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己は今まで何をしてきたんだ。
自分の事だけしか考えず、愛していたはずのクラウディアには何も伝えていなかった。
それどころかクラウディアには『嫌われている』とさえ思われていたとは。
それはそうかもしれない。今までは、クラウディアとの時間、一時、一瞬の美しさを見逃すまいと目を凝らし(おかげで眉間に皺が寄り睨むような目つきになっていることなど気が付いていない。)、他の男には触れさたくないから、夜会は自分とのダンス一曲だけで終わらせて帰らせていた。
それに今までろくに褒める言葉を掛けてこなかったのは、緊張してしまい何を言ったら喜んで貰えるのか判断つかなかったからだ。
でも今となっては唯の言い訳でしかない。
このままではクラウディアに何一つ理解して貰えず、気持ちがすれ違ったままでは、またクラウディアを泣かせてしまう。
アレクシスは立ち上がりクラウディアの元へ近寄ると、座っているクラウディアの目線に合わせるため跪いた。
「クラウディア。・・・今まで悪かった。本当にわたしは其方のことを大切に思っている。
今日も、婚礼衣装姿があまりにも美しくて、言葉では言い表せなかったんだ。
それに・・・その美しい姿を誰の目にも映したくなかったんだ。
自分だけのものにしたいと思ってしまい、人目に晒せないなどと言って其方を傷つけてしまった。
本当に申し訳なかった。
許して欲しい。」
クラウディアはえぐえぐ言いながら、
「ほ、本当でございますか?」
とアレクシスの目を見据える。
「あぁ。本当だ。だからもう泣かないでくれ。」
少しアレクシスの目線より高い位置にあるクラウディアの顔を覗き込むように見つめ返すと、
指先であふれ出す彼女の涙を拭い、
そして彼女の手を取り指先に口づけをした。
「クラウディア。どうやらわたしは其方と心を通わせる努力を怠っていたようだ。 これからはお互い心を通わせ合いたい。そこからやり直して欲しい。」
と、ふたたびクラウディアの指先に口づけをする。
九年間も婚約期間があったのに今更な感も否めないが、このように優しくされたことがなかったクラウディアはすっかりほだされた。
クラウディアがこくこくと二度頷くのを確認すると、アレクシスは持っていたクラウディアの手を引き、立ち上がるように促した。
涙で濡れたクラウディアの頬を手のひらで包み込むように拭ってやりながら、寝台へ誘う。
「添い寝しよう。
今日は疲れただろう。ゆっくりお休み。」
と額に口づけをする。
泣いたせいだろう。クラウディアは秒で寝た。