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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第一章 三人目の×××
6/46

1-6 三人目×××を噛み締める

予約投稿になります。

何日か過ぎた後に知った間違いは、もう諦めるしかないですよね。


読んでいただけると、うれしいです。


 壱章ノ六 三人目×××を噛み締める


 初の熊狩りに行って以来、俺はそのまま狩りを中心に活動を続けた。

 冒険者は基本的に、傷を負うのを嫌がり、多人数での安全を求むる。

 大怪我したら、そのまま生活出来なくってしまうからね。

 腕の一本や二本、無くなるのは怖くないって、

 そんなワイルドな冒険者像を勝手に思ってました。

 ミゲルの所で冗談でそんな話をしてたら、周りの人間がぎょっとした顔でこっちを見てた。

 

『あいつは腕を無くしても、敵の喉笛に喰らいつくヤツだぜ……』


 そんな幻聴が聞こえる、正直スマンカッタ。

 三ヶ月ほど猪や鹿、たまに熊なんぞ狩っている。

 斥侯や追跡は、まだまだ下手だが、解体はそれなりになった。

 多少顔見知りになった人間には傷物になるからと、熊の解体はさせてもらえなかったが。


 そんな安全志向? な毎日だったから、回復関係の傷薬だとか治療薬とか回復魔法だとか。

 それらの御世話になることなど、ほとんど無く忘れてた。

 薬草から作った傷薬の軟膏くらいは常備してたけどな。

 それに回復の魔法具は金貨十枚と言う大金だった。

 効果は切り飛ばされた腕を繋ぐ、くらい凄いらしいが、使い捨てだし。

 金貨一枚はおよそ十万円くらい、その道具は約百万円となる。

 高ぇな……他の魔法具がいくらかも知りたくないなぁ。

 いざと言う時の為に、あった方がいいんだろうが、そこまで余裕は無いし。

 と言う感じで必要性は低い認識だった。


 そんなある日、猪狩りの最中、盾持ちが怪我をした。

 猪は想像よりも素早く、動きが機敏なので、知らない者にとって強敵だ。

 四肢に傷を負わせ、行動力を奪ってたんだが、

 盾持ちがまだ新人で、受け止めきれずに足に牙をくらった。

 猪はすぐに倒せたが、盾持ちの傷は深かった。

 すぐに寝かせて、服を裂き傷口を水で洗って確認する。

 ちょうど防具の無い太腿に十センチ近くの裂傷がある。

 足の付け根を縛って血止めをするが、流血が止まらない。太い動脈に傷があるかもしれん。

 盾持ちは泣き叫んだりしなかったが、絶望に染まった顔をしてた。

 周りの人間にも、もう駄目かもと諦めの空気が漂っていた。

 それほどまでに、この怪我は普通なら助からないと示しているようだった。

 傷薬なんて役に立たない。高価な道具なんて誰も持ってはいない。

 俺はせめて流血を止めたくて、傷口を両手で覆った。


(街まで遠くて間に合わない! 傷口を縫う針と糸も無いし、消毒する酒すら持ってない。

くそっ! 傷を焼いて塞ぐしか手は無いか?)


 回復の魔法具さえあったら……街で見た魔法具を思い出す。

 しょうがない、荒療治しかないかと思い周りの人間に焚き火の指示を叫んで、

 持っていた解体用ナイフを火で炙る。

 痛さにショック死しないかとか、体力が持つのかとか心配になる。

 他のヤツも顔を青くしながら俺の行動を黙って見てた。

 盾持ちの口に、そこら辺から拾った木の枝を噛ませ、

 乱暴な処置が見えないように目を布で縛って、皆で手足を押さえ付ける。


 いざやるぞ! って、自分に気合を入れて焼けたナイフを傷口に近づけたら、

 その傷が消えてた。

 ……おんや~? 夢かな? 混乱の効果は抜群だ。


 なんか色々あって、獲物の処理や後始末も終わり、

 帰途の途中に、皆からすげぇすげぇと言われた。

 盾持ちなんか、泣きながら感謝してる。

 ははは、俺が一番すげぇと思ってるよ。

 念のために、盾持ちは馬車の荷台に乗せた、無理はさせられない。

 あの傷口を見た人間なら、分かるだろう。

 今度から少なくとも、縫合用の針と糸、消毒用の蒸留酒は持って行こう。

 後、包帯になるような物も一緒にね。

 傷が無くなった事に関しては、記憶から削除したい。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 盾持ちが怪我をしたあの時の人間から、何故か『兄貴』とか呼ばれる様になった。

 ヤメロ! 冗談じゃ無い!

 かわいい女の子から『お兄ちゃん』とか言われたいのに!

 狩りが早いとか、何か会っても安心とか、少しずつ俺は周りから有用だと認識され出した。

 何故かそんな気がする。

 傷の処理に水で洗って──とか、針と糸で傷を縫って──とか、傷口を縫う説明をした。

 最悪の時は、熱したナイフで傷を焼いて塞ぐのだとか説明しておいた。

 よく見知った顔の冒険者は真剣に俺の話を聞いてた様だ。

 盾持ちの時の事は傷が浅かった事で推し通した、あれは幻だ。

 

 ミゲルから魔法が使えるんじゃないの? って茶化された。

 そもそも、あの出来事は魔法か何かも分かっていない。

 大した傷じゃなかったんだ、と説明しても話を聞いてない。

 最高に最低なニヤケ顔でこっちを見てる。

 その顔、いつか本気でぶっ飛ばす。

 


 生活は今まで狩りで稼いだ金で余裕は出来たが、その活動自体は肩身が狭くなった。

 いや、別に悪い意味じゃないんだが。

 組合の建物に入ると何人か、顔見知りの人間のほとんどが俺の行動をじーっと見てる。

 壁の依頼書を見てる俺に注目してる。

 ひとつの依頼書に手を伸ばすと、後ろから寄って来る気配がする。

 ナニコレ面白い、それが自分の事じゃなかったらな!

 ため息を吐いて、他の依頼書を見てると、配達の依頼があった。



『東の村へ生活用品の配達、及びその護衛、銀貨三枚』



 これだ!

 ──俺は今、癒しを求めている。

 誰も居ない、静かな癒しってヤツを。

 その依頼書を壁から剥がして、ミゲルの所に持っていく。

 後ろから嘆きの声が聞こえた気がしたが、気にしたら負けだ。

 カウンターに依頼書を叩き付け、宣言する。


「やる、コレ、オレ、ひとり、いいな?」


 ミゲルがめずらしい微妙な顔をしてるが、構うものか。

 俺は今から、配達人になるのだ。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 馬車は組合付きの物で、荷物は商組合に注文済みで、行けば渡される。

 その代金は村の方から配送依頼とは別に支払い済みだとか。

 村までの距離は、朝から馬車を飛ばせば日の入り前に着くらしいが、

 普通は途中で、野宿して一泊が基本だと言われた。

 野宿なんて召還された時以来だ、四ヵ月ぶりくらいじゃないか?

 今回は狩りじゃないんだから、夕食には料理でも作ってみようと思う。

 店を回り材料とか塩、香辛料とか、柔らかな高級パンなぞ買って行く。

 途中で知り合いから、料理するから付いて行こうか? とか優しく言われたが、

 謹んでお断りした。何が悲しくて、野郎同士でキャンプせねばならんのだ。

 ああ、潤いが欲しい。今まで女性の冒険者なんて見た事無いよ?


 ミゲルが北の森林族には、女性冒険者がいるらしいぞ? って遠まわしに、

 傭兵へのいらん勧誘をして来る。

 ……ああ、近辺には居ないのね、女性冒険者。絶望感でいっぱいだ。

 悲しい事を知った翌日、朝食代わりのパンを持って出発した。

 馴染みの門番に気を付けて行ってこいよ、と言われて手を振る。

 今の季節は雨は少なく、気温の変化もあまり無い。

 何とか覚えた馬車の操縦でのんびり道を行く。

 今日も良い天気で馬車旅日和だ。


 道行く途中では何事も無く、キャンプ地に到着。

 人から教えてもらった通りに馬を労わり、木に繋いでブラッシングした。

 飼い葉やたっぷりの水と少々の塩を与えて、休ませる。

 顔も拭いてやって、撫でてると甘える仕草をする。ははは、愛いヤツ。


 こちらも街で買って来た、薪を使って火を起こし、組んだ木の枝に鍋をかけて、

 水と材料を入れ、スープらしき物を作る。

 削った枝に仕入れた猪肉を刺し、塩と香辛料を振り焚き火でじっくりと焼く。

 肉から脂がしたたり落ちて、辺りに香ばしい匂いが漂ってくる。

 その頃にちょうど、野菜と燻製肉のスープが出来た。

 ちょっとお高いパンを取り出し、ナイフで切れ目入れて焼いた肉を挟む。

 それを頬張り、スープを一口啜る。──ああ、うめぇ。

 狩りの最中はこんな事、出来なかったからなぁ。

 うまい物を食べる。そんな幸せを、しみじみ噛み締める。

 

 イイ匂いに釣られたのか、何度か狼みたいな獣がやって来る。

 こちらも慣れたもんで、ちょっと目線を合わせてやると野生の獣が、

 普通では見せてはいけない表情をして、こちらに申し訳無さそうに帰っていく。

 理由は考えない、そんなもんだと自分を納得させる。

 そういえば、狼の討伐依頼はやってないなと、思ったり……

 襲って来ない、食用の肉にもならない仕事なんて別にしなくていい。

 毛皮は、ま、まぁ機会があったら狩るのもやぶさかじゃないかも?


 その後は訪問者も無く、夜空には大きな、青白い満月が浮かぶ。

 月はあったんだなぁと一人、うんうんと頷いて納得する。

 たぶん来ないだろう就寝中の獣の襲来は、もし来ても馬が最初に気付くよね。

 と勝手に判断して野宿用の毛布を取り出し包まる。

 明日、村に着いたら少しの間、滞在するのも悪くないだろう。

 のどかな村だといいなぁ、と色々な想像しながら眠りについた。



常識を考えると、一人旅で野宿なんて出来ませんよね。

そこを上手に表現出来ないのが、もどかしい。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

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