お湯
さあ、ばれてしまうのでしょうか?
「何でもないよ。」
私はできる限り平然と答えた。
「じゃあ見せなさい。」
口調からして不機嫌極まりない。
「えー、友達と描いた絵だから。恥ずかしいよ。」
必死に弁明すると、
「見せなさい!」
と、怒鳴ってきた。
お腹の底のの底から恐怖が込み上げてきた。
「ごめん、トイレ!」
私はそう言って逃げようとしたが、腕をグイっとつかまれた。
「いいから見せなさい!」
ものすごい剣幕で怒鳴るママに、おじけずきそうになった。
でも、でもまたあんな思いしたくない。
さいかと比べられて、たたかれる。
あんな化け物みたいなママをみるのもやだった。
「私、消しゴムとりに行かないと。」
足が震えた。
とたん、ママが手をあげた。
と思ったら、壁まで飛んでった。
痛い!
「あんた昨日から生意気なのよ!」
そういって、ママは私のポケットから紙を奪い取った。
そして一瞥すると、私を蹴った。
「なんでこんな重要なものを隠すのよ!」
そういってまた私を蹴った。
「痛い!」
おもわずそう叫ぶと、
「痛いじゃないでしょ!ごめんなさいでしょ!」
と、と言ってまた蹴った。
痛い!痛い!痛い!
痛くても痛くても、ごめんなさいなんて言いたくなかった。
今まで悪いことをしても、ごめん、だったのに。
ごめんなさいって一言でも言ったら、もう関係は二度と元に戻らない気がした。
なかなかごめんなさいと言わない私を、ママは無理やり立たせて、台所まで連れて行った。
怖い。何をされるんだろう。
ママは、コーヒーを作るために沸かしたお湯が入っているポットを持った。
危ない!
逃げようとする私の右手をがっしりと掴み、
「きゃあああああ!」
ママはお湯をかけた。
熱がる私を、ママはニヤニヤ見ていた。
ママは、もう人ではなかった。
ママはポットを見せつけながら、
「なーんていうんだっけ?」
と、勝ち誇ったように言った。
「、、、ごめんなさい。」
「声が小さい!」
そういってママはまたお湯私の右手にお湯をかけた。
「熱い!熱い!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そう言うと、ママはやっとポットを置いた。
「わかったなら、部屋に戻って勉強しなさい。」
そう言うと、私の手を離した。
私は勉強道具を抱えて、洗面所に行き、手を冷やした。
お湯は沸騰していて、100℃は越えてたから、私の腕ははれ上がってた。
保冷剤を取りに行こうとも思ったが、ママがいる台所には、絶対行きたくなかった。
私は仕方なくタオルを水で濡らして、自分の部屋に行った。
第十四話です。ありがとうございました。




