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今日はグランディーレ王国の王太子、アレクシス・グランディーレと王国一美しいと評判の侯爵令嬢、クラウディア・エレフィエントの結婚式が挙げられた。
早朝から婚礼衣装の着付けをし、神殿関係者の挨拶を受ける。
諸外国の王族や重鎮、国内の名だたる諸貴族が招待され、王都の中で最も格式高い神殿での挙式。
その後は王城へ移動してバルコニーへ出て王族が並び、中央には新郎のアレクシス王太子、その隣には新婦のクラウディア王太子妃が並び、集まった国民の歓声を浴びながら手を振る。
そして夜の祝賀晩餐も恙なく終わり、アレクシスは安心した面持ちで自室に戻った。
自室に戻ると早速湯浴みをする。いつもより念入りにあちこち洗い、口内も磨く。寝着に着替えるといつもより胸のボタンを一つ開けようか閉めようか悩んで、いつも通り二つ開ける。
このまま夫婦の寝室へ向かってもいいのか落ち着かず、しばらくウロウロすると、手に何か持っていたくなり、なぜか書机の上に置いてあった分厚い法律書を小脇に抱えた。
そして自室から寝室へと繋がる扉を開ける。
新居となったここは王太子の住まう東の離宮。
前王太子と前王太子妃(現国王陛下と現王妃)が住んでいた城だ。
立太子と同時にここに一人で移り住み、新たに妃を迎えるにあたり大規模に模様替えを行った。
一昔前の流行だと思われる大柄の幾何学模様と花や鳥、植物のモチーフを組み合わせ金、銀、朱や紺などの色をふんだんに使った、言葉は悪いが『ゴテゴテした装飾』は取り払われ、これから住まう若い夫婦に合うよう、シンプルながら繊細な趣向を凝らした意匠の天井、壁、絨毯、調度品から建具まで一新した。
アレクシスが寝室の扉を開けると真新しく一新された室内は仄暗く、揺らめくロウソクのランタンに囲まれ、ほんのりと橙に染まったクラウディアが佇んでいた。
まるで化粧は施していないであろう顔は、17才でありながら少し幼さを残しつつもどこか艶めかしく、
蜂蜜色の艶やかな髪は直ぐにでも解けてしまいそうに緩やかにまとめられ、
絹の柔らかな寝着は胸元は緩く、なだらかな曲線を描くクラウディアの躰を包んでいた。
アレクシスは目のやり場に困りながらも声をかける。
「先に来ていたのか・・・。」
「はい。・・・何か・・・お飲みものはいかがですか?」
クラウディアはにこりと微笑む。
長椅子の近くにある飾り棚を見やれば、ポットやティーセット、いくつかの洋酒やグラスが用意されていた。
「ああ。貰おうか。」
「洋酒と紅茶、いかがなさいますか?」
「紅茶を。」
「そういえばよく私の母が父に淹れる紅茶があるのですけど、体が温まるそうなんです。紅茶に洋酒を一匙と蜂蜜も一匙入れてかき混ぜたものなのですがいかがでしょうか?」
「ではそれを貰おうか。」
長椅子に深く座り、脚を組み持っていた法律書を適当に開いた。
本の内容は全く頭に入ってこず、傍らでクラウディアがカチャカチャと紅茶を淹れる音を聞いていた。