6-105『三勇士(雌伏)』
開始10分地点(ノーウェが雷を帯びた頃)
<戦況>
<「玉座」の占拠数>
<最強軍閥連合>が2つ
<無法者連合>が2つ
<五騎当千連合>が0
<各地点の戦況>
北の「玉座」(<無法者連合>):ブランク、ミスティ、モモエ、クレハ、コト、レヴェックによる「守備隊」6人が防衛
西の地上:『影漏』シクル=オーバー、『流氷』ウィリー=ジョー、『順風』ゼファー=オーロンの3人が<無法者連合>のハリー、カーティス、バラン、コナースの4人襲撃に対応中
南西の「玉座」(<最強軍閥連合>):『情冷炎』のスコーンが『湯蛇』レオ=ナイダスと共に防衛
中央の「玉座」(<無法者連合>):ノーウェが占拠して離れた状態。
中央寄り上空:『雲』の中にブルート、『焔海』のパージ=ジョートー、ノーウェ。
中央寄り地上:『音爆』シンガ=ソング、『灰魔導師』グレイ=ゾーエンス
南の上空:『迅雷』イクス=トストと『光厳』メーネス=アンフェの一騎打ち
南の地上:『涙雨』レオナ=イース、『火吹』リオン=シュミットVS『水平』メア=インパス、『風穴』ケヴィン=ブロウ、『地平』ローラ=ランドール
※『岩塞』テツ=フォートレーは北西本陣に帰還中。
南東の「玉座」(<最強軍閥連合>):『蛙井引』のケイン、『合蝶雲』のタニクが占拠中
◇「西(南西の「玉座」の手前)<ハリー視点>◇
ハリー=ウェルズ、カーティス=ダウナー、バラン=レンホーン、コナース=イナッソの4人は、<最強軍閥連合>の本陣を目指していたところで、敵の隊と遭遇した。
相手は【蘭光】の副将『影漏』シクル=オーバーを指揮官とし、『流氷』ウィリー=ジョー、『順風』ゼファー=オーロンの3人の隊。
数では1名分有利に立っているものの、相手はなんといっても最強派閥の幹部たちで、全員が『飛燕』コト=シラベ級の実力者たちなので、決して油断のならない相手だ。
一筋縄ではいかない……
「「『砕氷扇』」」
シューーーーーーーーーーーピキピキピキピキピキ!!
「くっ、カーティス、バラン!」
「ああ……『グランウインド』」
「おうよ、『火喰鳥』」
ブワーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
ボボボボボボボグワァーーーーーーーーーーーーー!!
バァーーーーーーーーン……ピキピキピキ……!!
シューーーーーーーー
「うーん、ちょっと後手だなあ。『乾土布』」
ドドドドドド……ボフンッ……ピキピキピキ!!
『流氷』と『順風』による強大な『領域支配』が混ざり合い、そこからさらに巨大な2人の連携魔法が生み出される。
個の力では『殿上人』ほどではないかもしれないが、連携面においては、少なくともハリーとカーティスが前回の「DOOM」で戦った『殿上人』2人以上のものがあった。
「『ハイウインド』、『れんぞくま』」
ハリーは、正面で巨大な魔法同士がぶつかり合っている間に、上空からの角度を変えた攻撃を試みる。
「『雷玉』、『れんぞくま』」
ヒュンッ、ヒュンッ、バリバリバリバリバリバリ……!!
「おっと、『護渦蝋』」
ドリュドリュドリュドリュ……シューーーーーーー!!
だが、敵の指揮官である『影漏』が『白い蝋』によってハリーの放った『雷玉』を包み込んでしまう。
……やりにくい。
なんとなく、敵の掌中にいるような感覚に陥る。
『石』と『水』と『闇』という特殊な属性を含む3属性を操る敵の指揮官のことは、これまでの対戦データで把握していたはずだった。
しかし、たった今見せている『蝋』のような魔法はこれまでの決闘で彼が1度たりとも見せてきていないものである。
……むしろ、こちらが対策されている?
『蝋』……その魔法になんとなく嫌なイメージが湧いてしまう。
指揮官だけではない。
隊員の『流氷』と『順風』の2人もだ……
彼らはそれぞれ【蘭光】と【炎城桜】に所属しているため、別々に行動している。
「第2ラウンド」の5戦においても、隊が分かれていたのでここまでの連携技を見せてくるとは、想像もつかなかった。
そのことから導き出される答えは1つ……
敵は、ハリーたち用の「戦術」と専用の「魔法」を持って対峙している……!
「どうです?『蝋』ってのも、『泥』に似てオツなもんでしょう?」
「……ええ、まあ」
シュタッ……
1度、地上に降り立つ。
こちらの胸中を見透かしたような敵の指揮官の一言からも、ハリーが立てた仮説はおそらく事実。
「おそらく、読まれているでしょうねえ……」
「コナースもそう思うか?」
「はい。相手は、こちらを倒しに掛かるというよりは、どうも、こちらが攻めづらいやり方をしているように見受けられます。ほら、見てください」
隊の参謀役が指を差した方向に目をやると、敵の隊3人がじりじりと相手本陣の方に後退していた。
「誘い込んでいる?」
「そうですねぇ……それか、あるいはこちらを始めからこちらを倒す気がないか」
あるいは、その両方か……
ハリーは、行き詰まりを感じていた。
「『火猛船』」
「『グランウインド』」
ボボボボボボッシューーーーーーーーー……ブワーーーーーーーー!!
「「『氷流扇』」」
ビューーーーーーーーーーーーーー……ピキピキピキピキ!!
戦術的な手詰まり感。
おそらく、自分たちが前戦で手玉に取った『殿上人』も同じような感覚になっていたことだろう。
相手に本領を発揮させずに焦燥感を募らせる。
とにかくまずは致命的な攻撃を受けないために防御戦術をとり、自身の攻撃は抑えてカウンター主体とする。
やる方もなかなか神経を使うが、やられる方ももどかしさを抱いてしまう。
まさか、この最高の舞台で、末席であるはずの自分たちがここまで警戒されるとは思っていなかった。
驕りがあったのか……?
それもあるかもしれない。
でも、それ以上に相手が用意周到だった。
相手に、守備的戦術を取られると攻めあぐねてしまう。
自分たちは、実力的にはまだまだ『殿上人』の格には遠い……!
……それでも、この「壁」を越えたい!!
「さて、どうしましょうね……」
「なんか、良い策ないか?」
「そうですねぇ……バラン様を『捨て駒』にでもしますか?」
「おぉいっ!」
『火魔法』を放ちながらもバランが振り返って文句を言う。
「イッチャさんみたいに敵陣に特攻してもらうか?」
「それもいいかもしれませんね」
「おぉいっ!病み上がりの我を少しは労われよ、お主ら!」
「こないだの『DOOM』をサボったんですから、罰ですよ。バラン様」
「どうでもいいけど、お前ら、魔法に集中しろよな……特にバラン」
少し和んだが、カーティスに嗜められて気を入れ直す。
「どの『策』を用いるにしても1つ言えることがあります」
「うん?」
「軍の戦略的に考えれば、相手がこちらを抑え込もうとしている以上、それを踏み越えて危険を冒す戦術はあまり正しいとはいえません。ある意味、『我慢比べ』をするべき状況です」
それは、分かっている。
ここで動けば、敵の思うつぼかもしれない……
ただ……
「一方で、バラン様はともかく、ハリー君やカーティス君が魔導師として『高み』を目指すのであれば、可能性は低くても、その危険な『領域』に足を踏み入れるときなのかもしれません」
「「うん……」」
「おぉいっ!我はともかくとは、貴様どういう―――」
「バラン様、うるさい!」
「はい……」
「指揮官」としての行動をとるべきか……
それとも、「魔導師」として高みを目指すべきか……
ハリーは「選択」を迫られていた。
「どうする?」
カーティスも、ハリーの決断を尊重する姿勢を見せている。
どうすべきか……
この「選択」で後悔はしたくない。
「むはーはっは、何を迷っておる。そんなの決まっておるだろう?これは『魔導師』の決闘なのだからそれを最優先するに決まっておる!」
「バラン……」
あっけらかんと言い放つバランに、ハリーは思わず苦笑してしまう。
同じ男爵令息なのに、ここまでシンプルに物事を考えられるのはうらやましい。
「バラン様に同意するのは癪ですけどね。私もそう思いますよ。だって、『総大将』も『総参謀』も今や自由に、それぞれ自分勝手なことしていますからね」
周囲を見渡すと、中央の上空に黒雲が掛かり、雷鳴がしているかと思えば、その危険地域に向かって、「総参謀」であり本陣を守るはずのリバーがゆっくりと「玉座」に向かっている。
ハリーは、ふっと肩の荷が降りた思いがした。
バランやコナースの言うとおりだ。
何を迷っていることがある?
今日の決闘に勝つためには、自分がその場で如何に成長できるかではなかったか?
「よし、バラン。『捨て駒』作戦を実行しよう」
「おぉいっ!!」
「もちろん『フリ』だよ、バラン!」
「ぬっ?」
「バランを『囮』にしながら、敵を包囲して倒そう!」
「なるほど……分かった!」
「了解です。じゃあ、バラン様、頑張ってください『乾土風』」
ドドドドドドドドドドドドド……
「あ、ちょ、ちょ待って……」
「行くぞ、カーティス『ハイウインド』、『れんぞくま』」
「おう。『グランウインド』」
迷いを断ち切ったハリーは、上空に浮かび上がり、敵陣目掛けて高速で向かった……!
◇「中央(東寄り)『雲』の中」<ブルート視点>◇
開始15分過ぎた頃……
急遽、雲の中を乱入してきたノーウェを「しっし」と追いやって、『水豪』ブルート=フェスタは、学園「3強」の1角、『焔海』パージ=ジョートーに挑んでいた。
「ヒャッハー!熱くなってきたな。いいぜ、もっと燃やし尽くしてやる!『炎海漁莉』」
ボボボボボボバビューーーーーーーーーーン!!
ボボボボボボバビューーーーーーーーーーン!!
2本の『火の鞭』が棘を伴って振り下ろされる……
「ふおおおお、『雲王流渦雷』」
ドリュンッ、ドリュンッ、ドリュンッ、モクモクモクドッパーーーーーーーーーーー!!
パァーーーーーーーーーーーーーン!!
「へえ。やるじゃねえか、カシウの弟」
「ブルートです!」
「ん?」
「俺は、カシウの弟ではなく、『水豪』ブルート=フェスタですっ!『雲多良刃』」
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ……
シャッキーーーーーーーーーン!!
「はんっ、そうだな!分かったよ。『炎海気威射』」
ボボボボボボボボボボボボボボ……ボンッ、ボンッ!!
攻守交替。
『雲』でできた巨大なカニの足がパージを狙うが、パージの両手から放たれた『炎の槍』が応戦し、蒸発させる。
「ふう、お前さんは『水』以外には『氷』と『風』か……」
「はい……『雲鮫』」
ブリュブリュ……モクモクモク……シャーーーーーーーー!!
「なるほどな。持っているすべての属性を高めなければこの『領域』には来れねえからな。『雲』って発想も悪くない……」
「ありがとうございます……」
ブルートは訝しんだ。
『雲の鮫』が猛スピードで向かっているというのに、『焔海』パージはいまだ魔法を発動させる様子がない。
まさか、魔力切れになったわけでもあるまいし、どういうつもりだろうか……
何を狙っている?
そんな余裕ぶって……
疑問ばかりが頭に浮かぶ。
「悪くない……が、まだ、俺たちの『領域』からは数段及ばねえ……『省炎海』」
ボボボボボボ……ゴオォッーーーーーーーーーーー!!
パァーーーーーーーーーーーーン!!
「なっ……」
種火のように、パージの人差し指から放たれた小さな『火』が突如巨大な『炎』となり、鮫を網で捕らえるかのように一気に広がるとブルートの『雲鮫』をひと飲みして消し去ってしまった。
「筋は良い……実際、1年でそこまでできるのはすごいぜ?だが、まだまだそれぞれの属性に対する熱意が足りねえな!」
「ね、熱意……!?」
ブルートは喉をゴクリと鳴らした。
『焔海』はその1つ1つの指の先に『種火』を発動させている。
遠くからでも分かる。
あれは、ただの『火』ではない……
おそらく、『火』を『炎』に、『炎』を『炎の海』に変える仕組みが、あの指の先に「集約」されているのだろう……
「ハッ、やっぱりお前、筋が良いな!いいぜ、教えてやる。俺の主属性は『火』。副属性は『水』と『土(石)』だ」
……『水』と『土』?
『風』じゃないのか……?
普通、『火』を強くさせるには『風』を使うのが定石だ。
ブルートは思考を巡らせる。
『土(石)』と『水』……『土(石)』と『水』……
ゴクリッ……!
イメージが湧く……
そして、それは恐ろしいものであった。
「ハッ……至ったようだな。少なくとも頭ん中では!実際に、それぐらい考えに考え抜いていかねえと、あいつらの頂には到達できねえんだ……」
焔髪の上級生は自身の右こめかみのあたりを右手の人差し指でポンポンと押した。
……熱くないのかな?
「はい……」
単なる「威力」の話ではない。
『属性』同士の性格と合わせ方を突き詰めて「凝縮」したアイデア……
自分だけの魔法の……「調合」!?
ブルートのこめかみには、汗が伝う。
……なんとか、今あるもので凌がなくては。
「よかったな。それが、次のステージだ。お前の世代にもバケモンがいるみたいだしな」
「ええ、まあ……」
来る……
「お前には勝手に期待しているぜ。俺は下から上に這い上がるやつが好きなもんでな……教えてやる、じゃあな!『大炎海沫莉』」
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……
「ふおぉぉーーーーーーーーーー」
ブルートが必死で『雲の領域』を広げようとするが、『火』の爆発が雲を次々とかき消していく……
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボアァーーーーーーーーーーーーーーー!!
その『炎の爆発』が今度は網の目のように繋がって、巨大な『炎の網』となってブルートに襲い掛かった……!
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。
もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。
今さらですが、コナース=イナッソの称号は『乾土』と言います(^▽^;)
ブルート危うし……!?
次回、ノーウェとリバーの選択……!
ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!




