表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

398/546

6-52『休養期間中の準備』

 「第2ラウンド」の第4戦、強敵<公爵令嬢連合>との大一番の「決闘方式」は「ELEMEMTS」となる。


 何を隠そう、俺たち【紫雲】が「秋の決闘文化祭」にて「優秀決闘賞」を受賞した「決闘方式」である。


 考案者はその設計段階から見えているものがあるので、いざ決闘を行なった場合、それが有利に働くと考えるのが普通だ。


 例えば、前日に観た<公爵令嬢連合>と<2年生『殿上人』連合>との決闘において、「PLANTS」という決闘の特性をフルに活かして優位に戦ったのは、考案者であるジャネット先輩擁する<連合>の方だった。


 始めからその中身を隅々まで理解している考案者の方が実際の決闘においても有利……


 そう思うじゃんか?


 ところが、である。


 「紫雲城」に集まった俺たちは、「ELEMEMTS」の概要やルールの書かれた「あぷる」を確認して驚愕した。


 なんと、決闘内容が大幅に変更されていたのである。


 その内容とは……


 ・制限時間45分

 

 ・15人対15人


 ・北と南を本陣とし、各チームの本陣サイドの舞台角のそれぞれの属性魔道具を配置、また舞台中央にもう1種の属性魔道具を配置する

 →舞台四隅と中央に5つの属性魔道具が置かれる


 ・どの属性魔道具がどこに配置されるかは当日発表の上、「北側」、「南側」を選ぶ「くじ」も当日行なう


 ・属性魔道具に守られた結界の中に「貝」や「栗」の形をした「宝玉」があり、そこに触れると、触れた者の所属する<連合>の色が付く


 ・最終的に宝玉の色の数が多い方が勝ち

 →相手が全滅、または降伏した場合を除く


 ……だそうだ。


 もうルール自体が大きく捻じ曲げられている。


 元々、俺たちが文化祭で行なった試技は、学園全体を使ったものであったので、それをコンパクトにして舞台上でできるようにしました……というのであれば、まだ分かる。


 でも、この変更は、決闘の性質自体を大きく変えてしまっている。


 元は、「『宝玉』を先に多く見つけて集めた方が勝ち」という「探索」と「レース」の意味合いも持つ、スピーディーかつスリリングさが信条の「決闘方式」であった。


 しかし、今回の概要だと、どちらかというと「陣地の取り合い」のようなものになってしまっている。


「おそらくは、『探索型』という部分で物言いが付いたのかもしれませんね。昨年、『ROOM』が用いられたときも教務部からかなりの物言いが付いたと聞きました」


 クレハ先輩がマスボを見ながら教えてくれた。


 どうやら、「冬の総魔戦」は魔法戦闘の実力を測る「戦闘方式」の範疇でないといけないらしく、いくつかの団体の意向を受けた教務部が運営会議で変更の提案をしたそうだ、とリバー談。


 なんでそんな内部情報をリバーが知っているのかは置いておいて、結局「ROOM」のときはどうなったのか、その顛末にはちょっと興味がある。


「あのときは、母が思いっきり暴れ回ったので、なんとか事なきを得ました……」


 ……どうやら、そのままのルールで押し込むことができたらしい。

 事なきどころか、大事おおごとでしかない気がするけど……


 しかし、その話を聞くと俺たちもまだまだ甘かったと思い知ったな。


 どうやら、暴れたりなかったようだ……


 こりゃ、教師陣も敵か……?


「いえ、どうやら、それだけではないようですけどね」


「うん?」


 リバーには何か心当たりがあるようだ。


「ははあ……」


 コナース君もピンと来ているようだな。


 まだ、その辺の腹の探り合いというか、政治的な裏の面を見る力が備わっていないので、そんな自分がもどかしい。


 まあ、不満はあれど、決まってしまったものは仕方ない。

 少なくとも、俺はそう切り替えた。


「どこのどいつだぁ~?ゆるさないぞ~ぉ!!」


「「「「「そうだっ、そうだっ!!」」」」」


 ……まだ憤慨しているメンバーは多いけどね。


 それでも、時計の針を戻すことはできないわけだから、前を向くことにしよう。


 今回のこの「『ELEMENTS』の改定」に関わった人間やその首謀者が誰なのか、リバーたちも濁しているので、はっきりはしないが、ここは1つ、そんな奴らの目論見をぶち壊すような「奇策」を提案することにしたよ。


 ルールを眺めていたら思いついてしまったんだ……!


「かくかくしかじか……」


 俺はとりあえず、リバー、コナース君、レヴェック、コト先輩の参謀たちと、近くにいたハリー、クレハ先輩、カーティスにこっそり思いついた作戦を打ち明けた。


「……正気か?」


「……ノーウェ殿らしい『策』ですね」


「普通に決闘をやる気はないんだな……」


「僕も最近、ノーウェ君に『耐性』がついてきたようですよ」


「はっはっは、それは既に毒されたとも言えますぞ」


「うふふ、でも、今回の作戦はちょっと楽しみではありますね」


「ふふふ、では、「『奇人』(ノーウェ)の策」で行きましょう」


 7人7色の返答があり、なんかちょっと悪口が混じっている気がしないでもないけど、無事に策を受け入れてもらえたからよしとしよう。


 他のメンバーには、当日、控室で作戦を伝えることに決まり、作戦の中身については「かん口令」が敷かれることになった。


 ……特に、ブルートとバランのポンコツコンビが、敵の<連合>の誘惑に負けて裏切らないとも限らないしな!


 ついでに、面白そうだからこの2人にはまったく別の「ふざけた作戦」をダミーとしてこっそり伝えておいた。


 そうしたら、こいつら、何を思ったのか目の色変えて猛特訓し始めたから、それはそれで「瓢箪から駒」ということでよしとする……!


◇レストラン「地平の間」(その日の夕方)◇


 「フードパーク」ほどではないにせよ、だいぶ「勝手知ったる」になってきたレストラン「地平の間」。


 「グランドクロックタワー」の目玉となっている学園内で最も多い席数を誇るバイキング形式のレストランだ。


 あれ?

 ビュッフェ形式だったかな?


 まあ、いい。

 違いがよく分からない……


 バイキングといえば……最近、南東の海で海賊が暴れ回っているらしい。


 その影響が多方面に出ており、南の交易都市「マルテの街」でも、港に上がってくる海産物が減っているということでシェフたちが大いに嘆いているということを今、リバーから聞いた。


 はた迷惑な連中だよね。

 大方、どこぞの銭ゲバが大怪物「クラーケン」を倒したことで、南側の海全体が一時的に穏やかになったのだろうと俺は決めつけているわけだけれど(つまり、全部あいつのせい)、海賊も暴れたいなら、せめて「南西の海」で暴れろよって思う。


 穏やかになったといっても、あっちは、まだまだ「怪物」クラスがウヨウヨしているわけだからさ……


「怪物」級の「モサレックス」の巣窟だからね、あそこは。


 さて、俺の前にはそんな貴重な海の資源を調理した「魔ホタテと白アスパラガスのグリル~『サスライガニ』のソース~」が置いてある。


 早速、食したいと思っているのだが、生憎、2つの要因があって食べることができない。


 1つは、俺の膝の上に乗っている生き物……ピギーだ。


 みんなで食事しようと出かけたら、しっかりついてきた。


 そして、「地平の間」で1番大きいソファ席に案内されたわけだけど、俺がその真ん中の席に着くと、ピギーが膝の上にスッと乗ってきたんだ。


 料理が置かれている台が一望できるのがこの席の素晴らしさではあるんだけど、向かい合うように半弧の形で連なって設置されているこのソファの中央からだと、そもそも出るのが大変なんだ。


 紳士の嗜み的に、まさか、テーブルの下を潜るわけにもいかんしね……


 そんなわけで、俺はピギーを撫でている。


 頭の上、耳の裏、顎、背中……


 とても気持ちよさそうだ。


 しっぽ近くの腰は結構嫌がる。


 なんでなんだろうね?

 腰痛持ちか?


「どうか、私の顔に免じて頼むよ。この通りだ」


 ピギーの目を盗みながら、左手でその頭を撫でつつ、右手でホタテの貝柱にフォークを刺そうとした俺に、向かい合って座る1人の男性が急に頭を下げてきた。


 カチャンッ……


 ……せっかくうまくいきそうだったのに、皿にフォークを落としてしまったよ。


 特別に用意されたであろう座椅子に腰かけたまま、テーブルに手をついてこちらに頭を下げているのは俺たちの学年の教務主任クローニ先生だ。


「そうは言われましてもねえ……今は決闘期間中ですし」


「明日から決闘は休養期間に入るよ」


「休養期間は休みたいんですよねぇ……激戦の疲れがありますし」


 俺は先生の方を見ずに、ピギーの背中の縞模様を眺めながら、独り言のように返答した。


 つれない素振りってやつだな。


 大会期間中に面倒ごとを持って来ないでほしいというか、なんかそれすらも今は疑わしく思ってしまう状況だということが分かっているんでしょうかね、先生は。


 もっと言うと、こうして、「食事の席」を共にしていることも、誤解を生みかねないんで嫌なんですよ。


 俺は、「密談」とか本筋と関係ない政治的な動きがあまり好きじゃないので、こうやって堂々とオープンな場所で話を聞きますけどね。


 ……ところで、今、この状況って周りからどんな目で見られているのだろうか?


 ちょっと、気になるけど、考えるのを止めた……


「無理を言っているのは承知している。でも、ノーウェ君たちにしか頼めないんだ、これ、この通り」


 先生は、相変わらずテーブルにおでこを擦り付けて懇願している。


 そうは言われましてもね……


 先日の「PLANTS」終了時の先生方のクレームの一件といい、今回の「ELEMENTS」の件といい、先生方(教務部)に対して少しばかり不信感が募っているんですよ。


 たとえ、俺が許したとしても、周りがそれを許さないくらいには、ね?


 今も、ソファの入り口寄りの左右の席でレミとディリカを筆頭とする「アンバスターズ」が思いっきり先生を睨みつけている(モモエ以外)んですよ……


 「ELEMEMTS」を発案したのは俺ですが、それを形にしたのは彼女たちなんです。


 俺に止められると思います?


「分かった!ちゃんと理由を伝える……かくかくしかじか」


 先生は、鼻息荒くガン飛ばしているレミとディリカにこっそりと依頼の内容を耳打ちした。


 すると、どうだろう?


 それまで眉間に角が生えそうなぐらいであった2人は急にぱぁっと目を輝かせた。


 そして、こっちにグーサインを出してきた。


 ……あっ、「行く」ってことね。


「仕方ありませんね。今回だけですよ」


 俺は敢えて勿体ぶった返事をした。


 ……だって、理由を聞かされていないんだもん。

 そう答えるしかないじゃんか……!


「ありがとう!これで肩の荷が下りたよ。いや、ありがとう!」


 先生は、おでこを何度もテーブルに打ち付ける勢いで感謝していた。


 カチャリ……


 俺は、フォークを再び手に取って、貝柱とホワイトアスパラの穂を一緒に刺してから、口に運んだ……


 ……美味い!


 ホタテの淡白な甘みにホワイトアスパラの野菜らしい甘み、それをサスライガニの濃厚なソースが絡んで得も言われぬ味わい……!


 あまりの美味しさに、舌に帆が立ちそうだ……!


 奇妙な依頼ではあるけど、場所的にそこまで危険なこともないだろうし、さっと行って帰ってきましょうかね。


 大船に乗った気でいてくださいよ、先生。


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


何やら帆が……いや、旗が立ちましたね。


今話で第6章前半部終了です。


次話から3話分閑話を挟み、いよいよジャネット嬢たちとの決闘になります。


次回、クローニ先生からの頼まれごとで向かった場所は……?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ