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友人に助けを求める話

シリアスにする病気

こんな可愛いハナちゃんを起こす訳にはいかない。

ハナちゃんの衣装姿を見れるのはもう少し後になりそうだ。


私はハナちゃんが起きるまでの間、ハナちゃんの頬をつんつんしたり、反応を楽しんだりしたが、そんなことをしている場合ではないと、電話をかけた。

相手は学生時代から困ったらよく頼る角崎という友人だ。


2コール目で角崎は電話に出た。

でなかったらという不安はいらなかったようだ。


「もしもし」


「もしもし角崎久しぶり、おれおれ、片山」


昔の友人に久しぶりに連絡した時、少し気まずく感じていつもより明るいテンションで話してしまう。


「久しぶり、どうしたいきなり」


若干無愛想に感じる話し方をする角崎。


変わらないな。


そんなことを考えた後、私は心の中で祈りながら、角崎に相談する。


「すごく困ってることがあるんだ。手を貸してくれないか」


1秒だけ、間が空く。

この1秒が私にはとても長く感じた。


はあ、とため息が聞こえてくる。

角崎のため息は慣れたものだが、この時ばかりは心臓が高なった。


「久しぶりの連絡で、同窓会か飲みにでも誘われるのかと期待したのに、全く」


断られたのかとひやひやした。

しかし、確かにそれは申し訳なく思い、ごめんと一言謝っておく。


「まあいい、それでなんだ?どうした」


私は信じてくれと願いながら、角崎に今日仕事から帰ったら猫が美少女になっていたことを話した。


また、はあという声が聞こえてきた。

ため息ではなく、呆れを内包した声が。


そりゃそうだ。

私だってUFOを見たと言われたらこんな反応をするだろう。


「まあ、まあいい。猫ってあの黒猫のことだろ、それがどうした」


角崎が一旦信じる、というスタンスをとってくれて非常に助かった。

私は本題を話し始める。


「中身はハナちゃんのままで見た目だけが人間の女の子になったみたいなんだが、確かな確証はない、その辺の相談相手になって欲しい」


「分かった。とりあえずお前の家に行けばいいんだな、少し待っとけ」


あまりの即答に嬉しさよりも驚きが勝つ。

自分で言うのもなんだが、相当胡散臭い話だ。


「いいのか?」


「ハナちゃんって前にお前の家に行った時に頭をなでさせてくれた子だろう。久しぶりに会いたいと思っただけだ。」


「……ありがとう」


「そもそも今までに犯罪以外で俺がお前の頼みを断ったことがあったか?」


「いや角崎に共犯誘ったことなんかねーよ」


角崎は笑った。

私も笑った。


信頼できる友人を持ってよかったと涙が流れそうになった。

角崎はそれを察してか、すぐに電話を切った。


20分ほど経って、角崎は息を切らしてやってきた。


「はあ、運動不足は百害あって一利なしだな、はあ」


「わざわざすまん、入ってくれ」


角崎をリビングに入れて、早速コタツで寝ているハナちゃんの姿を見せた。


「…………」


「…………」


「俺は、はじめてお前と共犯関係になってしまうのか」


「違うわ、ハナちゃんだよ。ハナちゃん」


角崎は両手を顔に当てながら天井を仰ぐ。


「半分は冗談だ。お前が嘘をついていようがいまいが、頭を抱える状況にあるのはかわりない」


「……悪い」


巻き込んだ申し訳なさが、何度も私を謝らせる。

だが1人で解決できるなら、1人で解決したかった。


「謝るんじゃない、犯罪に巻き込まれた感がでるだろうが」


しばらくの沈黙の後、角崎は話し始める。


「もう一度聞く。お前が飼ってる猫がこの子になったんだな?攫ってきたんじゃないんだな?」


「誓って違う。この子はハナちゃんだ」


「オッケー」


私は台所へ移動し、今までの経緯を角崎に話した。

角崎は終始眉間に皺を寄せて頭を悩ませていた。


「とりあえず、ハナちゃんは猫にとって有害なものを摂取してもいいのか、という問題は非常に簡単だ」


角崎は来た時から持っていたビニール袋の中からあるものを取り出す。


「マタタビだ」


チョコを食わせろとか言い出すのかと思った自分を殴りたい。

確かに考えていなかったことだ。


1歳になったばかりのハナちゃんにはまだマタタビは与えていない。

つまり新鮮な反応を見ることが出来る。


マタタビの匂いを嗅いで、少し舐めさせて、何の反応も見せなければ、身体は人間であると結論づけても問題はないように思う。


家に来る前に買ってきているということは、角崎は私が必死に考えて出なかった考えを、あの少しの会話で思いついたのか。


「角崎を頼って本当によかった」


「余計なことを考える暇があったらあの子について考えろ」


照れ隠しに思えなくもないが、確かにその通りだ。


「次は服と、外に行かせてあげたい、だったか」


「ああ、一応オムツとかポンチョとか買ってきたんだが、どうやったら外に出してあげれるかなって」


角崎の表情はみるみる険しくなった。


「そんなのはいい。お前分かってるのか?ハナちゃんは人間になったんだぞ。お前にハナちゃんはどう見えてる?猫か、娘か」


目を逸らしていたわけではない。

目の前の問題に四苦八苦していただけだ。


この子は人間になったと何度も確認した。


「二足歩行のが楽だと気づくかもしれない。話しかけていれば言葉を覚えるかもしれない。服を着ていれば着方すら覚えるんじゃないか?。どちらを選ぶかはお前次第だが、どちらもイバラの道だ」


「…………」


「にゃーん」


空が晴れ、雨は止んだ。

夜はまだ浅い。


角崎はハナちゃんを見ると眉間に皺を寄せた。


「いっそのこと、誘拐してきた子だったら、通報するだけだったんだがな」


「なっ……」


角崎なりの優しさなのかもしれない。

それにしてもそれは度を越している。


「冗談だ。今は」


「にゃーん」


ハナちゃんを見た。


相変わらず可愛い。


だがほんの少しだけ、少女になって欲しくなかったと思ってしまった。

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