1-4 三人目×××にあきらめる
すいません、ちょっと遅れました。
帰ってそのまま投稿してます。
最後に確認しようとしたのが……今回も読んでいただけたらうれしいです。
壱章ノ四 三人目×××にあきらめる
冒険者組合で見たくも無いオヤジスマイルと言う、エナジードレインをくらって早々に、
組合の建物の外へ逃げ出す。
オヤジなんかと仲良くなるとは……、ため息が漏れる。
買い物へ行く前に、ちょっとは剣の練習もしといた方がいいかな?と思い、建物の裏に有る
訓練場に回る。
行って見ると誰も居なくてちょうどいい、剣は下手なんで人には見せられない。
練習用の剣を探して辺りを見渡しても置いてない、どうやら片付けられてる様だ。
あまり刃を痛めたくないけど、しょうが無い、自前の剣でするか。
昨日、槍で刺し砕いた場所には、新しい丸太が土から突き出ていた。
うーん、万が一、人に槍を向けるのは怖いなぁと、思いながら剣に手を添える。
丸太の前に立って、袈裟切りの練習しようと、鞘から剣を抜いて──
ヒュッガッ! ……ドスン
えっ!? 何が起こった!? 丸太が袈裟に切れて、目の前に転がっている?
右足で踏み込んで、右手一本で剣を振り抜いたままの格好で止まっている。
逆袈裟? 直剣で居合いかよ! と気づいたところで目の前の事実は変わらない。
今、切った感触がほとんど無かった。、おかしい、キャンプの時とまるで違いすぎる。
周りに人が居なくて良かった、別の意味で見せられなかった。
──もしかして、この剣のせいか!? 今まで色々とおかしかったのは。
この剣が実は魔法の剣で、これを持っていると何か素敵な効果があるとか?
えーと、武器屋? へ行って調べてもらわないと後々、面倒な事になりそうな予感。
すぐに訓練場からコソコソと逃げ出し、街の大通りにある武器屋へダッシュした。
──なるほど、女神様から力はもらえなかったけど、その代わりに魔法剣をくれたのか。
この年齢で、一から狩りを覚えるのは大変だなぁと思ってましたけど。
まさかの魔法剣。素晴らしい! ありがとうございます、女神様!
「剣身自体は悪く無いですが、拵えも普通ですね、金貨一枚でなら引き取りますよ?」
「うそだろ!?」心の叫びが漏れた。
「これって魔法の剣じゃないのか? 良く見てくれ」
「ハハハ、お客さんご冗談を、何年も武器屋をやってますが、これは魔法剣じゃありませんよ。
魔法剣と言うのは、あちらに飾ってあるみたいな高級品なんですよ」
そう言って店主は店の奥に飾ってある剣を指差した。
うん、見た目でも違いがわかる、作りも豪華で剣身がなんとなく青白く光ってキレイ。
王都に住んでる、有名な剣匠作の一振りらしい。金貨五十枚以上とか。
それを見て、自分の剣と見比べてガックリした。
勘違いで大騒ぎしてしまった。
肩を落とした俺に、店主は目利きなんて難しいからと慰めてくれる、いい人や。
ぬか喜びもいいとこだ、村人が持つ程度の剣だもんね。
不思議な力を持った剣じゃ無い。まして高級品でもなかった。
その後は結構使い込まれているが、良さ気な中古の弓と矢筒、槍を俺に見繕ってくれた。
合わせて金貨一枚と銀貨七枚だった。……高くないんだよね? いい人カナ?
手入れ用の砥石と油をオマケでもらい、武器屋を後にした。
他の買い物は、服屋で今着ている物よりもう少しマシな物と厚い革製のベストを買い、下着を
数枚と、タオル代わりの手ぬぐいみたいな布を数枚購入。
別の店で靴をサンダルから厚めの革で出来たブーツっぽいのに履き替えた。
雑貨屋で小さ目の鉄鍋と、塩と念のために保存食(例のチーズ)を追加で買っておいた。
本当は防具も揃えた方が良いんだろうが、金が足りない。
攻撃一辺倒ってどうなの? 獣相手の狩人目指すからいいのかな?
今日、宿に泊まると残金がギリギリになる。
次の日の宿代に困る有様だ、仕事取れるようにがんばろう。
昼食は途中で食べたが、歩き回ったので腹が減ってしょうがない。
同じ宿で部屋をとり、早めに夕食を頼む。
鹿肉の串とパンとスープの定食だ。塩辛いが、香辛料が効いて結構うまかった。
後で、香辛料も雑貨屋で買って置こう。
部屋に入って考える。結局、力の原因が何だったのかわからない。
女神様から貰った巻物が怪しいが、それを調べる手段もないし。
魔法道具を扱う店もあったが、見せてもらった回復の魔法具が金貨十枚からとか。
今のところまったく余裕が無いので後回しである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
次の日に、朝食を摂っていると宿の女将さんから一週間分の部屋を借りるなら三割くらい、
値引きするよと言われる。
いやいや、今日の宿代も怪しいんだと返すと、なら何で高いここに泊まっているんだ? と
呆れた顔で言われてしまった。
なるほど、どうやらここは高級宿だったらしい。お金に適当な、その日暮らしはイカンね。
朝食を食べ終えたら、懐に余裕が出来たらまた泊まりに来ると言って、宿を出る。
ちょっと真剣に生活することを考え、組合の依頼書をよく見ておくんだったと後悔。
獣狩りの賞金、多いといいな。
腰に剣、背中に弓と六本入りの矢筒、手には身長と同じ百八十くらいの槍を持ってる。
うむ、今の自分は狩人っぽいんじゃないかな。
剣とか槍の妙な力が目立ちそうで怖いけど、そのおかげで普通に狩りが出来そう。
狩りの依頼が出てなければ、最悪、狩りをした後に街の外で野宿に。
そのまま獲物が夕飯になるかも知れないけど。
そうだ、狩ったら──解体も出来なくてはイカンなぁ。
解体の事なんて忘れてたので、あわてて雑貨屋に走り、解体用の曲がったナイフを二本購入。
熊や猪みたいな大物なんて、どうせそのまま持って来れないのだから。
組合建物に入り、カウンターで受付してたミゲルに、手だけ上げて挨拶。
職員は、むさ苦しいオヤジが二、三人しか居ないのか、冒険者が列を作ってる。
壁に張ってある、戦争に関係しそうな依頼書以外の、狩りの物が無いかと探す。
『西の村近くに狼の群れ有り、討伐希望、十人程度、合わせて金一枚』
『猪肉三頭分、何人でも、金二枚、状態の良い解体済なら一枚追加』
『熊の肝と胆嚢、一頭分、何人でも、金三枚、皮と肉の引き取りは要相談』
こんな感じだろうか。
狼は西の村までの時間と準備が必要か? それに他の者との合同になるか。
猪なら一頭ずつなら、何とか出来ないか? やってみないとわからないけど。
でも、獲物の運搬を考えないといけないな、これも他人と組むのが普通だよね。
熊なら倒せたら、皮や肉をとりあえず諦めれば、荷物にはならんかも。
しかし、猪と熊は生息場所が分からないなぁ、一日で行き帰り出来るといいんだが。
受付に並んでいる人が減ったらミゲルに聞いてみるか。
うーん、でも一人で猪や熊を狩ったなんて出来ても、目立つだろうなぁ。
強いって事は良いけど、いつまでも力が続くかも分からないからなぁ。
それに目を付けられて、戦争に引っ張られるのも御免だ。
壁の依頼書を見ながら悩んでると、羊皮紙に何か書いてあるのに気付く。
熊の依頼書にも何個か印みたいなのが書いてある。
野郎共が外に出かけて行き、ミゲルの列に人が居なくなってから声をかけた。
「熊狩りの依頼書に何か模様が書いてあるけど、あれは何だ?」
「ああ、あれか、冒険者が俺は参加するって意味で書いた印だ。まず熊とか猪みたいな獲物が、
どこに居るか直ぐにわかんねぇだろ?
最初に獲物を見つけたヤツが、案内人として依頼書に自分の印を付ける。
案内人は新人でも誰でもいいし、獣との戦いには参加しなくて良いから楽なもんだ。
そんで、一個目の印を見た他のヤツが参加の為に印をつけていく。
職員が参加する人間の印見て、狩りが問題なく出来そうなら壁から剥がして次の日くらいに、
日付書いて、受付のところに張って一丁上がりと」
ほほぅ、判断は組合の職員がするのか、ちょっとは安心かな?
自己責任なんて事になったら、年間の新人犠牲者が増えるだろうからな。
「ちょうど、アレ、中級者がもう一人くらい居た方がいいと思ってたヤツさ。
お前ぇさんが入ってくれるなら、そのまま明日でもいいな」とニヤリ。
うっ、急にお腹痛くなってきた、帰っていいかな?
知らない人と、狩りなんて、まだ心構えが出来てない。
人の気持ちも知ってか知らずか、ミゲルが声を潜めて耳を貸せとおっしゃる。
「行く人間はよく知ってるヤツばかりだから、心配すんな安心しろ。
でもケインは冒険者になったばかりだろ? それで甘く見られると、別の狩りの時に、
分け前が減らされる事があるから気ぃつけろ。
案内する斥候役のヤツを良く見て、森の中の動き方をしっかり覚えろ。
慣れるまで、まとめ役は他の中級に任せて、余計な騒動を起こさねぇ様にしろよ?
お前ぇは、今まで他の支部に行ってて、久しぶり振りに戻った事にしとけ」
顔に似合わず、ミゲルが面倒見の良い事を言ってくれる。
ほぅ、良い事聞いた、会社に入った新人の心得ですね、わかります。
ケインて誰や? 自分で付けたのを思い出しながら、ミゲルの注意を聴いていく。
その後は細々とした必要な物を聞いて買いに行き、安い宿をとって早めに休む。
早死には御免だと、一人無双を早々にあきらめ、明日の狩りに心躍らせる。
初めての狩りだ、頑張ろう。
この国の通貨は金貨、銀貨、銅貨です。
単位はありません。
金貨=10万円、銀貨=1万円、銅貨=100円換算となります。
いつかこの設定が破綻しそうで怖いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。