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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
エピローグ
46/46

最終話 三人目の道

最後までよろしくお願いします。

 エルドレッドの旅行話が中々終わらないので、強引に止めさせた。重要な話がまだだったからな。

 

 里長には北の海には大きな渦があって、まるでその先の大陸への航路を断ち切るように塞いでいる事。その一部にウツボの魔獣が居て、それを撃退出来た事。その場所の渦が消えた事などを俺から話した。

 

 恐らく王国軍が北の岬に前線基地を作り、そこから更に先の大陸に向かうだろうと言う事も。

 

 もしかすると、戦人族にも今回の事が知れて、軍より先に北の大陸に向かうかも知れない。自分達でも何回か挑戦しているし、軍の様子を監視してたらから、分かっているのかもね。

 

 里長が戦人族に教えたければそれで良いと思う。俺は言葉にはしなかったが、そんな事を匂わせておいた。

 

 ウェルが居なければこの里に長々と居てもしょうが無い。ウェルへお土産の髪飾りを預けて、自分の仕事の為にイヒシンへ帰る事にする。里に一日だけ泊めてもらい。次の朝、里長とエルドに再会を約束し、自分の街へ向かった。

 

 途中、森の中に居た狼さんにお願いして、もう一度だけ乗せてもらった。慣れると狼乗りもいいよね。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 狼さんにイヒシンの北の村、手前まで送ってもらい、そのまま村に入る。森から出て来た俺を見て、村の人が驚いていた。自分の格好を見たら弓矢と戦鎚、腰には片手剣。確かにさっぱり職種が分からんな。驚かしてスマンかった。

 

 イヒシンに向かう荷馬車に村人の厚意で乗せてもらい、街に帰ってきた。今までずっと海の上だったので、久しぶりに戻ったこの街は、何かの燃える匂い、鉄臭い匂い、水車の音、そして鉄を打つ音と、これぞイヒシンだと思い出した。


 久しぶりに会った顔見知りの者からは死んだと思われていた。海へ船乗りになってしばらく帰って来なかったから、溺れ死んだんしゃね? と親方達が言ったらしい。あのクソ親父! 適当な説明をしやがって!

 

 ぷりぷり怒りながら親方の工房へ戻ると、俺の顔を見たとたん、喜び勇んで外に駆けて行った。どこ行くの? 少しぼけっと待っていると、マーヴィン名匠とその他の馴染みの者を連れて戻ってきて、いつもの酒場に連れて行かれた。

 

 ──薬草酒、足りるかな?

 

 酒場では俺の帰還の祝いでまず一杯、久々のすっぱぬるい強い酒を飲み、イヒシンの街に帰った来たんだなと実感した。そしてあまり酔わない内に旅の出来事を話し始めた。狼さんの事は別に話さなくていいだろう。

 

 

 イグザギの街の北の山へ山羊狩りに行ったら鷲の魔獣が居た事。イグザギにあまり会いたくなかった軍人が居て、エルドレッドの森人の力を当てにされ船に乗った事、途中で鷲の魔獣と戦いになって何とか倒せた事。

 

 おもむろに懐から鷲の魔獣の羽根を取り出し、親方達に配った。ほぉー、と言いながら珍しそうに羽根を見てる。

 

 それから、東の砂浜で海豹を狩って肉を補給をした事、北の果てには静かな暮らしを好む森人族が居た事、岬の先には大きな渦があった事まで説明した。親方達は俺の話が面白いのか、目をキラキラさせながら聞いてる。

 

 ……ちょっとだけ暑苦しいな。気持ちは分からなくも無いが、いい年した親父がわくわくした顔で聞き入っているのは勘弁して欲しい。

 

 大渦の一つに巨大なウツボの魔獣が居た事。その魔獣は『雷』の魔法を防ぎ、俺達が乗っていた大きな船を魔法で引き寄せて、餌にしようとした事。もう駄目だと思い。俺の魔法剣を抜いて『轟雷』を使った事まで話した。

 

「轟雷って……、とんでもない魔法って『轟雷』だったのかよ!」

「言わなかったか? あれは危険な魔法だそ? あんまり怖くて森人の里で封印してもらうように頼んで置いて来た」

「何だと? あ、いや、うーん、しょうがねぇか? そこまで危ねぇ代物になったとはなぁ」

「あんだけ苦労したのに、魔法一発で終わりだよ。でも助かったからなぁ」

「苦労したのは俺もだぜぇ。四つの加工が無駄になったとはな……」

「今度、新しい魔法剣持って来たら、タダで加工してくれるって言ってた」

「はははっ! また魔鉱石探さねぇとな!」


 バシッ! バシッ! と大笑いして俺の肩を叩く親方。でも『魔法』の加工はもういいやと思ってる。今持っている剣で十分だし。魔獣なんて普通なら、滅多に出会わないんだからさ。

 

 その後は軍人の手伝いをして報酬を貰ったから、親方に旅費分を返そうとしたら、その金で今日はパーッと行くぞ! と叫んで何回目か分からない乾杯をした。

 

 ……その金で酒代、足りるんですよね、ね?

 

 結局、俺が金貨一枚余計に払わなくてはいけなくなった。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 あれから俺は鍛冶の仕事を再開した。親方の相鎚はもちろん、俺にも短剣くらいまで作れるように、親方が教えてくれている。その内に片手剣やら長剣か、魔鉱石が採れたら加工を試してみるか、と言う話になっている。

 

 外での冒険もいいけど、一つの事に集中して、汗水垂らしながら作業するのも悪く無い。ちょっと暑苦しくて喧しい親父共だか、酒飲んでガハハと笑いあって酔い潰れるのも、これはこれで楽しいもんだ。

 

 たまにマーヴィン名匠と親方が寒気がする程、気持ち悪い笑顔で蟻塚へ行きましょうよ? と誘ってくるが、断固として断っている。それに親方、あんた死に掛けたじゃないですか!? 気絶して忘れているからってもー。

 

 

 王国軍が北の大陸に行く時に、もしかするとレストが誘ってくるんじゃないか? と思っていたが、それが無い。噂では準備が出来ているって話なんだが。もしかすると俺の事を気遣って? それとも又、逃げ出すかも知れないと思ってかな?

 

 この前イヒシンに来たエルドが、再び魔法剣の製作を頼んできた時に聞いた話では、レストが森人の里に行って、エルドの協力を要請したみたいだったが。それで行く気が有ったエルドが新しい魔法剣を作って貰いに来たと言うことらしい。

 

 もしかすると親方達の魔鉱石採掘の話はそれに関係しているのかもね。当然、俺は材料が無いから帰ぇれ! と断っている。そんな俺を親方が残念そうに見てた。

 

 魔鉱石の採掘に行けってか? 俺、行かないからね?

 

 ──まあ、どうしても必要だったら、里長に預けてある魔法剣、持って行っていいからと言っておいた。エルドはニコニコ顔してありがとうと言い、親方はニヤニヤしながら、親指を立てていた。……すげぇうぜぇ。

 

 

 それから二三ヶ月が経ったある日、再びエルドが来た。イグザギから又、軍艦に乗り、北の大陸を目指すそうだ。そのついでにイヒシンに寄ったと言う事らしい。その時に俺だけにこそっと耳打ちした。

 

 森人族から戦人族へ、北の大渦が消えた話をしたら、早速渦の先へ船で行ったらしい。確かに大陸は有ったが、船が停泊出来そうな場所で、巨大な壁が立っていたらしい。まるで外からの来訪者を拒むような……

 

 それを見て、戦人族は何かを悟り、帰ってきたらしい。そんな話を聞いてもエルドは行くのか? と聞いて見ると、特に向こうから攻撃された訳じゃ無いから、行って見るのも悪く無い。逆に楽しみだと言ってる。

 

 つくづくエルドは冒険者向きなんだなと思った。興味を引く物に対する行動力が俺とは違う。もう少し経験を積めば良い主導者になれるかも知れないな。

 

「分かった。お前に何かあったら、ウェルの事は任せろ!」

「──何を言っている? ちゃんと生きて帰って来るつもりだよ!?」

 


 その後、北の大陸へ何回も船は行ったが、ここ数年間は何も進展が無く、向こうの者との交渉も出来て無いらしい。戦人族の事や王国軍の事など、それぞれで色々な話が出ていたが、冒険者でも軍人も無い俺には関係無い事である。

 

 北の大陸には確かに興味を惹かれないでもないが、あの大渦やその先の壁の事を考えると、向こうは交流を拒んでいる。恐らくそんな感じだと思えた。

 

 出来る事など何も無い俺は、この工房でトンテンカンと鉄を打って、日々の生活が出来ればいいのだ。

 

 

 

 終わり。

今まで読んでいただき、ありがとうございました。

いつか又、書きたい病が発症しましたら、その時はよろしくお願いします。


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