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三国争乱姫 ~歴女が姫の代わりに三国志攻略?!~  作者: 水季瑠璃
一章 荊州の城に降りたる
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1 目覚め

「うっ………」


まぶたに明るさを感じ、意識が浮上する。



「……うぅ…ん」


体を動かすと、布のこすれる音がした。


(布……?)



「ッハ!!!まさか私、博物館で倒れた?!」


桜は慌てて目を開けて起き上がる。




そして、目に飛び込んできた景色に言葉を失った。


(……………?)


事務室や医務室のコンクリートの壁に囲まれた狭い部屋を想像していたはずなのに。


(………んんん?)


木造の広い部屋、紅を基調としたしつらえの空間。

丸い窓。




あれ…?


なんか見える景色が変だ。

なんて言うか、やたらにレトロな……


(え?ここ、博物館の医務室じゃないの?)


(なんか、昔の中国とか韓国の建築っぽい……)


(医務室がなかったから、別のところに運ばれたとか?)


(この辺にそういう建物あったっけ?)


(ってか、麗子は?)


(そもそも、誰かいないの?)


混乱して頭に疑問符ばかりが浮かぶ。



(外に誰かいる…?)


窓からは庭のような場所が見えるが、一部しか見えないためはっきりしない。


部屋を見回すと観音開きの扉があったため、とりあえずそこから外に出ようとベッドからのそりと這いだした。



そして、気づく。


(え)


(まって)


(何この服)


動きやすいパンツスタイルにハイヒールだったはずだが、肌触りのいいワンピースのような格好をしている。


(…いやいや、…いやいやいや…)


理解の及ばない状態に頭を抱えた。


(待て待て。待て待て待て。

…脱がされた?いや、流石にそれはない!そもそも気付かない訳ないし。

ちょっと本気で謎すぎる、何、どういうこと…)


頭がパニックでくらくらしてくる。

ふらふらした足取りで桜は扉に向かっていく。



(麗子が仕掛けた壮大なドッキリとかだったり?

あ、なんかテレビの企画に応募したとか…?)


そうであってくれ…という願望混じりの思考は、扉を開けた瞬間にガシャリと音を立てて崩れていく。



広がるのは、広大な空。

建物も電線もない、果てしない青い空。


あまりのことに、呆然として声が出ない。


でも、叫ばずにもいられなかった。


「これは、いったい、どういうことなのっ?!」



だれか。

おねがい。


この状況を説明して!!





一章 荊州の城に(くだ)りたる





「…っ、姫!!」


すぐ隣から声が聞こえ、ドキッと身体が強張る。


扉のそばに居たのだろうか。

全く気配がなくて気付かなかった。


「えっ」


声の方に視線を向けると、彫りの深いイケメンが驚いた顔でこちらを見つめていた。


「姫、まさか、起き上がれるほど回復されたのですか…?!」


長い黒の髪を後頭部で一括りにした美男子は、髪で顔の半分が隠れており、桜同様に着物のような見慣れない格好をしていた。


(顔も髪型も格好も…日本っぽくない…)


その見た目に思考が奪われていた間、その青年は桜の返事を待っているのか色素が薄めの瞳をただこちらに向けて黙っていた。



「えっと…姫って何?あなたは誰?」


「…は……?」


青年は思ってもみなかった返事に、戸惑いを隠せない表情で桜を見つめた。



「……………」


「………………」


お互いに混乱しているためか、どちらも言葉を発さず、ただただ沈黙が広がった。




そんな沈黙をやぶるように、遠巻きに会話が聞こえてくる。


「え~?ホントに声なんてした?」


「子龍が言うのだから間違いないだろう。」



わいわいと話す声は、だんだんと近付いてくるように思える。


会話の内容的に、こちらに向かってきているようだ。



「俺は何にも聞こえなかったんだけどな~」


「確かに聞き慣れない女子(おなご)の声が聞こえた気がしたのですが…」


「大将、寝てたんじゃないっすか?穀潰しだし」


「あのね、俺だってね……、…アレッ!?」


親しげに話していた会話はそこで途切れる。



目があった。


先頭にいたのは、色素が薄い髪色に茶色の瞳のこれまたイケメン。

格好良いというよりは綺麗。

少したれ目のその目元は、長い睫毛に守られており華やかな印象を放っている。




「芙蓉ちゃん……、…元気そうだね」


しばらくポカンとしていた華やか青年がやっと出したのは、そんな何とも気の抜ける言葉だった。

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