プロローグ
この作品は一部フィクションとなります。
個人名 (タック) に関しては、完全なフィクションです。ご了承下さいませm(_ _)m
201X年 正月
今日は一年に一度の親戚が集まる日。私は家族と共に、実家へと帰省した。
みんなで楽しくおせち料理を摘まみながら楽しく会話をしていると――
「タックは、算数は得意なのに……国語が苦手なのよねぇ」
義姉が苦笑を浮かべながらぼやく。タックは兄貴の子――つまりは、私の甥っ子だ。
「タック、国語が苦手なのか?」
私はタックに問い掛ける。
「計算問題は好きだけど、文章問題は嫌いなんだよね。書くのも、覚えるのも嫌い」
「今、何年生だっけ?」
「3年生だよ」
タックはいたずらっ子のような笑みを浮かべながら答える。
文章問題が嫌いなのか……。
「義姉さん、タックにこういう本を読ませたら?」
「何それ? 漫画? 漫画なら大好きよね! ねぇ、タック」
「漫画は大好きだよ! 今僕が好きな漫画はね……」
タックは自分の好きな漫画の作品を私に教えてくれる。
「そうか、漫画は好きなのか」
私は静かにタックの話を聞き続ける。
「うん! 凄いでしょ! それで……その漫画は小さいね? 何て漫画?」
「ははっ。これは漫画じゃないよ。小説だよ」
「……小説? 文字ばっかりのアレ?」
「文字ばっかりって酷いな……読んでみろ。面白いぞ」
私は暇つぶしのために持ってきていた小説――ライトノベルをタックに渡した。
「タックが小説なんて読むかしら?」
義姉が疑惑の視線をタックへ向ける。
「どうだろう? でも、仮にハマれば……文章を読む力は付くよ。文章を読む速度も上がるから文章問題は少し得意になるかも? 漢字の読みも覚えるよ。まぁ、参考書じゃないから学力向上に繋がる保証はないけど……苦手意識は取れると思うよ」
そのときの私は、何気ない気持ちで渡した一冊のライトノベルが甥っ子の運命を変えることになるとは知る由もなかったのであった。