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国王陛下に王宮へ呼ばれたアレクシスは、王宮筆頭執事のロナウドに案内され、王族専用のプライベートサロンへ入室する。
プライベートサロンへ呼ばれた時は、大抵公務とは違う内容の話だ。
「父上、母上。お呼びでしょうか。」
「座りなさい。」
室内は国王陛下、王妃、王太子のアレクシス、筆頭執事のロナウド、警護の騎士が二名の合計六名だけだ。
ロナウドが紅茶を淹れてくれたがアレクシスは口をつける気が起きなかった。
「報告は聞いている。
初夜に新婦を泣かすとは。」
「そ、それは・・・。」
「我々王族にとって、初夜を無事にこなす事も大切なことだと理解しておろう。」
「ホントこの子ってば。せっかく愛しのクラウディアちゃんを妃に迎えることが出来たというのに。」
「・・・。」
言い返す言葉がなかった。
「このまま其方の寵愛がないと、廃妃論が出てきたり、第二妃、第三妃を娶れという圧力が掛かってくる。」
「・・・はい。」
「これ以上クラウディアを泣かせる事は其方にとっ・・・。」
バァーン!!
突然ノックもなしに扉が開かれた。
「ち、父上!!
クラウディア嬢をわたしにください!! これ以上兄上と一緒にいても幸せになれるとは思いません!! わたしの方がクラウディア嬢のことを幸せにすることができます!!
そ、それに、わ、わたしにだって子を成すことが出来るようになりました!!」
今年十一才になった弟、キースレクスが突然乱入してきた。
しかしどさくさに紛れて何をカミングアウトしているんだ。
顔が真っ赤だぞ。
一瞬周囲に沈黙が流れると、
「「「「「・・・お、おぉ。」」」」」
とキースレクスの成長を喜ばしいという気持ちと、あからさまに喜ぶのも気が引けるという複雑な歓声が上がった。
「過去に、成人前の王族が婚姻を結んだ前例があると聞きました!
クラウディア嬢だったら婚約期間はなくても一緒になっても構いません! もちろん離婚歴も気にしません! 六つの年の差なんて些事です!」
たたみかけるようにキースレクスは訴えた。
まさかの伏兵が現れた。
父上は「ふむ。」とか言って思案している。
母上は嬉しそうにニコニコしている。
そ、そんなこっちは結婚式を挙げたばかりだ。まだ子供のキースを相手に何を考える必要がある?
と高をくくる気持ちがある。
しかしよくよく考えるとキースレクスはまだ十一才だが、年下からかなりの年上のご婦人まで幅広い人気がある。
素直で人を思いやる心を持っている。努力も惜しまず、大変勤勉だ。
何よりもその真っ直ぐな心を時折ぶつけてくるのはとても好感が持てた。いや、むしろ自分にはない部分で眩しくさえ見えてくる。
心に焦りがじわりと滲むと父上が仰った。
「うむ。アレクがいつまでも情けない様ではクラウディア嬢にも、エレフィエント侯爵家にも申し訳が立たない。キースが若すぎるという点も、十年もしないうちに年の差など気にならなくなるであろう。それにキースならエレフィエント侯爵も何とか納得してくれるかも知れないな。」
まさか。という思いとともに嫌な汗が出てきた。
「一ヶ月待とう。それ以上は他貴族からの圧力も避けられん。」
「わ、わかりました。一ヶ月も経たずに報告に参ると思います・・・。」
「話はそれだけだ。」
「・・・はい。・・・失礼致します。」
退室しようとした瞬間、キースが「クラウディア嬢のことはわたしにお任せ下さい。」と鼻息が荒い。
ちょっとムカついたから鼻をつまんでグリグリしてやった。