新章 第1.5話 一日千秋
今回は猫明美夜だけのお話。
自分なりの乙女の気持ちを書いたけど……
男だから苦労した。それだけです。
ではお読みください!
△
新学期初日からいいことがあった。
嬉しさに3年の教室へと向かう足が早くなった。
クラスメイトは代わり映えは一切ない。
各々好きなように席に着いておくように。とホワイトボードに書かれていたので親友でもあり、篠崎先輩の妹のはるかちゃんの後ろの席が空いているので、そこに座った。
「美夜ちゃん、おはよー」
私が席に着くなり、すぐさま笑顔で声かけてきてくれる。
「はるかちゃんおはよー」
「おや?何かいいことがあったのかな?」
ニヤッと少し不吉な笑みを浮かべて、はるかちゃんは訊いてくるけど顔に出てたのかな?
「なんで分かっちゃうの?」
「だって語尾が伸びてたからさ」
それだけで考えつくあたり流石としか言えない。
「はるかちゃんのお兄さんと目が合っただけだけど……」
「お兄ちゃんと?大丈夫?いやらしい目で見てなかった?」
どうしてお兄さんのこと好きなくせに、こう言えるのか不思議だなと毎回思わされるけど、感情の裏返しみたいなやつなのかな?
「見られてないと思うけど?なんでそう思うの?」
「だって美夜ちゃん胸大きいし可愛いし、お兄ちゃんがいやらしい目で見ないわけがないと思う」
はるかちゃんは腕を組み、頷きながら答えてくれてる。
「私は……そう思わないけどな」
「いやいや、お兄ちゃん家だと食事時なんて私の胸ガン見してるからね?すごく見てるんだよ?瞬きなんて一切しないんだから」
そんなに胸が好きなのかな……?だとしたら私のことも見てくれてるってことだよね。
「なら、私の……胸も好きなのかな?」
「うん、絶対好きだと思う。だって―――」
はるかちゃんは腕組をやめて急に私の胸を下から持ち上げてくる
「この重量とか……おや?また大きくなったか!?」
な、なんでわかるの!?それに男子の目線がすごいから恥ずかしい。
「は、はるかちゃんやめてー。男子の目線すごいから」
「おっと、ごめんね?」
謝りながらも胸から手を離してくれない。むしろ何故か鷲掴みしてる……。
「ね、ねえ?なんでやめないの?」
「だって私のより柔らかいもん、柔らかさ求めて手が勝手に掴んだの!」
「あ、あのね?そうじゃなくて……」
なんでなんで?指動いてもはや揉んでるじゃないの!?
「くそぉ……これだったら私もお兄ちゃんに色仕掛けするのに……」
その言葉に咄嗟に体を捻って、やっとはるかちゃんの手から逃れることが出来た。
「ダメだよ!兄妹でそういうのは!それに私が―――」
言いかけた瞬間我に返る。なんてことを言いかけたんだ私は……。
「んー?わーたーしーはー?なにー?」
ニヤニヤとニヤけ問いかけてくる、はるかちゃんが憎い。
「なんでもないもん!」
「本当にー?じゃあ色仕掛け今日にでもかけちゃおうかなー?」
「どうぞ……ご自由に……」
どんどん声が小さくなるのがわかる。嫌だ、先輩のこと1番好きなのは私だもん。
「なんで悲しそうな顔するかなー嫌なら嫌っていえばいいのに……」
「もういいもん!ブラコンのはるかちゃんはどうせそういう対象じゃないから、私に勝ち目多いもん!」
「私ブラコンじゃないし!確かにお兄ちゃんはカッコイイし勉強もできるし運動だってできるけど、全然そういうのじゃないもん!」
はるかちゃんは立ち上がり大声で言い始めた。結構学年内じゃ有名だよ……はるかちゃんがブラコンって。
「でも、お兄さんのこと色仕掛けするって、普通なら思いつかないでしょ!?」
私は座りつつ立って威圧してくるブラコンはるかちゃんに反論した。
「あ、確かに……でもブラコンじゃなくてお兄ちゃんを好きなだけだからね?」
正常な判断はできるのに、ブラコンは否定なんだね。
でも、また私の気持ち知っておきながら、好きって言うのは嫌な気分だ。
「私だってそうだもん!小学生の時からだもん」
「私だって同じだもん!お兄ちゃんの色んなこと知ってるもん!美夜ちゃんのしらないおに―――」
「はい、そこまであなた達いつまでお兄ちゃんお兄ちゃん言ってるのかしら?」
割って入ったのは担任の先生だった。
「私が来たことにも気づかないほどに、お兄ちゃんが好きなのは分かったから座りなさい」
先生に座りなさいと言われて気づいた。私もいつの間にか立ち上がっていたので腰を下ろした。
「でもせんせー!」
はるかちゃんはまだ立ったまま先生になにか言おうとしてるよ。
「座りなさい」
先生がはるかちゃんを睨んだことによって、何も言わずに座った。
「はい、じゃあホームルーム始めるわよ。えっと―――」
先生が話し始めて明日からの日程をプリントを配り説明してくれる。
はるかちゃんはズルい。私が先輩の妹だったらどれだけ幸せなことか……。
私だって勇気があれば先輩に告白したい。だけどそれは出来ない……親友を傷つけちゃう気がして、気持ちだけが育っていくのが歳を重ねるごとに実感できる。
「―――はい。じゃあホームルーム終了。寄り道せず真っ直ぐ帰るように!それと、兄のことで夢中になって寝れなず遅刻するなよ」
先生は、そう言って教室を出ていった。
「……」
「はるかちゃん?」
言い返すと思ったので静かなのが変だ。
「美夜ちゃん今日ウチにおいで」
「なんで急にそうなるの!?」
突然のことで驚いた。だが同時にワクワクもしてる、はるかちゃんの家に行くのなんて中学初めの頃以来だ。
「一緒にお兄ちゃんに色仕掛けしよう」
「なに?なんでそうなるの!?」
「だって、もうそれしかないじゃん!」
「だからおかしいってばー!!」
あの後何とか、はるかちゃんを落ち着かせることが出来て、家に遊びに行くことが決まった。はるかちゃんは部屋の片付けするから!と言って先に帰ってしまったので私も家路についた。
私もご飯を食べたら、向かうとしよう。
「お化粧してった方がいいのかな……服もどうしよう……!」
心躍らせて家に帰ると親は留守にしてるようで、鍵を開けて家に入った。
手洗いうがいをして自室へと向かい部屋着を手に取って、シャワーだけはしっかり浴びた。
お昼ご飯を食べるために冷蔵庫の食材を確認して、ハムエッグの準備とパンをトースターに入れ、自室へと部屋に着替えに戻った。
「服はどうしようかな……?ワンピースでいいかな?」
白のワンピースを手に取り着替え、日焼け止めを肌が出ているところに塗ってピンクのカーディガンを手に取り、出かけるの必要なものを小さめのバックに詰め込む。一応化粧品も持っていこう。
準備が終わってご飯も食べた!さあ行こう。
「一応今から行くことを連絡しとこ」
スマホをとってメッセージアプリで伝えたら、すぐ既読がついた。
『今寝てるからチャンスだよ』
『寝かせておいてあげなよ、起こしちゃ可哀想だよ』
寝顔が見れるチャンスと思ったが、冷静に返信を送った。
玄関で靴を履き、鍵を閉め歩いて10分くらいの道のりを歩き始めた。
私には近くて遠い距離。
いつもより歩くペースが早い気がする、気持ちと同期してるかのように。
先輩に会いたい。
少しでも会話したいという気持ちが私を急かしてる。
少しでも近くにいることが出来たら……とそう考える私はきっと―――。
このつまらない生活に、楽しいことが増えて幸せな生活になるのにな。
最後のあたりについて。
好きな人のところに行くとか、好きな人と少しでも一緒にいたいっていう気持ちは自分で思うことを書きました。
(乙女心じゃなくてごめんなさい)
でも、わかって貰えたらなって思います!
読んでいただきありがとうございました!