帰り道
傘を忘れた。
ふりしきる雨。
天気予報を見ておけばよかった。
どうしたものか。
ふと、小さく肩を叩かれる。
振り返ると、同じクラスの友達が立っていた。
「一緒に帰らない?」
そう言って少し照れくさそうにして差し出されたのは一本の傘。
いくら友達といえども相合傘をするのは気恥ずかしい。
私は断ろうとしたがすでに傘を開いて私を手招きしている。
厚意を無下にする訳にもいかず、横に並んで歩き始める。
傘を私の方に傾けて歩く友達は、傘に収まりきらず半身濡れていた。
私は傘を友達の方に傾けた。
それに気づいた友達は私の方に傘を傾き返す。
人通りのない道で、一本の傘が左右にゆらゆら揺れていた。
そんなやりとりがどこか可笑しくて二人とも笑ってしまった。
二人等しく濡れた半身は、乾かないでほしいと私に思わせた。