158.竹輪麩さん、ごめんなさい……
人間って、衝撃的な出会いをする事が有るものだと思います。それは私と竹輪麩との出会い、もしもあんな出会い型をしなければその関係性は少し変わっていたかも知れません。だからと言って、改善する気力も無く……
秋が全力疾走で駆け付けたって感じですね。酷暑の期間が中がったから気温の急降下をそれ以上に感じたりします。そして、気温が下がれば食べたくなるのは温かい物、その代表格はやっぱお鍋でしょうねぇ。いろんなお鍋が有りますが軽くジャブを的な感覚でおでんなど如何でしょう。おでんは私が子供の頃は温かい以外の物は考えられませんでしたが近年は冷たいおでんもかなり食されてるみたいでコンビニの棚を見ると冷たいおでんが結構販売されてましたし、スーパーでも何種類か見かけました。で、実際に頂いでみるとこれがまた、有りじゃんって思える美味しさで、正に冷たい緑茶みたいにあと何年かしたら定番になるかも知れません。海外ではアイスコーヒーはまだ認知度低そうですが日本国内じゃぁこれが無いと夏を乗り切れないって方、かなりいらっしゃると思います。喫茶店で頂くアイスコーヒー、暑い時期にはビールより美味しい言って感じたりしますもの。
おでんと言えば大根だったりこんにゃくだったり、はんぺんだったり、ちょっと変わったところだとロールキャベツとかウィンナー天なんてぇのが私大好きなんですよ、あと牛筋も良いなぁ。ま、それが無くても大根と玉子が有れば私は幸せになれると思います。ただ、これはあくまで私の好みの問題でしか無いのですが、おでんに入ってるとちょっとテンション下がる物が有りまして……それが『竹輪麩』なんですよ。これは関東ローカル食材で、東京・埼玉・神奈川・千葉などでよく食べられてて、西日本ではあまり知られていません。そして東北地方でもほぼ無名。初めて見たのは埼玉に出て来て会社の寮からアパートに引っ越して、その近所に有った雑貨屋さんで自家製おでんが売られてて、その中に入ってたのを見たのが私と竹輪麩のファーストコンタクトでした。そして一口食べて……飲み込めなくなりました。ぱっと見た目が真ん中に穴の開いたナルトっぽかったのでその食感を想像して口の中に放り込んだらまぁ、物凄い密度の小麦の塊で想像とのギャップから脳がバグってビールで流し込もうとしたんですがそれが何故か出来ない。みっちり詰まった小麦の筒を私の味覚と食感と心が拒否してしまいましたとさ。それ以来、竹輪麩を頂く事は無く、今に至っています。
関東ローカルのグルメ番組では時々取り上げられる事が有って出演者の皆様が美味しそうに頂いている姿を見て、今でもそれホントなのって、疑いの視線をあからさまに向けてます。勿論、竹輪麩を製造するメーカー様は沢山有って各メーカー様で特徴的な物が有るんでしょう、私がその時、ただ単にハズレを引いただけ、あるいはそのおでんを作った雑貨屋さんの料理の腕とか色々と有るのかも知れません。でも、あの破壊的な食感、何と言いますかこう、粘土を口の中に放り込んだような衝撃は忘れる事が出来なくて、おそらく私は一生竹輪麩を口にする事は無いのではないかと言うくらいの勢いですので、その番組が別の食材を取り上げて美味しいって言っても、それを素直に信じる事が出来なくて、斜めな視線を向けたりなんかしています。竹輪麩は『もちもちしていて、すいとんやうどんに近いから、出汁をよく吸って煮物にぴったり』という評価がされてるそうなんですが、私が食べた竹輪麩は絶対に損な食感ではないと断言出来ます。
竹輪麩を調理する時重要なのは下茹でしてから煮る、そしてその後しっかり煮込む。これが重要なんだそうで、これをしないと粉っぽくなったり私が言う様に粘度みたいな食感に仕上がるんだそうです。私と同じ様な感想を持ってる方は意外と多いんだそうで竹輪麩嫌いって言う方の大半は、この粘土みたいな食感にやられたんだそうですよ、その辺から察するに竹輪麩嫌いの方々って運悪くこの調理方法を怠ったか、怠ったお店で食べちゃった可能性が有りそうな雰囲気ですね。比較的好き嫌いがはっきりしている竹輪麩はひょっとしたら調理方法がかなり難しいか調理に時間がかかる食材なのかも知れません。だからと言って美味しい竹輪麩を今更求めるかと言うとあんまり情熱を注げそうにありません。だって、私、おでんのタネで好きな物が既に固定されちゃっててそれさえ有れば万足出来てしまうのですよ。おでんに入ってる竹輪麩を探求する事はこれからの人生で、多分ないだろうなぁ。
じゃぁ、竹輪麩はおでん以外の需要が無いのか、と問うと実は決してそんな事は無く、唐揚げ、カルボナーラ風の炒め物、グラタン、バター醤油炒め等々活用方法は有るそうです。でも、それなら普通にカルボナーラ食べるし唐揚げ食べるしグラタン食べるし……もしも初めての出会いがあまり好きな表現では無いですが『普通に美味し』かったらそれをアレンジする気力も沸いてくるんですが、ホントにどうしようもない出会い方をしてしまったものだから触れ直す気力も沸かないと言うかなり寂しい状況に陥ってたりする訳でして、そこから立ち直るには美味しい竹輪麩を食べるのが一番効果的なのは分かってます。竹輪麩の有名店が関東地方には綺羅星の様にあちこちに存在している様ですし、ネットショップで取り寄せる事も可能な様ですが、それすらする気にならない位、最悪の出会いをした私は、竹輪麩食べなくても死なないと言う否定のしようがない理由でこれからも接触を避けるのかも知れません。出会い方ってのはホントに大切なんだなって、このお話を書いてて実感してしまいました。
私達はどうしてこんな出会い方をしてしまったんだろう…ね、ララァ……ああ、刻が見える




