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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第四章 三人目と森人
36/46

4-8 三人目、森人と行く街

予約投稿となります?


良ければ読んでいただけると、喜びます。

 翌朝、まだ少し眠いのにエルドレッドに起こされる。

 

 外を見てもまだ暗い。まだ早いだろうと愚痴を零すと、歩いて狩りをするにはこれくらい早く出ないと、今日中に次の街に着けないぞ、と偉そうに言われた。

 

 ……荷馬車を借りようとは、少しでも思わないのか? にこにこ顔のエルドレッドを見て、説得を諦めて黙って身支度する。

 

 宿を出る時に女将さんに聞いてみると、村の南側には狩りに向いた森がある、すぐそばに見える橋を渡って行くのだけれど、イグザギ近くには橋が無く、川幅も広い。だからここの橋まで戻って来ないとイグザギに行けないよと言われた。

 

 振り返ってエルドレッドを見たら、情けない顔になっていた。女将さんはイグザキの北にはそれなりに高い山があって、山羊とか他にいい獲物がいるよと教えてくれた。礼を言って、残念そうなエルドレッドを引きずり、村を出た。

 

 村から出ると南側に川が海の方まで続いており、確かに川向こうには森が見える。エルドレッドがチラチラとこっちを見てくるが、一切無視した。

 

 

 東までの道を歩きながら周りを見てると、北東方向に高い山が見える。イグザキから船に乗ることを考えたら、ある程度の金を稼がなければいけない。山羊がいるって言ってたけど、それは高く売れるのかな?

 

 海で漁もしているのだろうから、その時に船に乗せてもらい、漁師の真似事でもするかなあ、と色々考える。エルドレッドにどうする? と聞くと、先にあの山に行って、どんな獲物がいるのか調べてこようとか言い出す。

 

 エルドレッドの自由奔放さに少しイラッとしたが、今日のイグザギの到着は諦めて、野宿すればそっちでもいいかなぁ、と考え直す。どうせこんな事になるなら馬車に乗ればよかった。

 

 女性の森人とだったら、どんなに素敵な旅だったのであろうと、今までで何回目となる現実逃避で何とか耐えた。



 途中から道を外れ、山に向かって歩く。エルドレッドに山羊は狩った事があるのかと聞いてみると、里から少し離れた場所に丘があって、殺しはしないが捕まえて家畜にする、それで毛を取ったり乳を搾ったりするらしい。

 

 どうやら食肉にするには肉が硬く、量も少ないらしい。岩場に住む為、捕まえにくい事を考えると、苦労して少ない肉にするよりは、毛織物や乳製品のために飼いならす方が役に立つらしい。

 

 ではあの山に行っても、山羊を狩るより捕まえた方がいいのかな? 捕まえる時はどうするんだ? 聞いて見ると魔法で脚を封じて、何人かで縄を投げて捕まえるとか。……俺ら、縄持って無いじゃん。

 

 わざわざ野宿しても、生きた山羊を捕まえられないし、荷車も無い。準備も禄にしてないから、素直に街に行かないか? とエルドレッドに無駄な説得をしてみるも、ちょっとだけだから、見るだけだからと案の定駄々を捏ねられた。

 

 ──最悪、エルドレッドの魔法の杖(笑)で、山羊を気絶させて、そのまま引き連れて来ればいいかな? もしかしたら、山羊に乗れるかも知れないしな。

 

 俺はエルドレッドをコントロールすることは諦めて、上手く誘導する事に決めた。

 

 その日は、山の手前にある林の外で野宿した。そこから南側にはイグザギの街が見える。イグザギの向こうには海が広がっていて、風には潮の香りが混じっているようだった。エルドレッドはその匂いが嫌なのか顔を顰めていたが。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 次の日の朝、野宿のせいか眠りが浅くなってた。エルドレッドの起きる音に釣られて目を覚ます。思ったとおり空はまだ暗い。これで交替で見張りだったら、今日一日の気力が持つ自信が無かった。

 

 エルドレッドが『土』の魔法で、範囲十メートルに鳴子を作ってくれたから、見張り要らずで済んだ。たまに役に立つエルドレッドに腹が立つ。その代わりではないが俺が食事を作るので、借りとは感じない。というか、俺が損している気がする。

 

 

 林を抜け、山を見上げる。木々が少ない荒れた禿山だ。所々崖に何か黒いモノが見える。……何だあれ?

 

「あ、山羊がいっぱいいるなぁ」


 ──なるほど。山羊だから、ほぼ垂直に見える山肌を登っているのか。どうやって捕まえるんだあれ? 矢でも魔法でも当てたら、それで死ななくても落下死しそう。

 

 どうしようかと見てると、やけにでかいワシ? みたいな鳥が飛んできて山羊に近づいていくのが見えた。爪で襲って捕まえる気か?

 

 そのまま襲うのか? と見てると、突然山羊が風に飛ばされたみたいに崖から吹き飛んだ。驚いて見てると、落ちていく山羊をワシが空中で捕まえ、どこかへ飛んでいく。あの大きさの対比を見てもワシがかなりの大きさだ。翼長が十メートル超えてないか?

 

「あれは鷲の魔獣だな」


 ……鳥にも魔獣がいるのかよ。

 

 あの魔獣の力は『風』、見たとおり、風を叩きつけて獲物を吹き飛ばすらしい。人間は襲うのか? そう聞いて見ると、人間みたいな小ささでは餌にならないらしく、めったに襲われないとか。それでも可能性があるのか。おっかねぇ。

 

 

 結局、山を登るのも危険だし、山羊は捕まえられそうに無いし。エルドレッドにもう街に行こうと言っても、ちょっとだけだから、試すだけだから、と遠くに見える山羊に弓で射たり、『小雷』を撃ったりしてた。どちらも射程が足りなかったが。

 

 それでも諦め切れなかったのか、俺……の背中にある剣をじーっと見てた。

 

 使わないよ!? 山羊がウェルダン通り越して、炭化するよ? 俺はレア派なの!


 その剣で()ろうよとか、ぐずぐず言ってたが、強引に引っ張ってイグザギに向かった。もう諦めて海の幸で食事しようぜ。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 その街に着くと、街中から潮の香りが漂ってくる。海からの他に屋台で海産物でも焼いているのかも知れないな。その匂いに慣れないエルドレッドは鼻を摘んで臭い臭いと連発してた。さっさと海の物を喰わせて、臭いから旨そうな香りに変えなければ。

 

 でもエルドレッドは里で、塩漬けの魚とか干物、食べてた筈だよな? と不思議になるが、干物にした物と生のままの物では匂いも印象も違うのかも知れないなと思い直す。

 

 街の人間は、海での仕事に携わっている者が多いのか、今まで見て来た他の街の人と服装がどこか違う。短い下穿きにサンダル、袖が少し短いチュニックに似ている物を着ている。水の仕事を前提とした服装なのかも。

 

 港に船を見に行こうか、露店で海産物を見て回るか悩む。……エルドレッドの顰め面を見て、先にこっちだな、と食事が出来そうな酒場へ入った。適当な席に座り、酒と海で取れた物のオススメを四五品ばかり、二人分頼む。

 

 本当に大丈夫なのか? と心配そうな顔のエルドレッドに一回食べたら大丈夫だから、旨いからと宥めた。最初にでかい殻付きムール貝に良く似たものに香草とバターで味付けしたもの、それとジョッキの酒が来る。

 

 エルドレッドにさぁ喰ってみろと勧めて、俺は酒を一口飲ん……ぶどう酒と思ったら何だか強い、これ蒸留して混ぜてないか? うーん、とりあえず旨いから良しとする。恐々と貝の身を口に入れるエルドレッドに苦笑してしまう。

 

 俺もひとつ試してみるかと、殻ごと口に入れてスープを啜りながら身を食べてみた。……おお、味が濃くて旨いなぁ。塩気が効いている貝の身と香草の香り、バターのこくが混ざり合ってついつい続けて手が伸びる。

 

 エルドレッドも満更で無いようで、旨そうに二個三個と食べていた。その後も同じように強い香りがする香草とバターで焼いた白身魚、海老を丸ごと焼いたもの、小魚と貝と小海老のちょっと変わった香辛料のスープ、後は……何か肉に見えるけどこれなんだ?

 

「漁をしてると、その魚目当てに、海豹がたまに来るんだよ、漁の邪魔だから殴り殺して肉にするんだけど、そいつが捕れた時に店に出すのさ。後、数は少ないけど、鯨や海豚もたまに仕入れるよ、今度食べにおいでよ」


 店のおばちゃんが説明してくれる……アザラシか、うーん、まあこれも経験だ食べてみよう。クジラとイルカはちょっと抵抗あるなぁ、でも機会あれば食べちゃうかもね。豪快に炭火焼にされたアザラシは歯ごたえと肉に甘みがあって、想像以上に旨かった。

 

 最初は海産物を嫌々口に運んでいたエルドレッドも、次第にもりもりと食べていた。ジョッキの酒が料理と相性が良くて、堪らないらしい。これで船に乗ることになっても、海の物の食事を嫌がらないだろう。

 

 おばちゃんにタコとイカ……脚が八本とか十本ある体が柔らかいモノってあるの? と聞いてみたら、あれは人によって好き嫌いがあって、店ではあんまり出さないねぇと答えが返ってきた。ううむ、軟体生物はちょっと難しいか、残念。

 

 俺達が海の幸を堪能してると、ここの港での噂話が聞こえて来た。どうもこの街に貴族が来ていて、大きな船を新造し、乗り手を捜していると言う話だった。貴族はちょっと面倒くさいなぁ、万が一の事を考えて、エルドレッドと良く話し合っておこう。

 

 そう思ってエルドレッドを見ると、ジョッキが五つ空いている。いつのまに……、エルドレッドはにこにこ顔で料理が旨くて酒が進むとおっしゃった。

 

 ……そいつは良かったね。

 

 

 

 

イカとタコを比べたら、タコかなぁ……


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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