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第4話 異世界に召喚された少年は街で休む

エルギアを先頭にする集団が街に足を踏み入れると、立派な鎧を纏った兵士が2人駆け寄ってきた。


「エルギア様!よくぞお戻りになられました。……その様子、もしや」

「ああ、遂に我らは1000年の時を超え、大魔王を打ち倒したぞ!」


2人の兵士は、それまでの真剣そうな顔を一気に破顔させる。


「すぐ、大司教様をお呼びいたします!」


そう言うと、兵士たちが勢いよく走り去る。

しばらくすると、兵士たちと共に、荘厳な衣装を身にまとった老人がこちらに歩いてきた。


「エルギア殿。話はこの者から聞きました。遂に、我らの大願を成就されたとか。誠に、お疲れ様でございましたな。」

「いえ、これも協会の皆様からの手厚い支援のおかげです。私たちだけの成果ではありません。」


これまで堂々と、ともすると偉そうともとれた態度のエルギアが、かしこまったように言う。

よくわからないが、大司教というのはそれほど偉い立場の人らしい。

大司教は、エルギアの言葉を聞くと、満足そうな表情でうなずく。


「本来であればすぐにでも神子様、教皇様にご報告をいたしたいところだが、もう夜も深い。今日はこちらで休まれるとよい。」

「ありがとうございます。是非、お願いいたします。」

「うむ。では宿を手配させよう。……ところで、その者は?」


大司教が自分の方を見ながら、まるで不審者を見るような表情をする。

たしかにこの人から見ると自分は紛れもなく不審者なのだが、少し傷つくな。


「この者は……大魔王討伐の際に拾いました。どうやら、召喚者のようです。」

「なんと、それは……ふむ、承知いたした。ではこの者の宿も手配させよう。」


やっぱり召喚者というのは特別珍しいらしい。

長い年月を生きてきたであろうこの人でさえ、驚きの表情をしていた。

でも、なにも頼れるものがない今、泊まれる場所を用意してくれるのはありがたい。


「あ、ありがとうございます……。」

「礼には及ばない。見知らぬ土地で不安であろう。なにかあれば教会を頼るといい。」

「は、はい。」



それから、兵士たちが宿まで案内してくれた。

宿へ行く道すがら、明日の行動についてエルギアから説明される。


「明日、教皇様のいらっしゃる神都に行く。朝起きたら宿の前で待っていろ。」

「神都って、こことは違う場所なんですか?」

「違う。」


冷たい一言で否定される。この人怖い。


「神都はここから遥か離れた場所にある。故に明日は転移魔法を使用する。」

「転移魔法……!?」


え、なにそれ。転移って、瞬間移動みたいなこと?

魔法ってそんなこともできるの?

すごくない?


「とにかく、朝起きたら宿の前で待っていろ。いいな。」

「あ、はい……。」


転移魔法に一人で興奮していたら、エルギアに鋭い口調で釘を刺された。

この人、やっぱり怖い。



そうこうしている間に、宿に着いた。

この街の中では一番いい宿らしく、宿に入った瞬間から、質の良さそうな調度品が多数目についた。

当然5人全員別部屋のようで、それぞれ部屋に案内される。



自分の部屋に入る直前、シエルさんに声をかけられる。


「今日は、色々あって疲れちゃったよね。ごめんね。」

「いや、全然大丈夫です!むしろシエルさんたちと出会えて、良かった、ですし。」


なんだか恥ずかしくなる。

女の子に出会えてよかったなんて、自分はいつからそんなキザな性格になったんだ。


「きっとこれから先、大変なことが沢山あると思う。私、まだまだ未熟だけど、それでも、君の助けになるから。何があっても絶対に、私だけはあなたの味方だからね!」


シエルさんは言いながらだんだん興奮したのか、僕の方へグッと近付き、まっすぐ見つめてくる。

シエルさんの瞳は、僕を助けてくれたときと同じく綺麗に輝いていて、そしてうっすらと涙を浮かべていた。


「ア、アリガトウゴザイマス。じ、じゃあ、僕はここで!おやすみなさい!!」


僕は、自分の顔が恥ずかしさで本格的に赤くなっているのを感じて、慌てて話を切り上げた。

勢いよく部屋の扉を開け、逃げるように入り込む。



……いや無理でしょ。

顔、滅茶苦茶近かったし。かわいかったし。なんかいい匂いしたし。かわいかったし。


「思春期には、荷が重すぎた……。」



それからしっかり30分ほど悶え続けたことは、誰にも秘密だ。


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