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烏賊虎ちゃん

 こんにちは。お元気ですか。私が烏賊虎ちゃんです。烏賊虎と書いて「いかとら」と読みます。名前だけで苗字はありませんが、実はこっちではみんなそうなんです。


 今年の冬に三年生に進級しました。最後の一年を充実した時間にしたいです。今は隣の席の海豚豚ちゃんと一緒にこれを頑張って書いていますが、友達とならこうして手紙を書いてみるのも楽しいです。ちなみに海豚豚と書いて「いるかぶた」と読みます。

 いきなりですがビックニュースからお話しますね。実はこの前、学校のある男子に告白されちゃったんです。初めてのことで緊張したけど、すごく変な人だったから逆にほっとさせられちゃいました。確かこんなことを言われました。


「突然呼び出して好きです……すみません! すみませんと断りを入れようとしただけで、決して好きが走り出してしまったわけじゃないんです。あのその、もう、好きです。いつもいつも、そのさほど食欲はありませんみたいなお顔で、『ねむいー』って睡眠欲ばかり主張するとこが可愛くてずっと好きです。うん、好きです。ところで、こんな僕でよかったら付き合ってもらえませんか。」


 クラスの鱈枝垂れ(たらしだれ)君という人です。始めから終わりまでずっと焦っていて、あんまり可愛かったからあとちょっとでオーケーしそうになったのですが、あの場ではなんとなく保留しちゃいました。

 後から友達の桜桃子(さくらももこ)ちゃんに聞いた話なのですが、鱈枝垂れ君は、あの甘いフェイスとルーズな隙で、学校内外問わずたくさんの女の子をとっかえひっかえしているそうなんです。危ないところでした。あの告白された日から鱈枝垂れ君とは、土曜日に一度ご飯を食べに行っただけでまだ一度も会っていません。安心してください。


 お読みになっているときっと分かりませんでしょうが、実はさっきまで書くことがなくなってしまって、どうしようどうしようと海豚豚ちゃんと二人で爆笑していました。こんなに楽しいので、せっかくだしあなたにも共有させてください。そしてよければ読みながらでも笑ってくれれば嬉しいです。時間差だなんてウンザリせずにぜひ笑ってくださいね。お待ちしています。

 段々書くスペースが埋まってきたし、教室も私たち以外みんな帰ってしまいました。初めて書く手紙なので、今回はこのくらいで筆を止めようと思います。再来年の夏至の頃には一度そっちに寄る予定なので、あなたとはそのときに会えるんですね。今から楽しみで仕方ありません。じゃあ長くなっても良くないので急だけどじゃあね! 私も海豚豚ちゃんもそう言っています。

烏賊虎ちゃんは本当は、「肝臓先生」という小説に出てくるおじさんの名前です。

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