ここにいること
僕は地球を眺めていた。
ただ暗い夜のような世界に大きな地球が浮かんでいる。空には満天の星々が輝いていて、本当に幻想的な風景だと思った。
辺りは白い砂でできており、大小様々なクレーターが存在していた。
月だ。僕は月にいるようだ。
そこらのクレーターに身を下ろし、目の前の大きな地球を満喫する。
こんな綺麗な景色を独り占めしていいのだろうかと心配になるくらいに、その眺めは美しかった。
満天の星空の下で僕は散歩をした。ゆったりと流れる時間。地球では考えられないようなゆったりとした時間が過ぎていく。とても心地よかった。
僕は満足感を噛み締めながらゆっくりと目を瞑った。
目を開けると、やはり満天の星空だった。この景色に飽きることなどない。
僕はそう思った。
ブラブラと足を遊ばせながらゆったりとした時間を過ごしている。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、そうしたゆったりとした時間が過ぎていく。
大切な人が側にいればなぁ…
そう思った。今まで寂しさや悲しさや孤独感を一切感じていなかったはずなのに、ここにきてドッとその気持ちが押し寄せてきた。
とても孤独だと思った。
こんな美しい景色を眺められているのにだ。空には数え切れないほどの星がいつでも僕を見守ってくれている。
でも、寂しい。
だから、寂しい。
美しくて美しくて堪らない。
それが寂しくて寂しくて堪らない。
僕はこの美しさを、この暖かさを、この安心感を、誰にも、一生、伝えられないまま死んでしまうのだろうか。
誰かにこの気持ちに共感してほしい。
いや違う。側にいてほしい…
共感はその一部にすぎない。
僕は目を開けて無意識に確信したのだ。
永遠に僕はこの世界にいることになるのだと。それは証拠もなく理屈でもない、直感的なものだと思う。目を開けてもそこには変わらぬ満天の星空があることに、僕は無意識にそれを自覚していた。
僕はここにいられる永遠を手にしてしまったのだ。それは堪らなく辛いことだった。
どれだけ美しい眺めでも誰かが側にいないとそれはただのガラクタなのだと僕は思った。
目の前の地球は。この星々は。この眺めは。僕の心を癒してくれた。
ほんの一瞬だけ。
そんなものは嫌だ。永遠の幸せが欲しい。
この景色に共感してくれる、僕と話をしてくれる、毎日「おはよう」と言ってくれる、そんな大切な、大切な…大好きな人が側にいてくれたら、一瞬は永遠になるだろう。
僕は永遠を願った。
大好きな人が側にいてくれることを。
だがそれは、初めて見たこの景色のように、
幻想でしかないのだろうか。