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好きなんだからいいじゃない  作者: 優蘭ミコ
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167.最強に可愛いお菓子

つけた本人はそんな意図は無くて、それらしさを追求した結果なんだと思いますが、お菓子のネーミングって、押並べてかわいいと思いません。そして私はこれが最強だと思います。

 お菓子の名前って可愛い物が多いと思いません?洋菓子和菓子にかかわらず名前を付けた人はそんなこと意識してる訳は無い筈ですが、思わず頬が緩んでしまう物が多い気がします。たとえば『ボンボローニ』これはイタリアのクリーム入りドーナツなんだそうですよ。あと『ベニエ』これはフランスの揚げ菓子で外はサクッ、中はふんわり。粉砂糖をたっぷりまぶすのが特徴で、謝肉祭やニューオーリンズ文化とも深く結びついてる物だそうです。あと、1990年代前半に爆発的に流行った『ナタデココ』、その流れを汲んだのが『タピオカ』なんですかね。和菓子は『もなか』とか『だいふく』とか可愛いと思いません?


 この可愛いって感じる言葉の特徴は母音が明るくて繰り返し音が使われてて小さい音・軽い音が多用されてる、そんなのが可愛らしさを強調するのかななんて思います。『ボンボローニ』なんてその典型なんじゃないかしらなんて思います。そして、日本語の平仮名で書いた時の見た目、丸みのある字形が柔らかさを強調して小さい文字が使用されてるとちょこんとした可愛らしさを感じたりなんかする気がします。そんな中、私が可愛らしさ最強のお菓子が『プリン』なんじゃないかって思います。片仮名で書くと少しとんがっった風に見えますが平仮名で書いてごらんなさい……『ぷりん』……ですよ、もう、あまりの愛らしさに私は枕を抱きながらのたうち回ってしまいそうになりますがね。


 このプリンって実は始まりはお菓子じゃなかったんですよ。プリンの発祥はイギリスの『プディング』なんだそうで17世紀の船上料理から始まった物なんです。長い航海をしていく中で余った肉や野菜を卵液に混ぜて蒸した料理が広まって材料を混ぜて蒸す・煮る・焼くなどして固めた料理全般を指す言葉になったんだそうですよ。プディングは古英語 puduc(腫れ物)→中英語 podingソーセージ→フランス語 boudin(腸詰)に由来する言葉なんだそうで、ゲール語の『動物の内臓』を意味する言葉に由来する説もあり、腸詰料理から発展したともされてるそうな……ちょっと曖昧でごめんね。そして、18世紀末頃になると、具材を入れずに卵液だけを牛乳・砂糖と合わせて蒸す『カスタードプディング』が登場しこれが現代のプリンの直接の原型になりました。


 日本への伝来は明治時代、西洋料理の導入とともにプリンが紹介され、戦後には市販品が登場して家庭でも手軽に楽しめるようになると共に固めのクラシックプリンからとろけるタイプ、抹茶やかぼちゃなど多彩なバリエーションへ広がって行きました。『プリン』と言う言葉は英語のpuddingが日本語化したものですが、ひらがな表記の柔らかさが可愛さを強調していまね。言葉の響きと季節の色彩にも通じていて、プリンは単なる洋菓子以上に文化の翻訳として日本に根付いた存在と言えるんじゃないかなって思います。そして、その根付きを決定的にしたのがアレですよそう、プラスチック容器の底の突起をぷちんと折ると、ぴょこんと出て来るあれ。あれは初めて見た時、衝撃的だったなぁ。お皿にぽこんと落ちてきて、プルンと震えるあの愛らしさはもう、プリンの決定版と言っても良いんじゃないかと私は思ってるあのプリン界の最高傑作、江崎グリコ様から発売されてるあの『プッチンプリン』様ですよ。


 発売開始は1972年、当時は『グリコプリン』と言う名前だったんですがこの当時、実はプリンって競合商品が多くてハウス食品様や森永製菓様などが販売していた『プリンミックス』って言う牛乳を加えて冷やすだけで作れる物が有ったり、街のお菓子屋さんなんかでは『焼きプリン』や『カスタードプリン』が定番で、手作り感とカラメルの香ばしさが人気になって家庭では真似できない味として支持されて、カップ入りのプリンはかなり少数派、市場に埋もれてしまったわけです。しかしそこで江崎グリコ様は考えた(この辺からは中島みゆきさんの『地上の星』を聞きながら読んで頂ければと思います)……


 ……X


 昭和四十七年……

 日本の食卓に、プリン戦争が勃発していた。

 家庭では『プリンの素』が主流。町の洋菓子店では香ばしい焼きプリンが人気を集めグリコ協同乳業が送り出した『グリコプリン』は、鳴かず飛ばずで売れ行きは低迷した。


 ――敗北の影が忍び寄る。


『このままでは撤退だ……』

 開発チームに重苦しい空気が漂う。


 だが、若き技術者たちは諦めなかった。

『喫茶店のプリンを、家庭に届けたい』

 そして、その執念が奇跡の仕掛けを生み出す。


 ――容器の底に一本の棒。


 それを折ると真空が破れ、プリンがぷるんと皿に舞い降りる。

 カラメルが流れ黄金色の輝きが食卓を照らし、ひと口目からプリンとカラメルを同時に食べることが出来た。


 その名も『プッチンプリン』。

 擬音語を冠した商品名は子供達の心を鷲掴みにした。

 テレビCMで『プッチン!』と響くたび、全国の食卓に歓声が広がる。


 ――敗北寸前からの大逆転劇。


 小さな棒が日本のプリン文化を変えた。

 これは家庭の食卓に祝祭をもたらした、挑戦者たちの物語である。


 はい、ここからヘッドライト・テールライト……


 私もこの仕掛けの虜になった一人です。プッチンプリンは基本的に日本国内向けの商品ですが、近年はアジアを中心に海外展開も行わ特に台湾や韓国などで販売されてて、訪日観光客のお土産としても人気だそうです。ただし、アメリカやヨーロッパでは本格的な流通は少なくて限定的な展開にとどまっています……が、世界は空前の日本食ブーム。ひょっとしたらとんでもない火が付くかもしれませんね。可愛くて美味しいプッチンプリン、私はこれ、傑作だと思います。

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