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翡翠ノ姫  作者: 矢本MAX
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第六章 旅の準備

何かを計画した時、それを実現するには、より具体的な手段が必要となります。

薔薇人はそのために、ある人物の存在を思いつきました。

それは……

翌日学校へ行くと、薔薇人は授業がはじまる前に、同じクラスの吉行陽介に話しかけた。

 彼は学校一の鉄道マニア、いわゆる「鉄っちゃん」として知られていた。

 だが、誰もが彼を「鉄っちゃん」とは呼ばす「鉄子」と呼んでいるのは、彼が女子の制服を着た女装子だからだった。

 髪の毛を肩まで伸ばしたその姿は、学年でもトップクラスの美貌で、男子生徒からのアタックが後を絶たないが、彼は、

「ゴメンね、男の子には興味がないの」と、全て断っているとのことである。

「僕はね」と彼は言うのだった。

「僕のあるべき姿をしているだけだよ」と。

 そういう存在が、イジメられたり白眼視されたりしないところが、この学校のいいところだと、薔薇人は思っている。

「吉行くん」と薔薇人は声をかけた。

「ちょっと教えてもらいたいんだけど、糸魚川市に行くとしたら、どれくらいかかるかな?」

「それは時間? それともお金?」

 話が鉄道関係と解ってか、吉行くんは眼を輝かせて訊いてきた。

「どちらも。出来れば日帰りで行って来たいんだけど、可能かな?」

「もちろん可能だよ。東京までは高速バスの方が値段も安いし便利だね。

 東京からは北陸新幹線で二時間ちょっとだから、充分日帰りで行って来れるよ。

 料金は新幹線の往復で約二万円、高速バスの料金と合わせても二万五千円くらいで行けると思うよ」

 とタブレットを操作しながら、即座に答えてくれた。

 それくらいの金額なら、古本さんがくれたアルバイト代と、自分の小遣いを足せばクリア出来そうだ。

「んで、何しに行くの?」

 吉行くんの口調が少し親しげになって来たので、薔薇人はちょっと嬉しかった。

「フォッサマグナミュージアムへ行ってみようと思うんだ」

 持参した観光ガイドの該当ページを示すと、

「へえ、面白いものに興味があるんだね。ちょっと待って」と言って、再びタブレットを操作して、新幹線の時刻表を調べてくれた。

「新幹線の切符はネットでも買えるけど、クレジットカード決済になるから、時間の余裕があるなら地元の駅でも買えるよ」とアドヴァイスしてくれた。

 短い時間の会話だったが、お互いのマニアックな性癖が共鳴したような気がして、それまであんまり交流のなかった吉行くんを、より身近な存在に感じるようになった。

 この感覚は、古本さんや図書館司書の万葉さん、美術部顧問の星野先生にも感じたもので、世界に対して、開かれた好奇心と旺盛な探求心を持った人たち、『濡奈川姫物語』の作者風に言うなら「民草」として繋がっているように思えた。

「ありがとう、とっても参考になったよ」

 お礼を言って自分の席に戻った。

 始業のチャイムが鳴った。

人それぞれには得意分野というのがあり、的確なタイミングで的確な人のアドヴァイスを受けることで思わぬ飛翔を遂げることがあります。

あなたの傍にも、そんな人はいませんか?

それではまたお逢いしましょう。

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