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6-36『クセ者対策』

 隣でポンコツが魚みたいに口をパクパクさせている。


 見ていてちょっと面白い。

 試しに「ヤキソバまん」を放り込んでみようかな?


 「ハイリゲンアリーナ」の観客席でイクス先輩たちの<連合>の初戦を観ていたんだが、先輩の放った強力な『雷魔法』を目にした青髪ポンコツが、驚いたのか、焦ったのか、いきなり聞いてきたんだ。


 あれを防げるのか……ってね。


 「あんなん防げるわけないだろ」って答えておいたらさらに驚いて酸欠の魚状態になっているというわけだ。


 実際にどうなのか、と言われると微妙なところではある。


 発動のタイミングさえ合わせられるのであれば、無効化したり、威力を分散させたりする魔法はあるのだが、「防ぐ」という言葉が正しいのかはちょっと微妙だ。


 ぶっちゃけ、まったく効かなくしたり、そもそも発動させなくしたりする方法もあるんだけどね。


 簡単な方法でいうと、『マーロックⅠ(Ⅱ)』だな。


 使える属性を限定するという禁じ手を使ったら『雷』も何もなくなる。

 さすがに、それは卑怯だと思うので、姑息な卑怯者以外の相手には、学園の決闘では使うつもりはないかな。


 他に例えるなら、以前、【雷音】と「土輪布山泊」付近で出くわしたときにあの黒髪のライオン頭のメンバーに不意打ちを仕掛けられた際に使った魔法みたいなもん。


 あのときは、相手のシンガとかいう卑怯な先輩がその初動から『風魔法』を使ってくると察知したから、咄嗟に『ボイスバッグ』を発動させた。


 『ボイスバッグ』は、範囲の音を消す魔法だが、同時に『風魔法』を封じて無風状態にしてしまう。


 仮に、決闘で『風魔法』が得意な魔導師相手にこれを使ったら、相手の本来の実力を出せなくしてしまうからね。


 まあ、あのシンガという先輩は卑怯者だから、それをしても構わない気がするけど、今回は戦うにしても集団戦だしね。


 一応、戦うことになったとしても「ボイスバッグ」は封印するつもり。


 その場合は、もっと彼の尊厳を破壊するような、徹底的なやり方で倒すとしよう。


「お、お前……まあ、いい」


 ん?

 生意気にも、ポンコツブルートが俺の心を読んだかのように急に納得し、腕組みをして頷いた。


 俺が想定していた相手とお前が想像している相手はたぶん違うけどな……


 まあ、いいか。


「レディースぅ、エーーーン、ジェントルメンぅーーー!本日のぉ、最終決闘はぁ、<2年生『殿上人』連合>ぅとぉ、<クセ者連合>ですぅーーー」


 会場の準備が終わったようで、透明マスクの低音ボイスが響いた。


 今日、ここに観戦に来た理由の2つめ……


 ブルートの兄ちゃん率いる<2年生『殿上人』連合>の決闘がこれから始まる。


 しかも、その相手は、俺たちが次に戦う<クセ者連合>だ。


 初戦ではっちゃけ過ぎた罰を受けて、重い荷物を持っていた俺に無理矢理握手を求めてくるという卑怯な所業をしてきた連中だな。


 なんか、色々とこちらを挑発するような振る舞いだったけれど、実際の実力はどの程度なのか、ブルートの兄ちゃんたちとの戦いぶりを見て判断できるんじゃないかってことだ。


「それではぁ、決闘開始ですぅーーー!」


 決闘が始まった。


 決闘方式は、もちろん「PIECES」。


 1人1属性しか使えず、属性を表す色の付いたローブを着て決闘を行なう。


 舞台上、いきなり動きを見せたのは、意外なことに<2年生『殿上人』連合>であった。


 もっと、どっしりと構えて戦うのかと思っていたけどな。


 北側の本陣から「青」、「白」、「白」のローブを羽織った3人の魔導師が、ゆっくりと舞台中央に向かって歩き始める。


 別動隊として、残る15人の魔導師は色の偏りが起こらないように配慮された編成で、3つに分かれ、それぞれ5人ずつの部隊が、舞台左右の端と、3人の後ろ側に配置されて進軍を始めた。


「正攻法できましたか……」


 リバーが呟いた。


 たしかに、この布陣は最も隙のない陣形に思える。


 中央に『殿上人』である、ブルートの兄ちゃん(カシウ=フェスタ)、『光霞』マライヤ=ミラー先輩、『宵闇』フォルクス=ガント先輩の3人が悠然と歩き、少し離れた両サイドに5人ずつ配置すれば、どこから攻めていいか判断に迷うだろう。


 仮に、中央に向かって攻撃を仕掛ければ、『殿上人』3人の強力な魔法で対応している間に、両サイドに囲まれる恐れがあるし、逆にどちらかのサイドに人数を掛けれると、中央の『殿上人』の誰かからの横槍を受ける危険性がある。


 しかも、3人の後方には、5名の伏兵がいるので、彼らがいつでも遊撃隊として動ける状態なんだ。


 さて、<クセ者連合>は、この動きを見て、どんな手に出てくるのか……


 そして、ブルートの兄ちゃんはどう対応していくのか……


「なあ、ブルート」


「なんだ?」


「お前、兄ちゃんの手が読めるか?」


 なんとなく、聞いてみた。


 ブルートはポンコツかつ小物ゆえに、あまり戦略、戦術的なことを頭で柔軟に考えられる男ではないのだが、これで意外と人の心理(女心以外)には敏感なところがあるんだ。


 少なくとも俺よりは……


 それに、長年見てきた相手だから、弟なりに分かる部分があるんじゃないかと思って聞いてみた。


「あの男は……カシウ=フェスタという男は、プライドが高いんだ」


「おん?」


 お前も相当だけどな。

 なんとなく同意するけど。


「あいつは、決闘において、相手と自分の間にどれだけ差があるのかを常に見せつけようとする男だ……」


 なるほど……


 実感がこもっているな。


「あいつの性格上、必ず自分が輝くような手を考えているはずだ。他の2人にそこを突っ込まれたとしても、都合の良い理屈を考えているに決まっている」


「ふむ……」


 実感というより、怨念に近いかな……


「たしかに、『湯蛇』レオ=ナイダスや『氷狐』ガイル=ワイリーとは違ったタイプの戦術家のようですね」


 リバーがブルートに同意した。


 なんとなく、リバーが言わんとしていることは理解できた気がする。


 レオ先輩も、ガイル先輩も、「自分がどう輝くか」というよりも「自分の戦術がどう輝くか」を考えるタイプだろう。

 たぶん、リバーもそう。


 でも、ブルートの視点だと、カシウ=フェスタは、自分が輝くために戦術を駆使するタイプのようだ。


 そう言われると、自分が舞台のど真ん中に立っている感じからして、ブルートとリバーの見立てが正しい気がしてきたよ。


 目立ちたがりのお兄さんだな……


 えっ、俺?


 俺のはあくまで「囮役」だからねっ!?

 目立ちたいとかじゃないんだからっ!


 そして、何を隠そう次の決闘で「追試」を課されてしまったのだ……


「おそらく、あいつは……あそこから動かずにど真ん中で『滝』を使うつもりだろう」


 ブルートの予言……


 これを戦術眼と言っていいのか迷う。


「あり得ますね。理に適います」


「うむ」


 一応、リバーのお墨付きを得たのでそう呼んでもよさそうだ。

 実はよく分かっていない感覚だけのくせに偉そうにふんぞり返って鼻息を荒くするポンコツここに極まれり。


「ふっ、行くよ」


 おっ、動いた。


 俺に喧嘩を売ってきた前髪掻き分けリーダーが合図をすると、<クセ者連合>は1、2、3……7人ずつ2隊に分かれて両サイドに向かう。


 分散を選んだか……


 両サイドで5対7の数的有利の状況を作り上げて突破口を掴もうとしているらしい。


 バンッ、バンッ、バンッ……


 パァーーーーン!!


 属性魔法の『玉』……球状の『魔法弾』の射ち合いが始まる。


 上から見て、あまり近づき過ぎていない感じも、クセ者ぶりが窺える。


「行くわね」


「僕も」


「ああ、作戦通りに……」


 おっ、こっちも動いたか。


「おおっとぉーーー、いよいよ動き出しましたぁーーー」


 マスクボイスのアナウンスどおり、中央にいた『殿上人』2人が両サイドに向かった。


 『光霞』マライヤ先輩が左(西側)に、『宵闇』フォルクス先輩が右(東側)に動く。


 ブルートの兄ちゃんは舞台中央に残ったままだ。


 なるほど……!

 ブルートの見立てどおりになっているな、今のところ。


「ふっ、かかったなぁ、カシウ=フェスタ!本当の狙いは君だよっ!!」


 おっ、さらなる動きが。


 <クセ者連合>陣営、本陣に残っていた前髪掻き上げリーダー含む4人が中央に向かった。


 さらに、攻撃をしていた両サイドの7人中、2人ずつが隊を離脱し、4人に合流する。


 ……どうでもいいけど、いくら拡声の魔道具が用いられているとは言え、そんな大声で「本当の狙い」とか言っちゃうあたり、アホなんじゃないかなって思う。


「なっ、なあ……!?」


「ふっ、なんか言ったか?」


 ……やっぱりね。


 舞台中央にいつの間にか巨大な岩が積まれ、その頂上に『瀑布』カシウ=フェスタが乗って、相手陣営を見下ろしている。


「小賢しい策を弄しても無駄だ……俺たち『殿上人』とお前たちとは格が違う」


 積まれた岩は何もまっすぐってわけじゃないんだ。


 自然物である滝のそれよろしく、幅広でちょっとした崖のようになっているその積まれた岩は、即席で造られた3峰の岩山だ。


 中央、1番高い所にブルートの兄ちゃんが立っているが、いつの間にか、加勢に向かったはずの他の2人も別々の峰の上に乗っている。


「作戦通りだな……行くぞ」


「ええ」


「ああ」


「『竜頭滝りょうずのたき』」


 ドバッシャーーーーーーーー……ギュルンッ、ギュルンッ、ギュルルンッ!!


「う、うわぁーーーー」


 『瀑布』カシウ=フェスタによって生み出された巨大な3つの『水龍』が、岩山から猛スピードで舞台に向かって流れ出した。


 そのあまりの勢いに、思わず舞台から悲鳴が上がる。


 この時点でもう勝負はあったな……!


 それぞれ別方向に降りる『水龍の滝』の頭の上には、3人の『殿上人』が乗っている。


 発動者のブルートの兄ちゃんはともかく、属性違いでありながら、当たり前のように『水龍』の頭の上に乗れている2人はすごいな。


「『光画射こうがしゃ』」


 キラキラキラキラキラ……ガッシャーーーーーーーン!……ザザザザザザザザ!!


「うわぁーーー」


「キャーーーー」


 西に向かった『水龍』の頭上からキラキラした『光の塊』が生み出され、ものすごい勢いの『水』よりも早いスピードで落ちたその『光』は地上に落ちる直前でグラスが割れるかのようにバラバラに分解し、その破片が敵に向かって降り注ぐ……


「『暗黒点星あんこくてんせい』」


 ブワンッ……ジュジュジュ……モアーーーーーーー!!


「ふぐっ」


「ぐおぁっ!!」


 東側に向かった『水龍』は、周囲に『闇の靄』を纏い、そのまま乱暴に5人の魔導師に向かって流れ落ちた。


 『闇の靄』によって視界を奪われた魔導師たちは、そのまま『水龍』の直撃も受ける……立ち上がろうとしても、じわじわと『闇』の浸食によってその魔力を奪われ、力なく崩れ落ちる……


「『瀑布須乱舞ばくふすらんぶ』」


 ドバッシャーーーーー、ドパパパパパパパパパパパパパパ!!


「ちいいっ……!」


「うっ……!」


「ごぼっ……!」


 中央から滑り落ちた『水龍』は直前でその身を弾けさせ、無数の『水弾』となって、前髪掻き分けリーダー含む8人の魔導師たちに向かって放たれた……!


「決まったぁーーー!こちらもぉ、圧勝ですぅーーー!<2年生『殿上人』連合>、格の違いを見せつけましたぁーーー!」


 うーん、なかなか手ごわそうだね、ブルートの兄ちゃんたちも……!

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


クセが……弱い!(笑)


次回、第2戦開始!

ノーウェの役割は……?

そして、リバー驚きの決断……!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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