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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第五章 三人目と海
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5-2 三人目、海と船の上

今回も読んでいただけると、うれしいです。

 エルドレッドの従者として俺も乗船出来る事になり、乗る船を捜すという目標は、とりあえずは達成出来た。そこで少し、いや大分問題となるのは背中の剣、『轟雷』付きの魔法剣である。こんなのがバレたらまた面倒な事になるに違いない。

 

 そんな物だから、俺は小細工した。鞘に入ったまま、鍔の部分を鉄鎚の頭に、剣身の部分を掴みに偽装……出来なかった。完成した物は、形の悪い戦斧槍にしか見えなかった。これ逆に絶対目立ってしょうが無い、失敗。

 

 背中に縦に吊るして見た。柄の部分をちょっと下げてやり、マントでも着てしまえば見えない。……腰を下ろそうとしたら剣が地面に当たり、座れなくなった。片手剣も結構長いよね。失敗その二。

 

 いっそ、鍛冶士の工具と言って、長い箱の中に入れるか? やってみたら邪魔くせぇだけだった。失敗その三。エルドレッドが俺が持とうか? と提案してきたが、俺の魂が拒否した。スマンな。

 

 開き直って、背中に括りつけたまま、これは森人族の大事な宝剣です。いざと言う時に使えと里長に渡されました。滅多に他人には見せられません! ……そういう設定にした。それから街の武器屋が戦鎚を仕入れて、俺の仮の武器とする。

 

 結局、山羊狩りは上手く行かなかった。地形が悪いし、捕まえにくいし、頻繁(ひんぱん)に鷲の魔獣がやって来るのだ。もしも山羊が居ない時に鉢合わせると餌にされる。あの大きな爪で捕まえられて、大きな嘴で目をほじくられるに違いない。絶対御免だ。

 

 それでも、俺は金は貰えないとしても、エルドレッドには報酬金が十日に金貨二枚も出るのだ。しばらくは金には困らない。タダで船に乗れ、報酬も出る。

 

 ……結構美味しいかも。

 

 船に乗れば、どうせ真水で水浴びなんて出来ないだろう。体を海水で洗うにしても、もう少しどうにかしたい。幸運な事にこの街には海草や植物から取れる油で出来た、いい香りのする石鹸があった。早速購入する。

 

 食事は支給されるそうだが、念のために保存食を用意する。日持ちがしそうな硬く焼きしめたパン、塩気が強いチーズ、かなり強い蒸留酒、そして露店で見つけた例の薬草酒だ。もしもの時に船の酔い止めになるかな?

 

 エルドレッドには弓の矢と予備の弦、万が一の時に使うかもしれない長めの縄を買ってきてもらった。その間に俺は無理言って使わせてもらった街の鍛冶場で、鉤爪のような物を作る。これに縄を結んで、もしも何かがあった時の保険のつもりだ。

 

 それから服装を船乗り達に近い物に着替えたり、出港日までに俺達は色々準備し、その日を待った。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 出港日、初の乗船となるその日は生憎、天気は曇り空だった。まだ雨は降ってなかったが、空に暗雲立ち込め、波が少々高いように見える。嵐が近づいているのか? こんな日に船を出しても大丈夫なものだろうか。

 

 ……俺の未来を暗示してるなんて事は絶対無い、はず。

 

 船の乗組員達の話では、この時期はこんなもので、船を出すのには問題無いらしい。ただ、それなりに揺れるので、初めて船に乗る者にはつらいかも、と言っていた。それを聞いて何だか俺も船酔いが心配になる。

 

 港の中で一番大きい軍艦であるこの船は、長さが三十メートル弱だろうか? 俺達が居る甲板の下側の船の側面から左右二十ずつ程の櫂が突き出ていた。恐らくその櫂の漕ぎ手がレストの言っていた奴隷達だろう。

 

 周りを見ても、これ程多くの櫂が出ている船は無い。やはりそれが軍艦である証明なのかもしれない。甲板上には俺達以外の乗組員達、二十人以上で忙しそうに駆け回っており。俺達は邪魔になら無いように居場所の確保が大変だった。

 

 船長の出発の号令と共に、足元から怒鳴り声がする。奴隷達の号令係の声なのか、櫂が一斉に動いて船が港を進み始めた。それに合わせてエルドレッドが慌てて『水』の魔法を使って、船を進める補助をした。一応は効き目あるのかな?

 

 それでも櫂の力か魔法のせいか、想像以上の速度で進んでいるように思える。

 

 

 ある程度港から離れると、乗組員達は帆を張り、櫂は動きを止めて船内に引っ込んだ。エルドレッドが最初だけ『風』の魔法を使って帆に追い風を送り加速させると、後は自然の風の力に任せた。

 

 さすがに続けて魔法を使ったせいか、エルドレッドは疲れた顔をしてる。船の速度は順調だが、波があるので船の前後の揺れが凄い。乗組員達はさすがに慣れているみたいだが、俺はともかくエルドレッドが酔った。

 

 大きな船に乗ったのは初めてで、こんなに揺れるとは思わなかったらしい。知らなかったが、俺の方は案外乗り物酔いはしないみたいだ。とりあえずエルドレッドに薬草酒を飲ませて甲板上の隅に寝かせておいた。中で吐かれると後で困る。

 

 レストは船の後方にある船長室で、船長とこれからの航路について話し合っているらしい。船旅一日目は船の左手を山羊の居る山が通りすぎ、少し遠くに森が続くのを見ながら過ごす。食事は塩漬け肉を焼いた物とパン、それとぶどう酒だった。

 

 船の中央部には小屋みたいな物があり、食事の準備と一般の乗組員と俺達の寝床はそこである。レストと船長と一部の者は船長室だ。エルドレッドが船酔いで辛そうなまま一日目が過ぎた。夜間の船の操舵は乗組員達が交替でやるらしい。

 

 

 二日目以降、森が少しずつ近づいているように見える海岸線を左手に船は進む。天候は相変わらず曇っていて、たまに雨が降ってくる。幸いにも波は落ち着いてきていて揺れは収まってきた。エルドレッドの船酔いも軽くなっている。

 

 しかし、天気が悪い海を進むのは気分が滅入るな。海岸線に沿って航行しているのでまだいいが、陸の見えない海の真ん中なら不安でいっぱいだったであろう。天気の違いで海の印象がこうも異なるとは思わなかった。

 

 船の揺れにも大分慣れたエルドレッドの一日の仕事は魔法を使う事だ。風が弱くて船が進まない時には、奴隷達が漕ぐ櫂と合わせて『水』の魔法を使って船が止まる事が無いようにしてた。

 

 レストはたまに様子を見に来て、エルドレッドの魔法の力に満足気だった。確かに高い金を払って乗せているんだ、働いてもらわないと困るだろう。俺というオマケの食料分もあるのだから。

 


 何とか仕事を続けて六日目に森が終わる境界線まで来た。その向こうは川があり、大きな河口に来ると、乗組員の何人かが小船を降ろし、いくつかの樽を載せ、エルドレッドに狩りをして欲しいと言っている。もちろん俺も一緒に行く。

 

 河口から上流へ遡上して少し行った所には飲料用の水を汲める所があるらしい。そのついでに周辺で獣を狩り、食料の補給としたいそうだ。天気も回復して雲はまだあるが、青空も見えている。

 

 この場所から北は、しばらく岩だらけの海岸線しかなく、水も食料も補給が出来ない。今の内に出来るだけ準備したいのだろう。魚でも獲ればいいのに、と思うが、魚と肉では乗組員達のやる気が違うらしい。まあ、そうだよね。

 

 最初に河岸の近くに有る岩場から流れ落ちてる綺麗な水を樽に詰めて行き、その後で反対の岸辺に船を寄せ、森の中に入る。鹿か猪でも獲れれば良いのだが……、森林狼のことが頭の片隅に浮かんだが、それは駄目だろう。第一、来るなと言っておいたのだ。

 

 

 小一時間程、森の中を探し回ったが、猪や熊どころか、鹿も居ない。この辺りは冒険者とか狩人達が来るとは思えなかったが獣の気配が無さ過ぎる。あまり時間もかけてられないので、そろそろ戻るかと川の方に足を向けた。

 

 一旦、川辺に出て、小船の方に向かおうとしたら、川の反対側の岩場の上に木の枝を積み上げた『何か』があった。……これ、昔に何かの映像で見た記憶がある。しかし、それよりも目の前の物が何倍も大きい。

 

 あれは恐らく、鳥の巣だ。たぶん、最近何回も見かけた鷲の魔獣の巣だと思う。


 鷲の魔獣の巣だと言ったら、他の乗組員達は震え上がった。とにかく慌てずに木の影に隠れながら小船に戻ろうと言って、空を見上げながら動き出そうとしたら、頭の上を大きな影が通り過ぎた。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 山羊を大きな爪で掴み、巣に戻って来た鷲の魔獣。改めて見るとやはり大きい。特に嘴と爪が大きい感じがする。あの爪に掴まれただけで致命傷になるだろう。それだけでも危険だと言うのに、更に『風』の魔法も使う。

 

 乗組員達に木の影で動くなと合図し、鷲の様子を伺う。巣に雛が居るようには見えない。まだ卵なのか巣を作っただけで、(つが)いも居ないのかは分からないが、一羽だけの様である。

 

 その巣の中で山羊を大きな嘴で引き千切りながら食べ始めた。横を見ると、顔を青くしている乗組員達。見つかったら、俺達も引き千切られるぞ。鷲は食事中だし、それが終わってもすぐに飛び去るとは思えない。

 

 どうするかな、と思っているとエルドレッドが俺の肩を叩いて悪い顔をする。

 

「やはり、狩るしか無いだろう」 ……こいつ、何言ってるの?


 俺は頭を横に振って、無理だということを伝えるが、エルドレッドの目が爛々と輝いていた。あんなの狩っても食べられないんだよ? 不味いと思うよ? 良く分からないけどね!

 

 どうやって狩る気だ? と言うと、あの手の鳥は一回、地面に下りるとすぐには飛び立てない。ましてや川に落ちたら、羽に水が絡み付いて岸に辿り付くまで飛べないだろう。だから川に落として、そこで仕留めようと提案してきた。

 

 ──なるほど、鷲が飛び立つ時には巣から降下しながら羽ばたき、そして飛んでいくのか。巣の下には川だ。飛び立つ時に上手く邪魔してやれば、川に突き落とせるかもしれない。やってみる価値はあるかも。

 

 どうせこのままだと、この場から動けないんだ。エルドレッドの提案に乗って、試してみることにした。まず邪魔する方法を考える。あの鷲には矢が効くとは思えない。縄を羽に巻きつけて引っ張る……逆に引っ張られそう。

 

 乗組員達は役に立たないだろうから、そのまま木の影に隠れているように指示。ここはやはり、エルドレッドの『小雷』か? 怖いがやってみよう。

 

 

 始めに俺が矢で攻撃し、鷲を巣から飛び立つように仕向ける。そして、すかさずエルドレッドが『小雷』で麻痺させて、川にドボン。岸に辿り付かせる前に矢とか魔法とかで攻撃。あ、そうだ。

 

「エルドレッド、鷲が落ちたら『水』の魔法で水の中に頭を沈めてしまえ」

「おお、なるほど! やってみよう」


 ここから巣まで川を挟んで五十メートルぐらいか? 矢は別に正確に当てなくてもいいんだ。俺はとりあえず頭に狙いを付けて弓を引く。エルドレッドとその他の者に準備が出来たと伝えると、頷いた。

 

 バシュンッ!

 

 矢は鷲の頭の横を通っただけだが、鷲は慌てて羽ばたき始める。すぐに飛び立つだろう。エルドレッドが魔法剣を握り、その瞬間を待つ。鷲は矢の方向から俺達を見つけたのか、こちらに向けて滑空しようと巣から飛び立った。

 

 鷲が巣から体半分出た瞬間を狙って魔法を発動した。バリッ! 電光の眩しさに一瞬、目が眩みそうになったが、魔法が鷲に当たったのを見届けた。

 

 ……当たったせいか、鷲は一瞬だけ羽ばたきを止めた。だが、まっすぐ川に落ちると言うより、俺達の方、川岸近くに向かって来る。これじゃすぐに岸に辿り付きそうだ。魔法の威力を考えて無かった……あれだけ大きい魔獣には効きにくいのかも。

 

 慌ててエルドレッドがもう一回撃ったが、落ちる場所は変わらない。『小雷』に耐えているのか、麻痺して動かなくなる事は無いみたいだ。もしかすると、魔法を使って軌道修正をしている?

 

 バッシァーン!

 

 鷲が目の前の川に岸ギリギリに落ちて俺達に水飛沫が降りかかる。胴半分から下は川の中だ。爪は川底の泥に嵌まり込んで使えなさそうだが、近づければ嘴の攻撃が来るだろう。もしかすると魔法もありえる。

 

「ピィイイイイ!」


 目の前の鷲が甲高い鳴き声を上げて、俺達を威嚇した。だが、突風は使おうとしてるみたいだけど、川の水が邪魔で水飛沫を飛ばすくらいだけだった。

 

 エルドレッドが鷲の頭を『火』の魔法で燃え上がらせる。その隙に俺は弓で羽の付け根を狙って射た。……刺さってはいるが効果があるように見えない。

 

「頭じゃなくていいから、出来るだけ水の中に引きずり込んでやれ!」

 

 俺の声を聞いて、頭狙いの魔法を止め、水の流れで鷲の体を川の中央に向かって押し流していく。鷲も必死で羽ばたいて抵抗しているが、鷲の羽は水の中を進むようには出来てなかった。徐々に流されている。俺も嫌がらせ程度に頭に向かって矢を射る。

 

 仕舞いには胴まで水の中に漬かり、羽ばたきさえ禄に出来ていない。俺の何本目かの矢が目を抉ると、鷲は顔を天に向けて最後に高い鳴き声を上げて水の中に沈んだ。

 

 ──魔獣のしぶとさと言ったら、散々味わってきた俺だ。エルドレッドのもういいだろう? と言う視線にも首を振って、十分くらいそのままにさせた。臆病者と笑いたければ笑えばいいさ! 怖いんだよ!

 

 しばらくしてから、魔法の行使を止めさせて、予め船旅の前に作ってきた鉤爪に縄を縛り、鷲の体に投げつけた。ちょうど羽の根元に引っ掛かったのか、それを俺達二人と、乗組員達にも手伝ってもらって岸まで引き寄せる。

 

 水を吸って重くなった鷲が岸に着いた時に、念には念を入れて矢が刺さった目に剣を差し込む。……痙攣さえしない鷲の死骸にやっと終わったと、俺達はその場でへたりこむ。

 

「何かとかなったな」


 そう皆に笑いかけ、この鷲の死骸を小船に括り付けて持って行くべきか、と考えてると、何人かが俺の後ろの空を驚愕しながら見てる。

 

 ──そっちはちょうど鷲の魔獣の巣が有った方向だ。

 

 雛が居なかったから頭から抜けていたが、『巣』があるって事は、それの『相方』がいる可能性があるってことだ。

 

 それに今頃になって気がつく。倒した鷲の魔獣、前に見た時よりちょっと小さいか?

 

 

 

 

夜中に鷲の鳴き声の動画をを探してました。

かっこよく鳴かすのは無理です……


ここまで読んでいただき、感謝いたします。

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