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第2話 異世界に召喚された少年は非現実に直面する

「お………分が…………たか……………のか?禁………」

「……って………も………しない……の子は………なかった!」


暗闇の中から、声が聞こえる。

夜中に半覚醒した時のようで、体が重い。

それでも、少しずつ自分の感覚を取り戻していく。

またすぐ意識が刈り取られそうになるのを抑え、目を開ける。


「よかった!目を覚ましたんだね。」


誰かが自分の横でしゃがみ込み、そう声をかける。

女の子の声だった。


「ここ……は……?」


自分の声とは思えないほどの掠れ声を上げながら、無理やり体を起こそうとする。

しかし、まだ本来の感覚は取り戻していないのか、うまく体が動かない。


「無理をしないで。ゆっくりでいいからね。」


声の主は僕の肩を優しく包み、起き上がるのを手伝ってくれた。


「ありがとうございま……っ!」


声の主の姿、というよりも顔をはっきり視認し、思わず声がうわずる。


少し茶色がかった大きな瞳に、長いまつ毛。

透き通るような白い肌と、それを彩る桜色の唇。

肩あたりまでのびている、細くてさらりと流れる黒髪。


まるで天使のような、この世のものとは思えないほどの美貌の顔がすぐ近くにあった。

というか、本当に天使かもしれない。やっぱり僕はあの時死んだのか……。


「大丈夫……?」

「あっはい、大丈夫ですごめんなさい!」


さっきまでの体の重みが嘘のように勢いよく飛び起きながら、思わず謝ってしまう。

あまり女の子に免疫のない僕にとって、こんな美少女に話しかけられることは今世紀最大の一大事だ。

人の理解できる言語で受け答えできただけマシというものだ。


改めて、女の子を見る。

身長は自分よりも小さい。

年は自分と同じ14歳か、1つ上くらいか。

そしてやっぱり可愛い。可愛すぎて見つめているだけで罪に問われるかもしれない。



そんなことを思っていると、さっきまで自分が寝ていた場所に、ローブのようなものが敷かれていることに気づく。

女の子はそのローブを手に取ると、土を払い落として袖を通した。


「それ……」

「あぁ、こんな場所にそのまま寝かせちゃうの良くないから、下に敷いてたんだ。なにも敷かないよりはいいかなーと思って。」

「ごめんなさい!!!」


本当に謝らなければいけない事態が発生していた。

美少女の衣服をシートがわりにしたことは、明確な重罪だ(自分基準)。

天国のお父さんお母さん、不出来な息子を許してください。

冷たい堀の中で冷や飯食べながら、悔い改めます。



「ふふっ、そんなに謝らなくてもいいよ。それに、どうせならありがとうの方が嬉しいかな。」

「ごめ……、ありがとう、ございます。」

「はいっ、どういたしまして。」


女の子が微笑む。可愛い。



そうこうしていると、そばにいた他の3人が近づいてきた。

多分、さっきすれ違った人たちだ。


「そろそろいいか。お前は何者だ?どこからきた?何が目的だ?」

「ちょっとエルギア、そんなにいきなり問い詰めるとこの子が困っちゃうでしょ!」


赤い髪の、こちらも人間離れした美男子がこちらに問いかけてくる。

女の子からエルギアと呼ばれた男は、この場所で最初に聞こえた、鋭く通る声をしていた。


「あ……、僕は、高峰蓮斗と言います。東京に住んでて、ここ……ここは、どこなんでしょう……?」

「トウキョー?知らんな。ゴルド、リドエラ、知ってるか?」

「うーむ、ワシは知らんなぁ。」

「ゴルドが知らないんじゃあたしが知るわけないじゃ~ん。てかここがどこかもわかってないんじゃ、やっぱアレなんじゃない?」

「転送されてきたか、はたまた召喚か。ふぅむ、どっちかのう。」



ゴルドと呼ばれた男はかなり背が小さい。

100cmほどしかないと思われる身長に似合わずモジャモジャのヒゲ面で、胴回りもかなり大きい。

一言で表すと、タルだった。


リドエラと呼ばれた少女は、自分を助けてくれた女の子とはまた違ったベクトルの、ピンク色の髪をした美少女だった。

幼い顔つきながらも妖艶さを持つアンバランスさがあり、不思議な少女だ。

布面積が少ない、結構きわどい服装をしていることもそのアンバランスな雰囲気作りを助けているのかもしれない。

そしてコスプレだろうか、服から黒い羽や尻尾が伸びている。



「あのね、ここに来る前になにをしてたか、覚えてるかな?」


女の子が尋ねる。


「えっと、学校に部活に行く途中でした。夏休みだったので……」

「部活、夏休み……?」

「決まりだな。こいつは異界から召喚されてきた。俺も初めて見るが……面倒だな。」



異界、召喚。日常生活で普通聞かない単語だが、不思議と違和感はなかった。

そもそもここに来てからの全てが非日常だ。


「ここはハルモニア。唯一神ハルメア様がお作りになられた、豊穣の地だよ。」



自分の住んでいたところとは違う世界に来た。

突飛で、寝る前に見る夢のような非現実が、目の前に突き付けられた。


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