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縫い人の旅  作者: 瑠璃
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第六章 ラタとレタ

「落ち着いた?」

「はい…すみません、りこさん。ぼく、すぐに泣く癖があって、両親や兄からはもっと強くなりなさいって言われるんですよね……」

 ラビは、りこのハンカチで涙をぬぐいながらはにかむように言った。りこは首を振った。

「ラビは優しいんだと思う。わたしの友だちに似てる。その子も周りに優しくて、悲しいとか嬉しいとか、一緒の気持ちになって考えてくれる子だったよ」

 そう言いながら花ちゃんのことを考えた。彼女は写し鏡のように、友だちが喜ぶと隣で嬉しそうに笑い、悲しい気持ちでいると隣で泣いてくれた。りこはそんな花ちゃんが好きで、自分もいつかこんな優しい子になりたいと思った。ラビは少し恥ずかしそうに答えた。

「そう言ってくれるりこさんこそお優しいです。泣いてる場合ではないですね。先ほどの説明で不足していたことのご説明をしたくて……」

 その時ドアの外から声が聞こえた。

「兄ちゃんの声あんまり聞こえないねぇ」

「しっ!中に聞こえちゃうよ。何か話してるんだから静かにしなきゃ」

「あ〜ごめんね〜。でも、何でドアに耳を当ててるんだっけ?」

「だーかーらー!何話してるか気になるじゃん!」

「うーーん、そうだったかもね〜」

 ドアの方を向いてラビは苦笑いをした。

「りこさんすみません…弟たちを中に入れても良いでしょうか……」

「もちろん。弟くんたちだったんだね」

「はい、森で話した双子の弟たちです。ちょうどりこさんに相談したいことがあったのでタイミングが良かったです」

 そう言ってラビは扉を開けた。2匹のうさぎは両耳をピンと立てて、目を見開いて固まっていた。ラビはしょうがないなという顔をしてから2匹の頭を順番にぽん、ぽんと撫でた。

「2人とも中に入って良いよ。縫い人様のりこさんがいらっしゃってるから、ちゃんとご挨拶してね」

「う、うん!兄ちゃん!」

「分かったよ兄ちゃん〜」

 2匹はぴょこぴょこ家の中に入りりこの横に来た。ラビより少し小柄で、左の子ウサギは片耳に茶色いぶち模様が二つ付いていた。右の子うさぎは両耳の先が茶色の模様をしていた。右の子うさぎがハキハキと話し始めた。

「縫い人様初めまして!ぼくはラタ!で、こっちは双子の兄弟のレタ!ぼくたちにんじん畑でお母さんとお父さんのお手伝いしてたんだけど、兄ちゃんが縫い人様を連れてきたのを見て気になって気になって、お家まで来ちゃったんだ。お話し中にうるさくしてごめんね……じゃなかった、すみませんでした」

 ラタは頭をペコっと下げた。横のレタはそれを見てあっとした顔をして、遅れてペコっと同じように頭を下げた。

 りこは首を振った。

「気にしないでっ。畑のお手伝いして偉いんだね」

 ラタは顔をぱっと上げて嬉しそうに言った。

「うちのにんじんは甘くて美味しいんだよ!葉っぱまで甘くて美味しいんだ!僕たちも毎日お父さんとお母さんと、兄ちゃんと姉ちゃんのお手伝いしてるんだ!お水あげたり肥料まいたり、愛情こめて育ててるんだよ!」

「お父さんもよく言うもんね〜。愛情こめて育てるほど野菜は優しく甘くなるって〜」

 レタがのんびりした声で言った。ラタはレタの方を見て怪訝そうに言った。

「最後抜けてるって!優しく甘く、幸せの味になるんだよっ」

「あれ?そうだったっけ〜?」レタは頭を傾げた。

 ラタはため息をついた。

「あれだけ毎日お父さんが言ってるのに…何で忘れちゃうのかなぁ」

 半分からかってるように見えるその表情には、もう半分、悲しみがにじんでいるように見えた。そんな2匹の兄弟にラビは言った。

「ほら2人とも、お父さんとお母さんには言わずに出てきたんだろうし、一度畑のお手伝いに行っておいで。兄ちゃんもりこさんともう少し話すことがあるからね」

 ラタはほっぺを膨らませた。

「それってぼくたちがいたらお話しできないの?ぼくもりこさんと話したいよっ」

「りこさんはうさぎ村に来たばかりだから、村のことやこれからのことをお話ししてるんだよ」

「ぼくもうさぎ村のこと紹介したい!りこさんもにんじん畑見たいよね!?」

 ラタはりこの膝に手をつけて顔を覗き込んできた。つぶらな茶色の目で見つめてくるラタに思わず頷きそうになってしまう。うんと言いかけた言葉を飲んで

「ラタくん、良かったら後で案内してもらえる?レタくんにもぜひ」

 とお願いをした。ラタとレタは嬉しそうに笑顔になり大きく頷いた。

「分かった!後でまた来るね〜!」

 そう言ってラタはレタの手を引いてドアを開けて駆け足で出て行った。姿が見えないがレタの声だけが「あとでね〜〜」と遠くから聞こえた。去っていく声の方を微笑ましく見つめているりこにラビは声をかけた。

「弟たちが騒がしくしてすみません……」

「ううん、すごく元気でかわいいね。ラタくんがレタくんのことを引っ張っていってる感じもかわいらしかったな」

「実は……そのレタのことでりこさんに相談があるのです」

 ラビは深刻そうな顔をしてりこの顔を見つめた。

双子の名前を考えるのに2日間かかりました。結局シンプルイズザベストな気がします。

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