エピローグ
2019年3月
私は新シリーズ『ダンジョンバトルロワイヤル』の受賞に伴う書籍化も決まり、作家仲間とも言える友人も増え、順風満帆ななろう作家人生を歩んでいた。
私は寝る前に『小説家になろう』のランキングを見るのが習慣になっていた。
執筆も終わり、ベッドの中でスマートフォンを操作する。
何か新しい作品は出たかな?
私は慣れた手付きでランキングを確認していると……
――!?
私はベッドの中で変な声をあげてしまう。
とあるランキングのとある順位に――見覚えのある作家の名前が表示されていた。
――ダークネスソルト
闇と清めを意味する塩。相反する二つの言葉を合わせた中二心に溢れる名前。
そう、彼こそがタック――私の甥っ子のペンネームであった。
私は驚愕に包まれながらも……甥っ子の作品をタップする。
あらすじからツッコみどころが盛り沢山だ。一話目を見ると、斬新な方法で描かれており、早速矛盾を発見してしまう。
その後もページを進めると……句読点の位置と使い方、改行、三点リーダー……とツッコみどころがわんさかと出てくる。
ストーリーと設定は……悪くないのか?
まぁ、記念にスクリーンショットで保存しておくか。
叔父さんフィルターとも言うべき、マイナス補正の効いた状態で甥っ子の作品を確認した私は就寝につくのであった。
◆
翌日。
私は仲の良い作家の友達に電話を掛ける。
『ガチャ空さん、お久しぶりです』
「お久しぶりです」
『どうしたんですか?』
「いや、ちょっと昨日面白いことがあって……」
私は仲の良い作家に甥っ子の作品のことを話す。
『へぇ。凄いですね。後で読んでみます』
「いや、読まなくても大丈夫ですよ」
その後も軽い雑談して、電話は終了した。
その日の夜に仲の良い作家から電話が掛かってきた。
『ガチャ空さん、甥っ子さんの作品面白いですよ』
「そう? ちょっと、文章めちゃくちゃじゃない?」
『まぁ、句読点の使い方は……(笑)』
「描写も凄くない? テクテクテクのみだよ」
『あはは、それは私たちにはない感性ですよね』
その後も仲の良い作家と電話で描写についての創作理論で盛り上がった。
若さ故の感性と言うのだろうか? 最初は笑い話のつもりで提供した話題であったが、いつしか創作理論へと発展する興味深い作品になっていった。
翌日。
昨日がピークと思われていた甥っ子の作品は順位を上げて、とあるジャンルの表紙入り(5位以内)を果たしていた。
いやいや……マジで?
私は嬉しさと驚きと……表現出来ない複雑な感情に支配される。
翌日。
甥っ子の作品は更に順位を上げていた。
え……? マジ?
PVを確認すれば、その日のPV勝負となるが……私の自信作品『ダンジョンバトルロワイヤル』のPVを上回っていた。
いやいや……ここがピークだろ。
翌日。
ジャンル別の順位は同順位(2位)を維持するも、日間の総合ランキングの10位以内に入っていた。PVも『ダンジョンバトルロワイヤル』の3倍までに膨れていた。
認めよう……。彼は甥っ子でありライバルだ。
なろう小説を読んで育った世代がなろう小説を執筆する。
そんな時代が襲来したのだ。
タックは今の状況を楽しんでいるのだろうか?
タックは楽しく執筆をしているのだろうか?
今までは甥っ子――子供としか見ていなかったタックも立派ななろう作家になっていた。
今週末に実家に帰省しようかな?
そうしたら、今度は叔父と甥ではなく……なろう作家として創作理論を語り合うのも面白いのかもしれない。
タックは、自分が購入した大好きな作品の作家(友人作家)さんが……自分の作品を見ていると知ったら驚くだろうか?
とりあえず、今度会ったら『ダンジョンバトルロワイヤル』の総合評価とPVでマウントを取ろう。私はいつまでマウントを取り続けられるのだろうか?
5年後、3年後……今年? ひょっとしたら、甥っ子が私にマウントを取ってくるのかもしれない。
そんな未来を予想し、苦笑しながら私は今日も執筆を続けるのであった。
短い文章となりましたが完結となります。
と言う訳で……私の甥っ子はダークネスソルトでしたw(他の作家のリンクを貼っていいのかわからないので……ご興味のある方は検索してみて下さい!)
ダークネスソルトは私から見るとまだまだ可愛い甥っ子(子供)です。暖かな気持ちで見守って頂ければ幸いです。
今後も、ガチャ空並びにダークネスソルトをよろしくお願いしますm(_ _)m
※甥っ子に掲載許可は取ってあります!