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告げる

薬が効いたルーシュは、しばらくしてまどろみの波間をただよい始めました。


先程までの枷をはめられたおもりのような全身は、いまはとろんと垂れ下がってしだれたような気分です。


と、遠慮がちなノックが数回、ルーシュの部屋のドアを叩きました。


ルーシュの意識ははっきりと戻ってきましたが、目はあけず静かな呼吸にのまれるままにしていました。


そっと扉が開いた気配があります。


ためらいがちに、ひそやかな足音が近づいてくるのがわかります。


ルーシュが横たわる寝台のすぐ傍でその足音はとまりました。


先程のリディの話しぶりからすると、きっとティオールです。


ともすれば眠りの坂を滑り落ちていきそうなルーシュでしたが、もう少し、もうしばらく様子をうかがっていたいと思いました。


ほんの一時のことでしょうが、長いようにも思える静かな時間が過ぎた頃、わずかなきしみでルーシュの肩の向こうの寝台の端に重みがかかったのがわかりました。


ルーシュのおでこにかかる前髪が、さらりと優しく撫で払われました。


いつの間にか、リディがのせてくれていた布は頭の横に落ちていたのでしょう。


そっと取り払われる気配がありました。


あらためておでこにひたと触れる手の平は少しだけ冷たく、それでもほっとするようなあたたかみを感じられます。


ルーシュはその手の平のぬくもりに安心をおぼえました。


知らず、唇がわずかな笑みを浮かべます。


つられたのか、一瞬の沈黙ののち、安堵したかのようにフッと小さな吐息が洩れ聞こえました。


もう一度、ティオールはルーシュの頭をなでました。



『リリア……。



ティオールの囁きは誰の耳にも届かないはずのささやかなものでしたが、そのあとに短くハッと呑み込んだ呼吸を含め、ルーシュの目を本当に覚まさせるのには充分でした。


そっとまぶたを上げ、不安そうに、そして申し訳なさげに自分を見下ろす視線をまっすぐに受けとめます。


ルーシュの頭をなでていたてのひらが戸惑うように控え、静かにティオールの腰の傍に戻ろうとしたところへルーシュは両腕をのばし、自分の手よりもずっと大きなティオールの手をとらまえました。


ルーシュは少しだけ力をこめて、その優しいてのひらを両の手で抱き込みます。



『―――…、ルーシュ……。



戸惑うティオールの瞳をじっとみつめました。



『……、知ってる。



『………?



『わたし、リリアを知ってる。



青い瞳をたずさえた目が大きく見開かれ、ぐっと息をのみました。


思わず引っ込んでしまおうとしたらしいティオールの手をひきとめ、横たわる自分の胸元に引き寄せます。


どう切り出したものか、ひとしきり二人は見つめあいました。



『……誰が―――…



口を開いたのはティオールでした。


絞るように、苦しそうにもらした言葉を、ルーシュは押しとどめます。



『誰でもないの。

リリアはわたしよ。



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