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「どうぞ。母直伝の紅茶ですの。殿下のお口に合うかしら。」
ふと目の前の視界が遮られたと思ったら、目の前に何かを語るほのかに桃色の唇。
てらてらとランタンの灯りに照らされた横顔から首筋、白い肌に浮かんだ鎖骨。
思わず目が離せなかった。
ローテーブルに紅茶を差し出したクラウディアが視界から離れると、ふと風呂上がりの石鹸の香りが鼻先をくすぐった。
バレないようにゴクリと唾を飲み込むと頭の方に血液が流れ込み、心臓がうるさいほど脈打つのを感じた。
今日のクラウディアは本当に美しかった。もちろんいつも美しいが、婚礼衣装に身を包んだクラウディアはほのかに発光しているのではないかと思われる程、白く輝いていて眩しいくらいだった。
光沢のある白いドレスは首元まで繊細なレースが施され、スカートには豊かなドレープに、その上を覆うレース生地。腰回りにはチェーン状に連なった真珠をふんだんにあしらった大変美しい仕上がりで、クラウディアの美しさをより一層際立たせた。
う、美しい・・・。まるで女神だ。もうこのまま誰の目にも触れることなく、ガラスケースに入れてつれて帰ってしまいたい。
あぁ。私だけのクラウディア。大切に。大切にすると心に誓う。
いやいや。誓うなら神に誓えよ。とツッコミたくなるクラウディアにベタ惚れのこの男。王太子であるアレクシス・グランディーレは少々残念な男であった。
婚礼衣装姿のクラウディアを見てガラスケースに入れてしまいたいとか謂いながら、すでにクラウディアの1/6スケールの人形を秘密裏に注文し、婚礼衣装を製作した工房には人形に着せるための全く同じ意匠の縮小したドレスをこっそり作らせていた。
何ヶ月も前からガラスケースに入れる気まんまんだ。
黒髪、黒目で身長も高く、イケメンのくせにちょっと気持ち悪いこの男の話はまた後日に語らせて貰うことにしよう。
ローテーブルを挟み、アレクシスの向かい側の一人掛け用の椅子へクラウディアは座ると、アレクシスと同じ洋酒入り紅茶を先に一口こくりと飲む。
アレクシスも出された紅茶を手に取り、一口飲む。
なるほど。洋酒の香りと紅茶の香りが合わさって、何とも芳しい。蜂蜜のほのかな甘さで飲みやすくなっている。などと考えながら正面に座るクラウディアを眺める。
クラウディアは「ほぅ。」とため息をつく。二口、三口と紅茶を飲み進めていくと徐々に首元から胸元にかけて紅潮していった。
その姿に抑えきれない衝動が理性を壊しそうになる。今すぐ飛び付いてしまいそうな気持ちを抑え、この後のことを考える。