……」


 私は隻眼の女に視線を戻す。


 ほかにも必要な提案をしてみることにした。


「それじゃ、あなたも一緒に食べましょう?」


「……は?」


「失神した傭兵たちは寺院の中に運び込んであるわ」

「彼らが起きたら、ちゃんと連れ帰ってもらわないと」


「正気か?」


 隻眼の女は信者たちの姿を見回して言った。


「わしの遊び相手じゃ」

「丁重にもてなせ」


 フィールカリオンがニヤニヤとしながら周囲に言い放つ。


「龍神様の御心のままに……」


「ったく……なんなんだよ、お前らは……」


 信者たちにとって傭兵団に襲われたことなど今となっては些細な問題らしい。


「それで、うぬらは食事の準備をせんのか?」


 フィールカリオンの一声で信者たちは一斉に動き出し、慌ただしく寺院の奥へと消えていった。

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