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三国争乱姫 ~歴女が姫の代わりに三国志攻略?!~  作者: 水季瑠璃
一章 荊州の城に降りたる
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3 違和感のない身体

劉備達を見送った後、くるりと今までいた部屋を振り返った。


(…鏡、ないかな…?)


とにかく自分の姿を確認したい。

不思議だが、あまり“芙蓉姫”と言われているこの身体に違和感がなかった。



ふと、扉の方をまた振り返る。


「……」


一番最初に出会った、黒髪の青年がまだそこにいた。


劉備達とは一緒に行かなかったようだ。


芙蓉であると判断したのも彼。


(もしかすると芙蓉姫の護衛兵とかなのかしら)


じぃっと青年を見る。


青年もじっと桜を見ていたようで目が合う。

そして、目が合った瞬間にサッと床に跪いた。


(たぶん当たりだな)


今の行動は、仕える相手の視線を受け、不躾に見ていた事を詫びると共に、座して指示なりお声なりを待つ将兵のそれに近いものを感じる。


(わーお…

武士って感じでドキドキする)


歴女の心がくすぐられる。

しかも相手は大陸系ハーフイケメンさんですからね。


(小姓…いや、この人はどっちかっていうと忍び…?)



「………」


「………、…えっと…たしか…ホウエンさん、よね」


寡黙男子にそう呼ばれていたのを思い出して呼びかけてみる。


「……、はい」


明らかに不審がられているが、もう名乗っている以上、今更芙蓉のフリもできない。


「あなたは、芙蓉姫の護衛?」


「…そのような、ものです。」


鵬燕は硬い声でそう答えた。


「…分かったわ。

…、あの、鏡を持ってきてくれないかな?」


小さく頷いて鵬燕は立ち上がり、机の上に置かれた鏡を差し出してくれた。


それはいわゆる“銅鏡”で、桜がよく知る鏡と違ったが、自分の現在の姿を確認するためには十分だった。



「…私の顔だわ」


鏡に映っていたのは、自分の顔だった。

安心するような、違和感があるような不思議な気持ちだ。




「…芙蓉姫はずっと寝たきりだったって誰かが言っていたけど…」


「事実です。」


「何かの病気だったの?」


「元々身体の弱い方で、もう二年近く立ち歩かれることはありませんでした」


「そんなに?」


二年も立っていなければ、足の筋力が落ちて歩くのも難しいはず。でも、桜には歩きにくいなどとは感じなかった。


(これは、私の身体のままこっちに来たのかな。それとも芙蓉姫の身体に魂だけ来ちゃった感じなのかな…

…戻れるよね…?私……)



「首の後ろ見てたよね。芙蓉姫だって分かる特徴があるの?」


「はい。知らなければ気付かない程度ですが、傷跡があります。」


「それで、芙蓉姫の近くにいたあなたは、私が芙蓉姫だと思うのね?」


「…お身体は、間違いなく。」


鵬燕はほぼ表情を変えない。

それでも、今の返答の間で何となく受け入れがたい感情は伝わった。


「そう…」





その頃、別の場所で。



「ね、龍ちゃんはどう感じた?」


「ん~そっすねぇ…」


なんだか楽しそうに話し始めた二人に、美少年子龍が嫌悪を隠さない表情で訴える。


「間者では?怪しすぎますよ、あの女。

芙蓉姫はいつも同じ場所にいるし抵抗できる体力もない。簡単に殺して成り変われます」


「だとしてもさ、瓜二つすぎない?鵬燕も本人だって言ってたし」


「それは…」


「鵬燕が手引きした可能性は?あれは元々曹操の所のだろう」


唸るような低い声で放たれた言葉を、軍師が首を降って否定する。


「可能性はなくはないが。

それより嘘だったとして、目的が分かんねえよ。嘘だとしたら、あまりにも稚拙すぎる。バレバレだろあんなんじゃ。」


「…………」


尤もすぎる言葉に、子龍達も口を閉ざす。


「まあでも、万が一ってこともある。

子龍、念のため新野に使いを出してくれねえか」

「はっ」


「あと、劉表様方を探れ。…念のためな。」

「…はい。」



そうして子龍は瞬く間に去っていく。


そんな軍師と子龍たちのやりとりを、劉備はただ黙って見守っていた。



「…なんすか、大将」


「ふふ。いやね、なんか俺はね。ホントな気がするんだよね~」


楽しそうに笑う劉備に、軍師は寡黙男子と目を合わせる。


そして、軍師はケラケラと笑い、もう一人は呆れたように首を振った。

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